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少し前進しました

 フランは無言のまま部屋へと入ってきて俺の前に俯いたまま正座をして座る。

 そしてフランはお風呂上がりで、なんとも言えない色気を出していて、これが血がつながっていなかったら俺は暴走しているだろう。

 今の俺を支えているのは日本で培った倫理観だ。


 それに俺にはリノアがいる。

 こんな誘惑に負けてはいけない。

 負けたときは何もかも失うのだ。

 俺はリノアを失うわけにはいかない。

 俺は今日ここでフランの問題に決着をつけるのだ!!


「フラン――」

「お兄ちゃん!!」

「おわっ!?」


 俺がフランにちゃんと話をしようとしたところで、フランが俺に抱きついてきた。

 フランは身体強化でも使っていたのか、速く強い動きに俺は全然対応する事ができないまま、押し倒される。

 俺、このパターン多くね……?

 ってそんな場合じゃない!!


「フ、フラン! ちょ、ちょっと、とりあえず起き上がろうか」


 とりあえずこの体勢はやばい。

 俺の思考もままならない。

 だから、とりあえずこの体勢をなんとかして、冷静になって話をしないと。


 これはデジャブだ。

 でも、今度は同じ過ちを繰り返してはいけない。


「いや! お兄ちゃんが彼女と別れてくれるって言うまでどかない!」


 マジか……そう来たか。

 でも、俺は同じ轍を踏む気はない。

 ここで変な優しさを見せてもお互いにとっていい事はないはずだ。


 俺は目をつむり、邪心を捨て感じる感触に惑わされないように無心になる。

……よし!

 

「きゃっ!!」


 俺は闘気を発動させ、抑え込んでくるフランを押しのけ起き上がる。

 それでも、フランを吹き飛ばしたりしなかったあたりはまだ甘いのだろうか?

 俺はフランの肩を掴んで正面に座らせる。

 フランも俺に対抗しようとしたみたいだけど、俺の闘気には敵わないみたいで途中で諦めた。

 俺は戦士学校でベイル先輩の闘気を見て盗んだけど、フランは身体強化の魔法は使えても闘気は使えないのだ。


「フラン……落ち着いてちゃんと話そう」


 そうだ、感情に流される事なく、落ち着いて話す事が大事だ。まずは落ち着かないとな。

 フランも不服ながらもといった感じだけど、俺に敵わないと思ってちゃんと座っている。

 よし。


「フラン、前にも言ったと思うけど、俺とフランは血の繋がった兄妹だ。だから、俺とフランはそういった恋愛関係にはなれない。それは分かるな?」


 フランは俺の言葉に反応せず、ただ黙って下を見ている。

 でも、とりあえず話は聞いているようだ。


「だから俺は絶対フランの気持ちにこたえる事は出来ない。それはフランの事を大事に思うからこそだ。フランも俺以外の誰かを好きになる日が来ると思う。いつかは分からないけど、きっと素敵な人が現れるさ。俺が今の彼女に出会ったみたいに」


 きっといつかフランにも素敵な人が現れるだろう。理想は高いし難しいだろうけど、いつか必ず。


「でも……でも……」


 俺の言葉にフランは下を向きながら涙を流す。

 でも、俺は慰めない。

 今は現実に向き合ってもらわなくてはいけない。


「でもじゃないんだフラン。俺もフランももう大人に近いんだから。それに母さんが言ってたけど、俺は何があってもフランのお兄ちゃんだ。それは変わらない」


 そうだ、フランの気持ちには応えられないけど、俺はフランの兄だ。

 それはリノアと付き合っても変わらないし、兄としてフランの事が好きなのも変わらない。


「ひっく……でも……わだじ……まだ認め……られな……ひっく……い……」


 フランは泣きながらそう言うと部屋から出て行った。


「フラン……」

 

 何度見ても女の子の涙を見るのは苦しいものだ。それが例えどうしようもない事とはいえ……。


「はぁ~~転生も楽じゃないな」


 俺は一人そんな事を呟きながら横になった。


――――――


「おはよう、お兄ちゃん!」

「あ、あぁ、おはようフラン」


 明けて翌朝、起きて朝食を食べようとキッチンに行くとフランが元気にあいさつしてきた。

 なんだ? 急にこの変わりようは?


 俺はフランの変わりように戸惑いながらも椅子に座り母さんが用意してくれてた朝食を食べる。

 今日の朝食はパンとスープとサラダだ。前世の時より健康そうな朝食だ。前世では朝食食べない日もあったくらいだしな。

 どうやら父さんと母さんは畑仕事と洗濯か何かで家の中にはいないみたいだ。


「あっ、お兄ちゃん?」

「ん? 何だ?」

「私、お兄ちゃんの言う事、少しは理解したよ。でも、完全には諦めきれない。でも、お兄ちゃんの彼女が私より凄い人だと思えたら諦める」

「フラン……」


 そうか、少しは分かってくれたんだな。

 でも、私より凄い人だと思えたら諦めるって……。


「お兄ちゃんにふさわしいかどうか私が見極めるからよろしく言っておいてね」


 そう言ってウインクするフラン。

 リノア……大丈夫かな?

 いや、俺がなんとかしないとな。


「いやいや、見極めるって……。それにフランの方が先に好きな人できるかもしれないだろ? ジャグナル君とか?」

「……お兄ちゃん、冗談でもそれは止めて。お兄ちゃんでも許さないよ?」


 おぉ! ヤバイ!

 なんか体感温度が下がっている気がする!?


「ゴメンゴメン! 冗談だよ!」

「もう!」


 俺とフランは久しぶりに笑って話せた。

 完璧に解決した訳じゃないけど、一歩前進だな。

 俺はその後しばらくフランとの会話を楽しんだ。


 心の中でジャグナル君に謝りながら。


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