ポインセチアと、影の伸びる部屋(8/9)縦書き表示RDF


今回から、事態が展開を見せます。正直気持ち悪いです。了承された方のみご覧下さい。  あと、今回は少しエロチックな感じが入ってますのでお気をつけ下さい。ちなみに次回はエロがOUTで猟奇がINします。 
ポインセチアと、影の伸びる部屋
作:赤峰智子



第八話/十二月二日





……しかしその夜、とうとう私は、夢を見てしまった。
今迄に何度も彼との夢は見た事は有る。だが今回の夢は違うのだ。全てに於いて、異なっているのだ。





……………………………………





気が付くと、私は真っ赤な部屋の中に一人立っていた。格好は十二月だというのに薄い半袖のワンピース一枚である。
「ここは………?」
辺りを見回したが、その部屋には天井から下がる照明以外、何も無い。
窓、ドア、換気扇、そういった類の物が何一つ無いのだ。
それなのに気温は少し暑い程度、湿度は少し高めで保たれている。
まるで夏の様だ。



部屋は壁紙、床、天井、全てが赤…と言うよりむしろ深紅に近い色で統一されている。照明の灯が届かない所は真っ暗で、まるで映画等に出てくる処刑部屋の様だ。






『………たす、け、て………』








聞き覚えの有る声が、いきなり後ろから響いた。
私はゆっくりと振り向いた。





すると、視線の先には最初に出会った時と同じ格好の、彼が居た。
伸び切ったTシャツに履き古したジーンズ、靴は履いていなくて裸足だった。他の部分と同じく、とても白い。





ただいつもと違う所は、彼がぽろぽろと涙を零していた事、
そして
まるで捕虜か罪人の様に、手足を金属の台へ大の字型にはりつけられていた事だった。





私は彼のもとへと歩み寄る。何故こうなっているのかは皆目見当がつかない。



彼は涙を零しながら、掠れ、震えた声で私に言う。
『どうして……ど、どうしてこんな事、す、するんですか?奥さん……。ぼ、僕、何も奥さんに恨まれる様な事、し、した覚え………』
私が彼のすぐ前まで近付くと、彼は『ひっ……!』と、か細い悲鳴を上げてそのまま喋るのを止めた。
彼は身体を強張らせ、私の右手へと視線を注ぎガタガタと震えている。
それに気付き右手へ視線を遣ると、
そこには包丁が握られていた。


彼は力を振り絞る様に私へ泣いて懇願した。
『お願い……お願いしますっ…!…た、頼むから、い、命だけは…。…ぼ、僕が何かしたのなら、あ、謝りますから…!だから、お願い……こ、殺さないで…た、助けて下さい……!』
彼の涙が、その年齢には珍しい程の白くきめ細かい頬から、不精髭の生える顎を伝って下へ、ぽとぽとと落ちる。
彼の眉間に大きく皺が寄り、そして涙を湛えた少し大きめの目は、私の顔を凝視して離れない。
歯を食いしばって恐怖と屈辱に堪えているその表情は、私が今迄想像してきた中には無い新しいものだった。


ふ、と、今迄感じた事の無い感情が私を襲う。





「………美しい……」





私はそっと呟いた。
彼の目が更に大きくなる。
今迄、彼の笑顔は幾度もそう思ってきた。だが、まさかこんな表情にまで心動かされるとは、自分でも思っていなかった。



彼の眉間に寄る深い皺、少し手入れされた眉毛。奥二重の開かれた目、そこに生える睫毛。
ちょっと丸っこい鼻、不精髭の生える鼻の下。恐怖にわななく両唇、髭の生えた、無駄な肉の無い顎。
色白の肌、ボサボサの髪、球形に浮き出る汗、瞳に溜まる涙、痩せた身体、骨格、筋肉。


………全てが美しく、気が狂いそうになる程に愛おしい。
 



 
私は、彼がはりつけられている台を、ゆっくり垂直から水平状態へと倒した。
『…なっ……!何をするんですか…!?』と彼は声を上げて驚く。
部屋の赤い壁と天井の柔らかな照明を銀色の台が鈍く反射している。



私は無言のまま、寝そべった形の彼に跨がる様に銀色の台上へと登る。彼に跨がると、スカートから出た膝下に異常な程冷えた台の感触が伝わった。
包丁を持ったまま、両手を彼の両頬の脇へ手を付き、上半身を前へ傾かせてゆっくり下から上へとなぞる様に見つめながら、彼の顔の真上へ顔を動かす。
ちょうど彼へ覆いかぶさる様な格好だ。
ふと見ると、彼の涙は、今度は頬を伝わずに目尻からそのまま耳へと流れ落ちている。


もう、何も解らなくなった。
ただ目の前に居る彼が美しくて愛おしくて。
彼の涙も表情も、何もかもが欲しい。堪え難く愛おしい。
 

私はもっと顔を近付けた。
私の髪が彼の頬へ触れ、そして同時に彼の匂いが鼻腔を突き上げる。





私は導かれる様に彼へと口付けた。





彼は身を固くする。が、抵抗する素振りは無い。当たり前だ、私を怒らせる訳にいかないのだろう。


私は気を良くして何度も確かめる様に、貪る様に、深く口付けていく。
彼の渇いた唇の感触や彼の匂い、そして唇とは対照的な口内の湿り気や熱い吐息が、私の唇と鼻腔を介して脳へと伝わる。
………愛おしい。


一旦離れて彼に目を遣ると、彼は眉間に一層深い皺を寄せて、固く閉じた目から涙を幾重に零し、下唇を噛んで屈辱に堪えている。
………その姿が震える程美しい。ぐちゃぐちゃにしたい程愛おしい。


私は舌を延ばして、自分の唇をゆっくり舐めた。不思議な事に、そこからは彼の味がする。


彼の渇いた唇、そして不精髭が自分の皮膚を擦る感触、吐息、口内の湿り気、体温、匂い。
その途端、先程私を貫いた刺激の一つ一つが混ざり合い、一つの大きな濁流となって一気にフラッシュバックした。


私は身体を震わせ、もう一度彼に深く口付けた。






10月のアクセス数が2倍になってたんですね。ぬか喜びでした(苦笑  次の投稿は本当に遅いです、多分。











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