第11話:心VSアサシン執事
異世界に召喚されて一週間が経過した。心は今、桂家に居候している。
「お袋、腹減った」
土曜の夜、心はヒナギクのベッドの上から机で勉強しているヒナギクにそう言った。
ヒナギクは勉強を嫌々中断すると、立ち上がって部屋を出ていく。その後を心が付け、二人はリビングに移動した。
ヒナギクは心の方を向き「何が食べたい?」と訊ねた。
「ハンバーグ」
「好きなの?」
「大好きだ」
「奇遇ね。私もなのよ」
そう言ってお台所へ入っていくヒナギク。
「遺伝だよ。生まれてきた時にお袋の好物が受け継がれたんだ」
「そう。て言うか、そのお袋っての辞めてくれない?何か老けたみたいで嫌よ」
「じゃあ何て呼べば良いんだ。ママか、ママと呼んで欲しいのか?」
「ヒナギクと呼びなさい」
「それは無理。自分の母親を名前で呼ぶのは抵抗ある」
「じゃあ呼びやすいので」
「オッケー。解ったよ、俎板さん」
その途端、ヒナギクの堪忍袋の緒がブチッと切れた。
ヒナギクは心を睨むと「あんたには言われたくないわよ!」と言って彼女の胸元を指差した。
「あんただって俎板でしょ!?」
「否、私は締めてるだけだ」
そう言って心は服を脱いで胸元を示した。そこには曝しが巻かれていた。
「外しなさい」
ヒナギクにそう言われ心は外した。
するとボインッと音が鳴ったのと同時に胸が膨らんだ。そのサイズは驚く程に大きい。巨乳……否、爆乳と言った所か。
それを見たヒナギクは床に膝を着き「負けた……」と酷くやつれた顔で呟いた。
「ねえ、どうしたらそんなに大きくなるのか教えて」
「大きくしたいのか?」
ヒナギクは「うん」と力強く頷いた。
「揉んで貰え」
その言葉に、ヒナギクはある妄想を。
それは、自分がハヤテに胸を揉まれている所だった。
ヒナギクはカアッと赤くなると慌てて妄想を中断した。
「駄目よ! 無理よ! そんなのさせられないわ!」
「誰にやられてたんだよ?」
「は、ハヤテくん……」
「好きなのか?」
「……うん、好き」
「コクれば?」
「それは拒否するわ」
「どうして?」
「負けた気がするからよ」
「……………………」
「私はね、告白するよりされるのが良いの。それに、ハヤテくんが私の事どう思ってるかなんて判んないし」
「ようし。それじゃあパパの気持を私が確かめてやろう」
心はそう言いながら胸元に曝しを巻き服を着た。
「どうやって?」
「お袋に化けてパパと一日デートをする。その間にあの人の気持を探るのさ」
心はそう言って携帯電話を取り出した。
「所で、番号解る?」
「え?ああ、番号ね」
ヒナギクは携帯を取り出して電話帳からハヤテの携帯番号を呼び出して心に見せた。
心は番号を打ち込むと発信した。
プルルルルルル──と呼び出し音が鳴り、ハヤテが応答した。
「はい、ハヤテです」
「あ、ハヤテくん。私、ヒナギクだけど」
と声を高くしてヒナギクヴォイスを出す心。
「あのね、明日の日曜日なんだけど、時間あるかしら?」
「空けようと思えば空けられますが?」
「そう。じゃあ明日のお昼に負け犬公園で待ってるわ」
そう言って心は電話を切って仕舞った。
日曜の正午。髪をピンクに染め髪留めを付けた心は負け犬公園でハヤテを待っていた。
「お待たせしました、ヒナギクさん」
とそこにハヤテが現れた。
心はハヤテの方を向き「私も今来た所よ」と答えた。
「それじゃ行きましょうか」
「はい。所でどちらに行くんですか?」
その問いに心はポケットからチケットを2枚取り出した。舞浜にある遊園地のである。
「あの、これってひょっとして」
「デート。少しは喜びなさいよ? 折角の女の子からのお誘いなんだから」
「でしたら辞めておきます」
「は?」
心は何故と言いたげな顔をした。
「お嬢様にバレたら怒られる気がするので」
「ふうん。ハヤテくんは私とデートするのがそんなに嫌なの?」
そう言って心は顔を顰めた。
「べ、別にそう言う意味で言った訳じゃあ・・・」
「じゃあどう言う意味?」
と心は間合いを詰めるが、しかし、ハヤテは答えられなかった。
心はハヤテの胸倉を掴んでグイッと引き寄せた。
「早く本当の事言いなさい。怒らないから」
「ほ、本当に怒りませんか?」
「うん、怒らないわ」
と心は笑顔で言ってみせた。
「では言いますけど、ヒナギクさんって何かあると直ぐ怒るじゃないですか。だから一緒に居るのは嫌なんですよ」
ハヤテがそう言うと、心の拳が顔面にめり込んだ。
「おぶっ!?」
「殴られたい訳?」
「殴ってから言わないで下さい」
「はぁ」
心は溜め息を吐きながら肩を竦めた。
「帰る」
そう言って心は桂家に向かって歩き出した。
(拙い、ヒナギクさんを怒らせてしまった。仕方が無い。此処は巧く機嫌を取って……)
ハヤテはそう思うと、後を追い掛けて肩を掴んだ。
「ヒナギクさん、やっぱり行きます。遊園地」
とその時、二人の足下に手裏剣が飛来。地面に突き刺さった。
二人は感嘆の表情を浮かべると、手裏剣が飛んで来た方を向いた。その先には時計があり、その上に忍者の格好をした人物が立っていた。
忍者?──と二人は首を傾げた。
何と無く忍者っぽい奴は「私はアサシン執事。綾崎 颯、貴様の命は貰った」と言って飛び降り、着地に失敗して転ぶ。
その時二人はこう思った。間抜けだなぁ、と。
すると自称アサシン執事が立ち上がり叫ぶ。
「お前ら今、間抜けだとか思っただろ!?」
その問いに二人は首を横に振るった。
「ふんっ、まあ良い。勝負だ、綾崎 颯!」
自称アサシン執事がそう言うと、そいつの前に<今週の執事バトル!>と言うテロップが現れた。
「一寸待った!」
心が叫び、テロップを退かして別のテロップを表示させた。<アサシン執事の死に様>と言うテロップだ。
「な、何故私が死なねばならんのだ!?」
「何と無く」
「理由も無く表示させんな!」
アサシン執事はそう叫んでテロップを退かした。
「そんじゃあ綾崎 颯!覚悟しやがれ!」
とハヤテに襲い掛かるアサシン執事。だが、心が素早く足払いを掛けてそいつを倒した。
ドテッ!──と腹這いになるアサシン執事。
「貴様、私の邪魔をすると言うのか!?」
アサシン執事は立ち上がり心を睨んだ。
「する」
「そうか。なら先に貴様の命を貰おう!」
アサシン執事は懐から小太刀を取り出して攻撃を開始した。しかし、軽やかに回避され、攻撃は全て空を切る。
「鈍いな、お前」
とその時、小太刀の刃が心の胸元に触れ、服と一緒に曝しが引き裂かれた。
ボインッと膨らむ爆乳。
心は顔を真っ赤に染めると「てめえよくも!」とアサシン執事に足払いを掛けて直ぐに宙へ蹴り上げ、連続キックを156,804,000回お見舞いして跳び上がり、前転して踵で叩き落とし着地した。
アサシン執事はボロボロになって気絶していた。
一方ハヤテは心の爆乳を見て鼻血を垂らしている。
「あ、あの、ヒナギクさんってボインでしたっけ!?」
「見るなぁ!」
心はハヤテの懐に一瞬で駆け、アッパーカットを繰り出した。
ハヤテは「うわあああああああ!」と悲鳴を上げて遥か彼方へ飛んで行った。
「あっ!」
と心はその場で固まった。
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