ヒナアフター(10/13)PDFで表示縦書き表示RDF




異世界へ飛躍する第10話。
「お袋、私は暫く帰れません。by.心」


ヒナアフター
作:Daisy Wig



第10話:心、召喚される


 夏澄が土下座をしたのに対して心は顔を上げる様に言った。
「解った。そこまで言うなら手伝ってやる」
「本当ですか?」
 と夏澄が顔を上げて訊ねる。
「ああ。で、何をすれば良い?」
「えっと、取り敢えず音楽室に行きましょう」
 夏澄はそう言うと立ち上がって歩き出した。その後ろを、心が付いて歩く。
バキッ!
 突然、床が割れて心は落下した。
「大丈夫ですか!?」と夏澄が振り向き、穴の下を覗く。
 すると直ぐに返事は来た。
「ああ、大丈夫だ。つーか、一階なのに何で落ちるんだよ?訳分かんねえよ」
「さあ」
 と夏澄は肩を竦めた。
「まあ良いや。取り敢えず上がるそこ退いてくれ」
 夏澄は「解りました」と頷いて下がった。
 すると、穴から何かが飛び出してきて天井に当たって跳ね返り、床に着地した。その正体は心である。
「よし、そんじゃあ音楽室に」
 そこまで言った所で、心は謎の光りに包まれた。
「ちょっ、何だこれ!?」
 と彼女が驚いている間に、謎の光りは夏澄の前から消失してしまった。


 気が付くと、心は何処かの広い部屋に居た。
 正面からは真空の刃が迫って来る。
 心は咄嗟に正宗を構えると、迫り来る斬撃を弾き飛ばした。
「何処だ、此処?」
 と辺りを見回す心。
「あー!」
 心は此処が何処であるかと言う事に気付くとそう叫び「ナギさんの部屋だ! しかし何故いきなりこんな所に?」と疑問符を頭に浮かべた。
「あなた、何者!?」
 と声が聞こえた。
「え?」
 心は声の方を向いた。その先には、ピンクの長髪に髪留めをした少女が立っていた。幼い頃のヒナギクだ。
「お袋?」
 と心が首を傾げる。
 ヒナギクは「は?」と目を丸くした。
「あの、君は一体?」
 と後ろから声が聞こえた。振り返ると、そこには父親のハヤテが居た。
「パパ!」
 心はそう叫び、正宗を放してハヤテに抱き付いた。
「え、パパ?」
 ハヤテは首を傾げた。
「久しぶりだね、パパ」
「あ、あの、君は誰?」
「えっ、パパ、私の事忘れちゃったの!? 娘の心だよ!」
「知らないよ。て言うかそもそも僕に娘なんか居ないって」
 心はその言葉に驚いた。
「何言ってんだよパパ! パパは綾崎 颯でしょ!? 私はその綾崎 颯の娘の心だよ!」
 ハヤテは訳が分からず頭が真っ白になった。
「あの、あなたは一体?」
 と傍らに居た夏澄似の少女が心に訊ねる。
「ん?」
 心が夏澄似の少女に向く。
「えっと、夏澄?」
「いえ、伊澄です」
「何だ、伊澄さんか。そっくりだから間違え……って、ええ!?」
 心は驚いて飛び上がりそうになった。
「そんじゃあ此処は過去!?」
「否、多分、あなたから見れば異世界かと」
「異世界?」
「はい。あなたの事は、私が異世界から召喚しました」
「何か男の子が女の子の使い魔になるアレみたいだな」
「ヤマグチノボルが描いたアレですか?」
 とハヤテ。
「そうそう、それそれ! つーか、話し変わるけど、二人は何で戦ってんの?」
「ああ、それは──」
 とハヤテが心に今ある状況の事を説明した。
「成る程。お袋の体からそいつを追い出せば良いんだな? 任せとけ」
 心はそう言って自分の胸を叩くと、ヒナギクの方を向いた。
「正宗!」
 心はそう叫んで手放した正宗を引き寄せて装備し、ヒナギクの背後に回り込んだ。
「はっ!」
 と野球の打球フォームで正宗でヒナギクの腰を叩き、透過させて体内の何かを吹っ飛ばした。
 同時にヒナギクの体が倒れた。
「ヒナギクさん!」
 とハヤテが駆けてくる。
 心は彼女をハヤテに任せると、先程吹っ飛ばした何かに近付いた。その何かは全身がメタルで出来ていた。
「貴様がアンゴル・モアか?」
 謎のメタル生命体、アンゴル・モアは「その通りだ」と答えた。
「ノストラダムスの予言は本当だったか」
 と心は正宗を振りかぶり、振り下ろし際に「まあそんな事より、貴様は私が潰す!」と言った。
 アンゴル・モアは振り下ろされた正宗を全身の硬い体で弾き飛ばした。
「何っ!?」
 心の手から正宗が離れ、宙を舞って床に突き刺さる。
「この野郎!」
 心はアンゴル・モアを殴った。
ガンッ!──と鈍い金属音が鳴り、同時に心の拳に激痛。
(かてえ此奴!)
「俺の体はヒヒイロノカネと言う金属物質で出来ている。この金属はこの地球ほしで一番硬いと言われているダイヤモンドの刃でも傷は付けられないぞ」
「何?」
「ふんっ」
 アンゴル・モアが心の腹に拳を埋ずめる。
「がはっ!」
 心は吐血し、吹っ飛んで壁にめり込んだ。
(仕方ない。こうなったら)
 心は壁から抜け出すと、気を溜めた。
「はああああああああああ!」
 金色のオーラを身に纏い、筋肉が膨張する心。
「3分で決める!」
 心はそう叫ぶと、一瞬でアンゴル・モアの懐に移動し、顔面を殴り付けた。
 アンゴル・モアは勢いよく吹っ飛ぶが、直ぐに体勢を直して心に接近。打ち合いが始まった。
(クソッ、強い!)
 心は隙を見て距離を取り、正宗を引き寄せて掴み構えた。
「貴様と格闘してても埒が明かねえ。こいつで終わりにしてやる!」
 心はそう言うと、傍らに落ちていた曝しの付いた大きな出刃包丁っぽい物を拾って口に銜え、ヒナギクの下に落ちていた木刀を引き寄せて空いている手で握った。
(正宗!?)
 とその木刀を見て感嘆する心。
(そんな事よりも)
 心は出刃包丁っぽいのを口に銜えたまま、
「三刀流、カマイタチスラッシュ!」
 と叫んで駆け、三本の刀を振るい、アンゴル・モアの背後へ抜けた。
 するとアンゴル・モアの体がバラバラになって八方に飛び散った。
「おのれ、よくも殺ってくれたな!」
 その声と共に、アンゴル・モアの破片が一点に集まり出して一つになり、元の形に戻った。
「こうなったら貴様に乗り移ってやる!」
 アンゴル・モアがそう言って心に跳び掛かると、彼女が言った。
「お前はもう、死んでいる」
「え?」
 とアンゴル・モアが疑問符を浮かべた刹那、アンゴル・モアは爆裂霧散。爆風が発生し、傍らに居たハヤテ、ヒナギク、伊澄は吹っ飛ばされて壁にぶつかった。
「うわっ!」
「キヤッ!」
「痛いです」
 と三人は壁からずり落ちて床に倒れた。が、ヒナギクが直ぐに立ち上がり、心に近付いた。
「一寸あなた」
「何だ?」
 と銜えていた出刃包丁っぽい物を口から離して振り向く心。
「何だ、じゃないわ。危ないじゃない! 死んだらどうしてくれんのよ!?」
 ヒナギクはそう怒鳴りながら睨んだ。
「ごめん。あんなに強風だとは思わなくて」
 ヒナギクは「はあ」と溜め息を吐いて肩を竦めた。
「まあ良いわ。三人とも無事だから。それはそうと、あなた私にそっくりね」
「そっくりなのは当然だよ。だって私、綾崎 颯と桂 雛菊の長女だから」
「……え?」
 ハヤテとヒナギクは目を点にした。
どう言う事?──と訊ねる二人。
「つまりこう言う事ではないでしょうか」
 と伊澄が口を開き、二人が彼女の方を向いた。
「心さんの居た世界では、お二人が心さんの両親なのではないでしょうか」
ですよね?──と顔を心に向ける伊澄。
 心は素直に頷いた。
「私とハヤテくんが!?」
 ヒナギクはハヤテの顔を見ると顔を真っ赤に染めた。
「……?」
 ハヤテはそんなヒナギクを見て頭上に疑問符を浮かべた。
「所で伊澄さん」
「はい、何でしょう?」
「私は元の世界に帰れるの?」
 その問いに伊澄はソッポを向いた。方法が無いらしい。
「どうなの?」
「……さあ?」
 と肩を竦める伊澄。
「さあ、じゃねえよ! 帰れなきゃ困んだよ!」
「そんな事言われましても、還す方法が判りません。すみませんけど、判るまでこの世界に居て下さい」
「そんなぁ……」
 心はその場に崩れて膝を床に着いた。




予告通りリンクさせてしまいました。
こっちは心視点であっちのとは微妙に違ってますが、内容は一緒です。
では次回












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう