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STG/I 作者:ジュゲ
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第六話 初めての戦闘

「まずは退避行動!距離をとって様子をみたい」
 駄目もとで言ってみた。
「わかりました」
(出来るんだ。ヘッドセットつけといて良かったぁ~)
 メイン推進装置が稼働すると電機自動車がモーターで滑り出すように音もなくスムーズに加速する。
「あれか・・・隕石と見分けつかんな・・・倒せそう?」
 設置したポッドが敵影を捉え赤くマーキングされている。
「STG装備であればなんであれ倒せます」
「よっしゃ。武装は・・・直射のツインバルカンか・・・当てるのがキツそうだね」
 アステロイドの破片を盾にしながらホムスビが回避行動を繰り返す。
 描く軌道は人間の操舵では困難なものに思える。
(音声オペレーションなかったら無理ゲーだろ・・・)
「後ろつかれているから撃てないな・・・振り切れる?」
「現時点では困難です」
「ツインバルカンが後ろに撃てればなぁ」
「操舵を私が専従し、マスターは銃座モードに移行すれば攻撃は可能かと思います」
「銃座モード?(そんなこと書いてあったかな)」
「三百五十度範囲にツインバルカンが稼働するモードです」
「それイイネ!」
「銃座専用モードに移行しますか?」
「やろう!」
「かしこまりました。銃座、開きます」
 シートのロックが外れたような振動がすると、座席が下がり別な空間に移送を始める。
 格納されると、そこはプラネタリウムのような天体型の空間になっている。
 自分は座席と操縦桿ごと宙に浮いた形になった。
「おっほー!カッケーなんだこれ!洒落になんねー!」
 全方位がモニターになっているようで、真っ白な壁面に周辺の様子が映し出される。
 全方位に広がる宇宙、まるで宇宙空間に飛び出したかのようだ。
 モニターに赤い像がオーバーライトされ距離とタイプが表示。
(索敵ポッド便利だな。完全にどこにいるかわかる)
 隕石の裏に回ると色が暗くなり縁だけが赤く見える。
 タイプには”アイアンメテオライト”と表示されているようだ。
「いくぜえええ!」
 敵に向けロックオンすると銃座が自動的に相手を捉えた。
 半オートマティック。
 昨今のゲームにはよく見かけられるもの。
(AIMの下手な俺みたいなオッサンにはありがたい)
 ロックオン範囲に入れば自動で銃座が追尾してくれる。
(マークした敵ではないとロックは出来ないんだっけ・・チュートリアルでやったな)
「くっそ、隕石の癖に生意気な!」
 宇宙生物は隕石を利用しながらうまく避けている。
「アイツってかすったぐらいじゃ死なないか」
 瞬間的にヒットはしていたが敵の迫る勢いは衰えなかった。
 全身がホログラム化されたビーナスが現れ応えた。
「無力化するまで削る必要があります」
(操縦しているはずなのに横に立たれると怖いな・・)
 彼の横に立って宙に浮いていたが、喋る終えると消えた。
「削りゲーか、わかった」
(チュートリアルでは簡単だったのにな)
「STGに実際に乗るとどういう感じだろうか」そんなことを思いながらサイトウはマウスを握りしめる。
(ミッションを全部飛ばしたのはマズかったかな)
「ビーナス、回避起動を最小限に」
 回避行動がクイック過ぎて銃座が敵についていけない。
 自分の反応速度が低下しているせいもあると思ったが、それにしてもと感じた。
「イエス、マスター」
 あくまで銃座は後追いになる。最終的には自分で狙いをつける必要があった。
 彼女たちパートナーは言われたことは守るが次の行動に自我がないように思える。
(これもカスタマイズすれば自我的行動をするようになるのだろうか?)
 ホムスビが直線軌道と回避軌道を繰り返す。
 直線軌道に入った途端、射線に敵が現れた。
「いただき!」
 鮮やかな緑色の光弾が宇宙人に吸い込まれる。
 悲鳴のような音をたてながら、モニター上の隕石の体力バーがガリガリと削れた。
 砕け散った隕石表面が辺りに四散。

「ひゃっはー!」

 サイトウは雄叫びを上げる。
 まるで映画で見たシーンの再現。
 あと一歩。
「言語認識不能。今の発言はどういう意味でしょうか?」
 彼を冷めさせる言葉に眉を寄せる。
「雄叫びだと思っていいよ」
「かしこまりました。分類はどうしますか?」
(そんなの後にしろよ)
「分類もなにも・・・そうね、『ヤッター!』みたいなもんかな」
(これだよ、これが所詮は機械ということだ。ま~無理もないが)
「登録しました」
「それはどうも・・・」
 またしてもホログラム化されたビーナスが彼の横に現れた。
「何かお気に召さないことでも申したでしょうか?」
「え?まあいいから、まずは目の前の敵ね」
「イエス、マスター」
 消えた。
(惜しい仕上がりだなぁ。十分凄いけど)
「敵、急速離脱、索敵圏外へ」
「あ~逃したか。・・・ま、しゃーない。初遭遇にしちゃ上出来でしょ。(それにしても思った以上に緊張感ある)ところでさっき撃った時に悲鳴みたいなの聞こえたけど?なんなのアレ」
「現在明確には判明しておりませんが、悲鳴と仮定されています」
「え?・・・宇宙なのに何で聞こえるの」
「彼らの言語は空気振動ではありませんがSTGの表面に共振し、地球人には声のように聞こえると推測されています」
「あの隕石って・・・生きてるの?」
「はい」
「ま、そうか・・・宇宙人と言うぐらいだからね。あの音は遮断できないもんかね・・」
(俺はホラーとかリアル系は好きじゃないんだけどなぁ)
「申し訳ありません。それは出来ないようです。何か音楽でも流しますか?」
 そう言えばBGMが鳴っていない。
「あ~・・・いいや、このままで。ところで操縦席に戻るには何を押せばいいのかな?」
「失礼しました。コックピットに格納します」
(うーん、この辺りも音声指示か)
「じゃあ、索敵ポッド配り再開しようか」
 さっきの遭遇でポッドの重要性は痛いを理解出来る。
 彼が気分を仕切り直そうとすると無情にもビーナスが告げる。
「マスター、その必要はないようです。作戦時間限界につき撤退します。アラートは失敗、現宙域を放棄します」
「マジかー何もやってねー」
 刹那、突然画面が真っ赤にそまり”Alert”の文字が点滅する。
「ビクッた~なんだこれ!」
「敵反応多数、急速接近、宙域を緊急離脱します」
 自分たちが巻いて回った索敵ポッドの反応が次々と消える。
「うわうわうわうわ!」
 今度はマーキングされた敵影で画面が真っ赤に染まりつつあった。

 ホムスビが船首から腕輪のような緑色のリングを複数発射させると同時に急速に加速。

 星々が光の帯となり真っ白になった直後、視界が暗くなった。

(離脱だけは指示を仰がないんだな・・・)

 画面が切り替わる。

「・・・」

「マスターお疲れ様でした」
 ビーナスが立っている。
 ゲート内へ戻っているようだ。
 脳の反応がおいついていかない。
「えーっと、終わり、なんだね」
「はい、無事帰還出来ました」
 言い方が引っかかる。
「・・・帰還できないこともあるの?」
「はい、失敗の際、帰還率は二十%です。マスターのホムスビは本体から遠い位置に居たため問題ありませんでした」
「そうなんか~・・・負けたらキツイね」
 最初にみたSTGが頭に浮かぶ。
「そういえば最初に遭遇したダンゴムシってやつ、帰れたんかね?」
 ビーナスは一瞬、空を見上げると。
「大破してます」
「そっか・・・」
(どうしてソイツのパートナーはSTGを帰還させないんだ?)
「報酬と戦果はコチラになります」
「お、失敗でも少しは貰えるんだ」
 モニターに戦果と報酬金額が加算されている。
「アラートは生還、成功、活躍、参加で報酬が加算されますが、中でも生還の位置づけは成功より上の位置づけです。ただし失敗した際の戦果は成功に比べ大幅に下がります」
「そんなに大切なんだ」
「資源は有限ですので」
(言うてもゲームでしょ)
「リアル系なんだな。ちなみに生還出来なければ?」
「参加と活躍による報酬のみとなります」
「それっとどんなもん?このゲームってSTGの修理費かかるよね」
「はい。改造レベル7以後は概ね三〇%以上の修理で赤字になります」
「大破したら?」
「レベル3以上でマイナスです」
「なるほどなぁ・・・キツイなぁ」
(なんとなく色々見えてきた感がある。勝てないクエストに参加するのはリスクが大きすぎる。圧されている試合なら戦いが自ずと消極的になる・・・すると負け試合になる。あるあるではあるが)
「さっきのアラート、途中離脱者何割かいたでしょ」
「いえ、一度出撃すると退避命令がない限り戻ることはできません」
「え?じゃあ、あの”ダンゴムシ”はなんなの」
「クエスト中にログアウトした者は放棄者と分類され離脱者とは区別されます。クエストそのものを放棄したため出撃記録は残りますが戦果は得られません」
「あのプレイヤーはなんの為に・・・そっかアカウント維持の為だけか。・・・放棄者はどれぐらいいる?」
「一二%です」
「結構いるな~オイ。ゲームとして成立しとらんでしょ。大破したら元も子ないだろうに。萎え落ちか?」
(そういう連中のSTGに登場したパートナーどんな感じなんだろうな・・・これだけ高度なAIだと俺なら見殺しは出来そうにないのだが・・・)
「質問ばかりで悪い。アラートに失敗して大破してゲーム内マネーが足りなかったら?」
「戦果で補う形になりますが、その戦果も不足していればアカウントを維持出来ないと思われます」
「なるほど・・・」
 妙な話だとサイトウは思った。
 戦いには出たく無いけど、STGは維持したい。
(そうか・・・)
 維持したいのはSTGと言うよりパートナーかもしれない。 
「STGの建造には多大な資材を消耗するので、とにかく大破しないように気をつけることをおすすめします」
「資材はどうやって稼ぐの?生産要素ってあったっけ」
「資材は戦果を寄付することで上げることが出来ます」
「うわ~・・・寄付制か~。それだと集まんねーだろ」
 ビーナスは困った顔をした。
「わかった。ありがとう、助かったよ」
「それでは、お疲れ様でした」
 ビーナスが頭を下げた。
「ちょっと待って」
 サイトウはシューニャを動かしビーナスに密着させる。
(凄いな・・・ここでも超技術発見)
 3Dゲームにありがちな触れられそうで触れられないということがない。
 ちゃんと密着した。
 頭髪も長いと普通のゲームでは体にめり込んだり、テクスチャの裏側に入り込んでしまうのだが、そういうことが無かった。更にビーナスに押し付けると、ちゃんと胸の形が変形している。
(なんだこの謎技術は・・・初めて見たぞ)
 サイトウはこうしたちょっとしたことを丹念にやるゲームを好んだ。
 このゲームに関しては彼からすると超技術の宝庫に思える。
「ユリッユリやで~」
 ビーナスは身体を避けこそしないものの戸惑っている。
「あの~・・・」
「ゴメン、なんでもない。見なかったことにして・・・」
(AIとはいえ、やっぱり凄い恥ずかしいもんだな・・・)
「んじゃ」

 余韻を抱えたままゲートをくぐりロビーへと戻ると、中央のホラグラムビジョンに少数ではあるものの人だかりが出来ていた。そこには今しがた行われていた戦闘の映像が流れている。それを眺めるプレイヤーの視線は妙に熱心。恐らくこの中の幾分かは出撃したのだろうが。
 サイトウも見るともなしに眺めつつ、ホログラムに歩み寄る。

 前線は地獄絵図。

 見たこともない装備、見たこともない敵。そして動き。
 巨大な隕石に見えたが、敵のようだ。
 クレーターから群青色で伸縮自在のアメーバーのような触手が伸びるとSTGと捕縛。蜘蛛の網に捉えられた紋白蝶のように見えた。「人型のような敵もいるのか?」隕石型ではないタイプも見えた気がする。画面は次々と切り替わる。
(これ・・・無理ゲー過ぎるだろ・・・)
 これまで長い間この手のゲームをしてきた直感でか、体感的にそう思えた。
 明らかに数が足りていない印象だ。
 むしろよく耐えている。
 一瞬だが彼の乗るホムスビが映る。
(あ、俺だ。・・・幾つになっても嬉しいもんだな)
 画面を見る自分がニヤけている。
「寄生が・・・」
 モニターのより近くで見ていたプレイヤーの一人が呟いたものだ。
 男性壮年型のアバター。
 黒いジャケットに革のパンツ。
 映画で見たような雰囲気だ。
「仕方ないよ。ほら学徒兵だ。しかも初出撃」
 隣の連れ合いらしき毛むくじゃらの動物型アバターが応える。
「迷惑だな~」
「まあ、手っ取り早く戦果上げるにはアラートが一番だからね。俺らもやったろ」
「あの頃とは状況が違う。今は一人でも使えるヤツがいないと」
「でもコイツ、ポッド配置してるじゃん。マシな学徒兵だよ。わかっている感じ。他の新参者は妖精すら配らね~で、倒せもしない癖に前へ出るから。迷惑千万だよ」
「まーな」
「作戦指示にも従わない、乱す、ただただSTGをゴミにする。ほら見ろよ」
 見るとは無しに見ると”ダンゴムシ”が映っている。
「またコイツかよ!クソリーバーがいい加減シネよ!」
「ほんとこいつらって宇宙人のスパイじゃねーの?戦いもせず次々と壊しやがって」
「本当にSTGがゼロになったら地球はアウトなのかね?」
「さ~な・・・」
 二人はホログラムモニターの前から歩き去る。
(どこにでもいる・・・ああいうの)
 今の話を聞きながら彼は妙に頭に引っかかった。
 ビーナスも言っていた残機のこと。
 残機がどうしてそうも重要なのか。
(ゼロになったらゲームオーバーってことか?ゲームオーバーになった第二シーズンとか。シーズン制なのかね)
「ビーナス・・・あ、そうか」
 ロビーでサポーターを呼ぶことは出来ない。
(便利さに慣れると、些細なことが不満に感じるもんだね~)
 そんなことを思いながら、画面の前のサイトウは舟を漕ぐ。

「あー眠い、駄目だ、もう起きてられない」

 抗うように顔を激しく擦る。
 皮膚がポロポロと崩れた。
 頬、眉の上、鼻筋の地肌が赤い。
 抵抗を諦めたのか、辛うじてログアウトを選ぶ。
 右目が斜視がかりピントが合わない。
 眠気が限界にきている証だった。
 肉体がこれ以上は見るなと言わんばかりの抵抗を示す。
「まだメールチェックすらしてないのに。とにかくもう無理だ・・・」
 雪崩れ込むように布団に体をすべらる。
(あ~・・・そう言えばトイレに行きたかったんだ・・・)
 一分としなうちに意識を失うかのように眠りに落ちる。
 頭の中では「どうして、どうして」という言葉だけがリフレインされていた。
 外からは光が差し込み穏やかな日であることがわかる。
 彼がそれに気づくことはない。
 その表情はいつもより穏やかだった。
+注意+
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