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  魔性の瞳 作者:冬泉
第一章「舞踏会」
魔性の瞳-25◆「激情」
■ヴェロンディ連合王国/王都シェンドル/庭園

 彼女レムリアを抱えた人影は、奥まった庭園の一角、高い生垣の角に消えていった。

“何か嫌な予感がする。何か良くないことが起きそうな・・・”

 そう思うと、私は自然と急ぎ足になった。相手を追って、生垣の角を曲がる。

“・・・なぜ、このように心が騒ぐ? ほんの一時、ダンスをして少しばかり会話を交わしただけの相手ではないか・・・”

 そうした考えとは裏腹に、その時、私の心は確かに揺れていた。

“・・・認めなければならないということか。私の中で、彼女が何らかの意味を持ち始めているということを・・・”

“・・・星よ。我を導きたまえ。彼女のもとに・・・”

 呟くように、空に祈る。

『ビリッ』

 その時――生垣の向こう、布が裂けるような音が聞こえた。私は、急ぎそちらに走った。

「・・・」

 それを目にした瞬間、私の中の何かが押さえ切れなくなる。
 無意識のうちに全身から凍てつく鬼気が放たれる。それは、かつて“阿修羅”とともに身にまとっていた修羅の闘気。触れるものすべてを引き裂きかねぬ魔人の刃。
 その畏怖の衣を身にまとい、私はつかつかと男に近づく。

「・・・それ以上、少しでも妙な動きをしてみろ。次の瞬間、おまえの命はこのエルスから消えてなくなると思え。」

 もし私に声だけで人を殺せるものなら、その男は死んでいたかもしれない。



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