第05話:白皇学院
練馬区に広大な敷地を持つ進学校。名を白皇学院。
白皇学院は小中高一貫で都内でも有数な学校である。
そんな学校の前に、心は居た。
(此処があの有名な白皇学院)
「よし!」
心は気を引き締めると校門を潜った。
すると何処からともなく「ヒナえもーん!」と水色の髪の女性が走って来て心に抱き付いた。が、直ぐに距離を取る。
「って、ヒナじゃない! お前誰だ!? さては侵入者だな!」
女性はそう決めつけると、いきなり心に襲い掛かる。しかし、心にひらりと身をかわされ、女性は地面に顔面から突っ込んだ。
「何なんだてめえは!?」
心は女性を睨みながら言った。
「その前に貴様から名乗って貰おうか!」
(何なんだこの人?)
「えいっ、名を名乗れ!」
と女性が間合いを詰めた。
心は仕方なく名乗る。
「今日、転校してきた綾崎 心です。宜しくお願いしまーす」
心は棒読みで言って律儀にも頭を下げた。
「綾崎? 何処かで聞いた事あるような……。まあ良いか。私はこの学校の教師、薫 雪路よ」
「あ、そ」
心は雪路を無視して校舎に向かった。
その途中、木の上で立ち往生してる男を発見した。
「お前そんな所で何やってんの?」
心は気になり、近付いて訊ねた。
「何もしてねえよ! 別に高いのが怖くて降りられねえとかそんなんじゃねえからな!」
(うわ、何てツンデレ振りなんだ)
「成る程。平たく言うと高所恐怖症って奴?」
「平たく言うな! 兎に角、飛び下りるから受け止めてくれ!」
「えっ、一寸待て!」
しかし男は無視して飛び下りた。
ゴスッ!
心は顔面で男を受け止めた。
「てめっ、人の顔面に着地する奴があるか!?」
「受け止めろって言っただろ」
「つーか、何で怖いのに登ったんだ?」
「ああ。それはあれさ」
男は木の枝に乗った鳥の巣を指差した。
「あそこから雛鳥のチャー子が落ちたから助けてやったんだ」
と、その時、カラスがやって来て雛鳥に襲い掛かる。
「おい、お前! チャー子を虐めんじゃねえ!」
と男はカラスに向かって地面に在った石を拾って投げた。しかし、カラスがその石を羽で跳ね返した。
コツン!
跳ね返った石が心の頭に当たった。
心は額に青筋を立て、先程の石をカラス目掛けて蹴飛ばした。
石は物凄いスピードでカラスの目前を通過し、カラスをビビらせる。
「今のスピードで当てたら即死か?」
するとカラスは慌てて逃げて行った。
「お前、チャー子を救ってくれて有り難うな。俺、薫 雪ノ介だ。宜しく」
雪ノ介は心に握手を求めた。
「良いって事よ」
心は雪ノ介の手を握った。握手成立。
「私は綾崎 心だ」
「聞かない名前だな。ひょっとして転校生?」
「今日からなんだ。よく判ったな」
「母さんから聞いてたんだ」
「母さん?」
雪ノ介は校門の前で佇んでいる雪路を指差した。
「あれお袋さんなの!?」
「あんなのが母さんで困ってるよ。それより職員室行くんだろ? 案内してやるよ」
そう言って雪ノ介は心を職員室に案内した。
「失礼します」
と入室する二人。
雪ノ介はプラモが一つ飾られた席に座る教師の下に移動して言う。
「父さん、転校生連れてきた」
雪ノ介は手招きをして心を呼んだ。
「伯父さん?」
「そう言う君は心ちゃんか?」
「そうですけど」
「大きくなったな。義妹にそっくりだ」
二人が久しぶりの再会に浸っていると、雪ノ介が言った。
「父さん、知り合い?」
「何言ってんだお前。小さい頃に逢った事あるだろ。従姉の心ちゃんだ」
「マジ?」
「お前、あん時の泣き虫か。何処かで見たことある顔だなあって思ってたんだけど、やっぱそうか」
「暴力女!」
雪ノ介はそう言い放って逃げようとしたが、心に項を掴まれてしまった。
「それは聞き捨てならんな」
「ごめんなさい! 撤回するから放して!」
心は雪ノ介を放した。
「うわっ!」
雪ノ介は勢いあまって前に倒れた。
「いきなり放すなよ!?」
「放せって言ったのそっちじゃん」
「まあそうだけど。それより、母さんだぞ。担任」
だよな?──と京ノ介に顔を向ける雪ノ介。
「可哀想に。雪路に金をたかられないよう気を付けてくれ」
その言葉に心は言葉を失う。
まあそんな訳で、心の新しい学校生活は始まった。
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