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ヒナアフター
作:Daisy Katsura



第04話:合格


「白皇に転校したい」
 自宅に帰るなり、心はいきなりヒナギクに言った。
「はあ?」
 ヒナギクは訳が解らず疑問符を浮かべた。
「実はな、パパが昔働いてたって言う屋敷で執事のバイトをやる事になったんだ。そんでそこのバイトの条件が白皇に通う事なんだ」
「へえ。って、何よその条件?」
「知るか。そんな事より推薦書貰ってきた」
 心はヒナギクに推薦書を渡した。
 マリアからの推薦となっている。
 これを白皇に出せば良いらしい。
「解った。後で出して来るわ」
「ああ。所で晩ご飯」
「自分で作って。私もう寝る」
 ヒナギクはそう言って推薦書を仕舞うとベッドに潜り込んだ。
 心は台所に入り、適当に晩ご飯を作って食べ、風呂を済ませパジャマを着て布団を敷いて潜り込み、就寝した。


 翌朝、心が潮見に向かっていると、昨日の十字路で正太郎に出会った。
「おはよう御座います、綾崎さん」
「誰だお前?」
「えっ!? 僕ですよ、東宮 正太郎ですよ」
「知ってるから。私が奴隷の名を忘れる訳無かろう」
「一寸待て! 僕は奴隷じゃなくて彼氏でしょ!?」
「そんなのどっちでも良い」
「綾崎さん、虐めっ子?」
「虐めっ子言うな。それと心と呼べ」
「心さん、ですか?」
「ああ」
「解りました。今度からそう呼びます。その代わり、心さんも僕の事は正太郎って呼んで下さい」
「しょ……しょ……」
 言えなかった。
 それはそうだ。好きでもない男をそう呼べる筈が無い。
「やっぱ東宮と呼ばせてくれ」
「駄目ですよ。僕たち付き合ってんだから名前で呼び合わないと」「無理だ」
 即答した。
「第一好きでもない男を名前で呼べるか?」
「え、僕に気があるから挑戦受けたんじゃないの?」
「な、何を言う。私はただお前を奴隷にしたかったから挑戦を受けただけだ。そりゃまあ、少しは格好良いとか思ったけど、好きって言う感情は芽生えていない」
 心は頬を赤らめるとそう言った。
「やっぱあるんですね?」
ガスンッ! 
 心の拳が正太郎の頬に埋ずまる。
「何するんですかいきなり!?」
「インフルエンザウィルスが居たから潰してやったんだ」
「もや○もんですか!?」
「五月蝿いぞお前。殺されてえのか?」
「すみません」
 正太郎は頭を下げると口を閉じた。
 そして学校に着くまで、一言も喋らなかったと言う。


 昼休みを迎え、心は食堂で正太郎と飯を食っていた。
「東宮。お前に言っときたい事があるんだ」
「何ですか?」
「私、白皇に転校するかも知れない」
「え?」
「実は今、執事のバイトをやってるんだ。で、そのバイトの条件が白皇に通ってる事なんだ。だから白皇に転校するんだ。そうなるとお前とも逢えなくなるな」
「でしたら僕も行きますよ」
「マジ?」
「ええ。スポ薦で手続きすれば簡単ですから。これでもし心さんが白皇に転校しても、逢えなくなる事は無くなる訳です」
 説明しよう。スポ薦とは、スポーツ推薦の事である。
 心は正太郎をマジマジと見詰め、こう言った。
「ストーカー」
「違うよ! 僕たちは交際してんだからストーカーなんて言わないよ!」
 それを聞いた心はクスクスと笑う。
「何が可笑しいんですか!?」
「お前、予想通りの反応するから面白いなって思って」
「そうですか」
「ああ。ごちそうさま」
 心はそう言って席を立ち、食器を返却口に運んで戻った。
「お前、私より先に食ってるのに遅いな」
「あなたが早いんですよ! 食事が5分ってどんだけですか!?」
 しかしその問いは黙殺された。
「これ貰うな」
 心は正太郎の皿に載っていた海老フライを摘んで口に運んだ。
「あ、それ僕の大好物なのに!」
「お前がいつまでも残しとくからだ」
「僕は好物は最後に食べるんですよ!」
「先に食えよ」
「楽しみが無くなります」
 心は辺りを見回して席を立った。
「何処行くんですか?」
「何処でも良いだろ」
 心はそう言って他の食事中の人たちの下へ行き、海老フライが載ってる皿を見付けると、そこから海老フライを奪取した。
「あっ、それ俺の!」
「ああ!?」
 心は睨んだ。
「ど、どうぞ貰って下さい。その方が海老フライさんも幸せです」
「サンキュウ」
 礼を言うと心は海老フライを持って正太郎の下に戻った。
「詫びだ。貰っとけ」
「え、でもこれ、あの人のじゃ?」
「くれたんだから良いんだよ」
「僕には無理矢理盗んできた様にも見えますが」
「悪いか?」
「駄目ですよそんな事!?」
「私は可愛いから何しても許されるんだ」
「そう言う問題じゃないでしょう!? 兎に角返してきて下さい!」
「何だ。折角お前の為に盗ってきてやったのに食わないのか?」
「盗んだものなんか食えません。返してきて下さい」
「解ったよ」
 心は盗んだ海老フライを返しに行き、謝罪して戻ってきた。
「これで良いんだろ?」
「はい。けど嬉しかったです」
「海老フライか?」
「はい。盗るのいけませんが、人の役に立とうと言うのはとても良いことだと思います」
「そうだな」
「心さん、回りが言う程悪い人には見えないです」
「そうか?」
「はい。とても優しいです」
「……有り難う」
 心は席を立って去っていった。


 放課後、心は剣道部の部室に来ていた。
 理由は剣道部の部員だからである。
「綾崎さん、相手お願いします」
 部員の一人が誘いに来た。しかし心は追い返す。
「お前じゃ相手にならない」
 と。
「じゃあ僕とやりましょうよ」
 次に誘ってきたのは、正太郎だった。
 正太郎は剣道部の部長をやっている。
「手加減しろよ」
「了解」
 二人は胴着を着け、中央に立った。
「そっちから来て下さい」
 心は駆け、竹刀を振るった。しかし、一瞬で弾かれ、面を取られる。
「やめた」
 心は胴着を脱ぎ捨て元の場所に戻った。
「心さん、どうしたんですか?」
「やる気失せたんだよ」
「そうですか」
 と正太郎は去っていく。
(帰るか)
 心は更衣室に行き、着替えて帰り支度をし、部室を跡にした。


 自宅に着くと、ヒナギクが「御目出度う!」と言った。
「何がだよ?」
「合格したのよ、白皇に!」
「マジか!?」
「マジよ。これで明日から白皇ね。制服は私のがあるからそれ着るのよ」
バタッ! 
 心は嬉しさのあまり、気絶してしまった。
「わっ、心!?」
 ヒナギクは慌てて心を抱き、ベッドへ運んだ。
 そして心は翌朝目を覚ました。












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