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STG/I 作者:ジュゲ
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第二十八話 敵と敵と敵の敵

「アルガナ、追ってが多すぎる戻れ!」
「フォロー頼む!引き離せない。機体レベルが低すぎて出力が足りん!」
「プリンは行ける?」
「ムリィ~!」
「わかった。タッちゃん、フォロー頼む」
「了解」
「こちらリーガル、俺はヤマアラシの救援に向かう。”おはぎ”マッシブグローリーを展開してくれ」
「まかせて~」
「アメリカの連中は俺たちを盾にして高みの見物かよ!割に合わねーぞ!」
「割なんて端っからねーよ」
「アイツら大東亜戦争でも同じことやってたろ・・・くっそ頭にくる」
「タッちゃん悪い。ヤマアラシの方がマズイ、アルガナの救援は俺が向かう」
「わかった」
「ビーナス、もう少し前線へ出てせめて索敵範囲を拡張したい」
「マスターそれは危険です」
「しかしだな・・・」
「普通これだけレーダーサポートを受けられる戦場はそう多くありません。マスターがこれまで諜報系の装備レベルを充実させていたお陰と言っていいと思います」
「そんなこと言っても見えてるだけじゃないか・・・」
「見えないより遥かにマシです」
「それもそうだけど・・・。ヤマアラシの宙域にガントレーダーを射出し、フォローしてくれ」
「了解!」
「レディ、ファイヤ!」
 STGアメリカは想定外の事態に見舞われた。
 戦局の悪化タイミングを見計らって遊撃隊”ブラックナイト”の宙域への侵入を許可。
 通常はレベル六相当のSTGが戦闘すべき宇宙人を相手に、多くがレベル五にも満たない我々を放り込む。

 もっともそれを許可したのはドラゴンリーダーである。

 この提案に対しシューニャ以外の全員が反対、竜頭巾は沈黙し、リーダーに委ねる。
 それでもリーダーは言った。
「これはチャンスだと思え!俺たちはもう国が無いと思っていい。アウェーが当たり前なんだ。今までみたいに甘い汁なんて絶対に無い。普通ならレベル五は欲しいところだけど、皆の実力はわかっているつもりだ。プレイヤースキルで対応出来る相手と思う。俺たちの実力を見せつけてやれ!ただし新メンバーに慣れていないから各自連携の確認だけは怠るな。特にシューニャの小隊だったメンバーには気を配ってやってくれ。アメリカの連中に俺たちを舐めたら痛い目を見るっていうことを思い知せてやれ!いくぞ!」

 リーダーの喝の効いた大号令の元、我々は出撃した。

 結成時、シューニャは質の件を言ったが、内心「質にも絶対的な必要数はある」と思っている。実力をよく知るリーダーが言うのであれば行けると考えたが、内心は不安で一杯だった。本来、アラートはせいぜいレベル前後一が限界とされ、二も開くと極めて困難になる。余程の操舵スキルがない限り無理と言っていい。にも関わらず多くは二から三はある。
 それなのにアメリカは取引を持ちかけた。
 彼らにとっては仮に我々が大破し、退いても一切のデメリットがない。
 自らは計画通りの狩りに集中できて、リスクも減らせる。メリットしか無い。

「試されている」シューニャはそう直感する。

 社会やビジネスの現場でそうしたことがあった。
 本来無い領域に食い込む時、無謀とも言えるような機会しか与えられない。
 試されている時に逃げ出すとチャンスは無い。
 しかし失敗すればチャンスは愚か全てを一瞬にして失う。
 どう駆け引きを熟すか、能力を問われた。
 チャンスは訪れそうで、滅多に訪れることはない。

 賭けに出たんだ。

 リーダーがシューニャに言った指示は徹底的なレーダーサポート。
 苛立ちの原因はコレ。
 僅か十機のSTGの内、戦闘から一機抜けるのは大事に思えた。
 ワンダーランドはレベルこそ該当しているもののアタッカーではなく機雷偏重の工作型。
 唯一まともなアタッカーはミネソタ一機と言っていい。他は先の戦いで失われているか、竜頭巾のブラックドラゴンのように修復中。他のSTGは新造の為、寝る間も惜しんで熟したミッションで辛うじて上げたレベル三がせいぜい。速度、耐久性も段違いである。
 普通に考えるとアメリカ側も相当な無茶振りであるが、出来ないと思っているからこその依頼なのだろうとシューニャは思った。

 リーダーの作戦は大胆なもの。

 低レベルSTGで釣り、集めた敵をケシャの機雷でまとめて飛ばす。漏れた宇宙人はプリンが始末。逃れた際は他のSTGが複数で落とす計画。これは訓練中のフォーメーションでもあったが、充分とは言える練習は積めていない。皆が甘く考えていたというのもある。そんな事態には陥ることは無いだろうと。リーダーだけは違ったようだ。
 そして、大破ゼロ、中破ゼロで抑えよ、というの指示だった。
 人の言うことを聞かないケシャが到底この作戦の要は務められないのではないかと思っていたシューニャだったが。

「ワンダーランド移動、誘導予定地を変更!」

 リーダーはケシャのある種の才能を見抜いていたようだ。
 刻一刻と変化する隕石の位置。
 爆風等によりそれらは常に変動する。
 それらをいちいち報告していたらログだけで埋まってしまうだろう。
 作戦開始前、リーダーは彼女に言った。

「誘い込むのに最適と思う場所に勝手に移動してくれ、それに俺たちが合わせる」

 秘策はケシャの動きに全員が合わせるというもの。彼女が合わせることが出来ないのなら、合わせられる側が動く。
 この時、シューニャ以外は彼女のモニターはサウンドオンリーだったが、モニターの向こう側で彼女は泣いていた。彼女曰く「怒鳴られ、蔑まれたことはあっても、必要にされたことは人生でただの一度も無かった」。その様子をシューニャだけが黙って見ていた。

 この作戦で彼女はその才能をいかんなく発揮する。

 画面が真っ白になるほどの巨大な連鎖爆発。にも関わらず一船のダメージもない。
 ケシャ一機で十数体と思われる宇宙人を次々に葬り去られる。
 この裏にはシューニャの活躍が欠かせない。
 諜報装備と過去の戦闘データが結果的に必須だったことは彼も後から気づいた。リーダーはそれも含めて見越したのである。それは紛れもなく賭けだったに違いない。そんな様子をお首にも出さず。
 状況はシューニャのパートナーであるビーナスを通し、シンクロした各機体のパートナーに瞬時に伝達され、安全予測位置情報にそって自動的に回避する。これまでの小隊経験のデータがフルに活きた。何せ機雷はマニュアル散布。高度なAIであるパートナーですら、これらの情報が無ければ予測不能だったろう。

「たーまやー!」
「かーぎやー!」
「最高だぜケシャ!」
 歓声で湧く。
「・・・」
「なんだこれ信じらんね!機雷で奴らをぶっ飛ばせるなんて。ロマン装備かと思ってたけど、これ使えるな。俺も今度やってみよ!」
「お前じゃ無理だ」
「なんだよリーダー」
「あれは彼女の才能だよ」
「それもそうか」

「凄いな・・・」

 沈黙が多い竜頭巾もこれには声を上げた。
「俺にはとても出来ない」
「ありがと・・・」
 ケシャがこの戦闘で初めて声を出す。

 シューニャも必死だった。

 一瞬でもケシャの動きを見誤ると、囮になった全機を巻き込みかねない。
 これまでの戦闘データは勿論として、実体験から来る感のようなモノを働かせる。
 ビーナスにはレベルゾーンしばりで出来るだけ感の指示を優先するよう伝えた。
 それほどまでにケシャの行動は突飛と言えた。
 それはビーナスの言動からも伺える。

「マスター・ケシャがどうしてああいう動きをするのか理解しかねます」

 彼女の様子をモニターで見ながら戦況を見ながらの指示。
 ある意味で彼とビーナスは最も忙しく働いた。
 それが出来たのも彼自身ここ一ヶ月は調子がいいことも幸いしている。
 以前のようだったら務まらなかっただろうと後で自己を振り返る。

 プリンもまた水を得た魚のように動き回る。

 リーダーは彼女が最も得意とする近接に偏重させ挑んだ。
 しかも彼女が主力を張るのではなく、低レベルのSTGに随行する形を取らせ護衛させる。それは功を奏する。

「ほら!そいや!ちょいさー!」

 彼女のミネソタはピンク色の機体にブレードを生やし、襲いかかる敵を次々に一刀両断。
 距離のある敵は特殊な牽引ビームであるチューイングバンを伸ばし粘着すると、一気に縮め、斬撃。まるで無重力を物ともせず八面六臂の活躍を示す。パートナーにソードと命名するだけのことはあったのだ。最も過去の戦闘データあってのことなのだろうが。

「普通なら確実に酔う」

 彼女はいままで一度も3D酔いや船酔い等、酔ったことが無いらしい。
 三半規管が発達しているのだろうか。
 思えば、酔わないまでも前後不覚になっても不思議じゃない状況なのに、彼女はそうして点でパニックに陥ったことは一度も無かった。

 一方で、ブラックナイトのエース”竜頭巾”は静かだった。

 まるで何か他のことを見ている。
 そういう雰囲気。
 彼と接触をしたことがこれまで無かったとは言え、シューニャも意外に思っている。
(イメージが違う)
 彼はプリンと異なり射撃を得意とすることは戦闘開始して直ぐにわかる。
 以前ビーナスが言っていたことは本当だった。
「ツインバルカンでも倒せますから」 
 彼は驚いたことに、装備はレベルゼロの状態。
 ツインバルカンで敵の真後ろから削り倒す。
 しかもプリンとは違った意味でアクロバティックに動いた。
 まるで敵が当てる気が無いかのように宇宙人の突撃は当たらない。
 その上で彼の攻撃は避けられないのだ。

 シューニャは感動する一方で自らの凡庸さに改めて気づかされた。

 自分だけが何の才能もない。
 下手の横好き。昔からゲームは好きでも上手では無かった。
 子供の頃から解っていたことだったが。

「シューニャごめん、今マークした敵をアルティメットミサイルでトドメさして」

 竜さんからだ。
「わかりました!・・・ロック、ファイヤー!」
 小さな光と共に無数のミサイルがロックされた標的に向かう。
 その様はまさに嘗てアニメで見たことのある光景と類似している。

(おっと、浸っていっる場合じゃない)

 命中と同時に目標は砕け散る。
 ビーナスはレーダーフォローにフル回転。
 こういう時はサポーターのフォロー無しに撃てる武器は役に立つ。
 当初の狙いとは少し違ったが。

 リーダーはシューニャにこれといった注文をつけなかった。
「皆をカバーして欲しい」
 それだけ。

「よっし、目処がたったな。もう一息だ!・・・ちょっと待った」

「どうした?」
「・・・戦闘終了。下がるぞ」
「なんだよ。もう少しだろ」
「いや、アメリカさんから、もういいってさ」
「クソ、なんだよアイツラ!こっからが美味しいところだろ!」
「シラきってやっちゃおうよ」
「駄目だ。全機警戒しつつ撤退!」
「それがいい。目的は果たした」
 逃げながら迎撃しつつ下がる。
 その横を猛烈な速度でアメリカ本拠点のSTGがすり抜ける。
 エース・パイロットとアタッカー達。

(あんの野郎ども、近すぎだろ!)

 彼らは自らの位置情報の提供を断っている。
 相手からは見えているから安全でも、こちらからは恐怖でしかない。
「シューニャさん」
「なんですリーダー?」
「アメリカさんソナーでマークして」
「え?」
「頼むわ」
「わかりました。アクティブ・ソナーでいいかな?」
「頼む」

 アクティブ・ソナーを発射。
 自前でSTGアメリカの位置を確認する。
 本来なら必要の無い行為。
 これは平常時であったら本来攻撃と見なされかねない行為。

 リーダーは誰かの秘匿通話に応じている。
 恐らくSTGアメリカだろう。

「リーダー大丈夫?継続しても」
「ああ、文句つけてきたけど、なら位置情報よこせって言い返した」
 その時、STGアメリカの外縁部で巨大な反応が映った。
(なんだこれは?)
 ビーナスに目線で合図を送ると、彼女は頷いた。
「シューニャ、ソナー停止。位置情報を送ってきた」
 部隊員からは文句が沸き上がった。
「今更かよ!なんだよ!」
「ひどーい!」
 無理もない話である。
 その位置情報には先程の巨大な反応は含まれていない。
(あれを隠したいのか?)
 彼らの横を通り過ぎるアメリのSTGはまるで挑発するようにアクロバット飛行を繰り返す。怒り心頭の部隊員にリーダーは「皆、真っ直ぐ飛んで、真っ直ぐね。ゆっくりと。下手に避けないで本当に危なそうなヤツだけシューニャはマークして、それをパートナーに避けさせろ」と言い、彼らに沈黙を要請する。

 数多くの危険飛行を受けるが我らはまるで、あの”ブラック・ナイト”のように悠然とゆっくりと宙域を下がり、彼らの収穫を横目に退いた。

 元の位置に戻った。
 すると、リーダーが笑い出した。

「あいつらほんと舐めてるよな~」
「どうした?」
「今メッセージが来たんだけど、『日本の友よ、協力に感謝する』だとよ、笑うだろ」
 だが、我らに笑いは無く、罵詈雑言が耳を満たす。
「笑えねーよ!なんだよそれ、フザケンナって言ってやれ!」
「いいんだよコレで。俺が逆の立場だったら”とんでもねー連中が残っていやがった”って思ったろうよ。これが今日の収穫だ。それよりシューニャさん、アメリカのSTGIがいやがったね」
「え?」「え!」「嘘!」「本当に!」
「だろシューニャ。さん」
(さん付けが苦手なんだな。無理に呼ばなくても)
「アレに気づきました?今話しても?」
「今話して」
「わかりました。アクティブ・ソナーにのみかかった巨大な影があります。可能性の段階ですが、STGアメリカのSTGIかもしれません。ビーナスの分析ではあの大きさのSTG28は建造出来ません。あくまで推測の域は出ませんが、あの距離だから彼らにとって敵では無いでしょう。位置情報は送られてきませんでした」
「あの慌てようからすると可能性は高いだろ。映像はあります?」
「ビーナス、どう?」
「うっすらなら・・・」

 ソナーから画像解析した映像が映る。

 全員が目にしたのは荒いモノクロの画像。
 大きな何かとしかわからない。
 ただし確実にそこにいる。
 平らなな何か。
 まるで超巨大なマンタのような。
「ステルス爆撃機みたいだな」
 部隊員の”ミリオタ”が言った。
(なるほど、言われて思った)
「それだ!ポイね。宇宙規模だけど」
「やっぱり日本のSTGIこそ至高よ!」
 さすがサイトウの信者、プリン。
「賛成」
「さんせ~」
「そだな」
「そうかね~」
 シューニャは暇さえあればSTGIに関する情報をずっと集めている。
 全てが噂の域を超えないが、各国によってサイズも形も性能もまるで違うらしい。
 STGIは嘗て様々な方法で記録を試みられたが、彼らは直接映像には残らないと言われている。それもあって都市伝説なのだ。光学的に映らないのかもしれない。
 噂と言えば、STGIは何らかの理由で搭乗することになった人間の意思でその形を変えるのではないかとも言われているようだ。
(もしも、あり得ないが、もしも、俺が搭乗することになったら、やっぱり巨大ロボットだろう。もしくは女体もいいな。いや、この歳で女体は無いか。シュール過ぎる。・・いや、待てよ。案外アリかな・・・イヤイヤ、無いな。恥ずかしいわ)
 実際問題、性欲の減退ぶりが酷い。
 どうにかしないと生命維持に関わる話しだ。
 若い頃は持て余す性欲に困ったものだが、遠い昔のようだ。
 だが利点もある。
 心が静かで落ち着く。

 日本の遊撃隊”ブラックナイト”は、このデビュー戦で世界に小さからぬ衝撃を与える。
+注意+
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