■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園
「挑戦とは、身の程知らずめっ!!」
エルド男爵は顔を醜く歪めると、吐き捨てるように言い放った。
「少しは頭があるかと思ったが、“魔剣士”よ! 貴様も所詮は思考停止の木偶の仲間か!」
言いながらも、エルド男爵は後ろに飛びすさった。軟弱貴族とは思えぬ、予想外に敏捷な動きだ。
「抜くなら抜いて見ろ、愚か者め。この世で誰が強いのか、礼儀知らずの貴様に思い知らせてくれるわ!」
「フッ・・・」
私は、相手の戯れ言を鼻で嘲笑した。
動きの俊敏さで、相手に引けを取ることは微塵もない。
にやりと悪鬼の如き笑みを浮かべ、さらに距離を詰める。迎撃する相手の動きをわずかな動きで左に躱し、右から顔面を思いきり殴りつける・・・と見せかけておいての左の鳩尾を打ち抜いた。
『ドズッ!』
「ぐぇっ!」
その身を二つに折って、エルド男爵は苦悶している。
「どうした? 自慢の剣は抜かぬのか? それとも、敵わぬと見て助けを呼ぶか?」
相手の腕がどうであろうが、油断するつもりはもちろん、まして手加減するつもりなど一切ない。相手に休む間を与えず、連続して足を薙ぐ。
『ガスッ!』
「ぐぁっ!」
腹にパンチを食らった上に脚払いを掛けられたエルド男爵は、見苦しい苦痛の悲鳴を漏らして無様に地面に転がった。
「だ、誰か! 狼藉者だ! 殺される!!」
必死で後ずさりをすると、大声で呼ばわった。
見苦しいにも程がある。こんな者が“大公家筆頭の一人”かと思うと、私は暗澹たる気分におそわれた。
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