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STG/I 作者:ジュゲ
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第二十七話 STGアメリカ

「望みは何なの?」
 ジェラシーは俺の夢の中ですら俺を離さなくなってきた。
「貴方の肉体はどこ?」
 話を聞いていない点は地球人の女性と似ている。
 こういう場合の対応もやはり同じなのだろうか。
 無視されても腹を立てない、相手の質問には本心で軽く答える。
 このやり取り意味なんてない。単なるスキンシップ。それでいて大切。
 意味を求めるのはどの世界でも男だけなんだろうか。
 宇宙人はどうだろうか。
「自分でもわからない」
「私は貴方を食べたい。食べてしまいたい」
「言葉の暗喩じゃなく、そのままの意味だろうね」
「欲しい」
「食べて、どうする」
「一つになる」
「一つ?」
 同種を食べるのは地球にも幾つかいる。人間にも。
 強い相手を食べて、その強さを身につけるという信仰のようなもの。
 いざ、自分の身に降り掛かってみると、実にエゲツない。
「貴方は私、私は貴方」
 宇宙人でも色欲と食欲は似通っているのだろうか。
 原始的な欲求。
 ヤリまくりのアイツが言っていたな。
 最高潮に性欲が高まると相手を食べてしまいたくなるって。
 甘噛のつもりで本気噛みしてしまい、殴られたと笑っていた。
 そこから新たな性癖にも目覚めたと。
「断る」
「私を食べてもいい」
「やだね」
 彼女は嬉しそうに笑っている。
 笑いのセンスが地球人と違う。
 彼女にとってはこんなやり取りすら嬉しいのかもしれない。
 俺も初めて、小学五年生で好きな子が出来た時に毎日が楽しくて仕方がなかった。彼女がいるだけで、彼女を見ているだけで、話しているだけで、他の全てがどうでもいい感覚。

 サイトウは一人、問題と向かい合っていた。

*

「決裂した」
「ご苦労様でしたリーダー。予想通りって感じですかね。我々は手出しせず見てましょうか」
「参ったね~。アメリカさんも今までのテリトリーに加えカバー範囲が広いから大変じゃないのかね?」
「稼ぐだけ稼ぎたいんでしょう。過去の歴史にあるように、経緯はどうあれ一旦得たテリトリーは返した試しが無いですよ。余程のことが無い限り返すつもりはないでしょうね」
 先のブラックナイト騒動で日本には防衛テリトリーは無くなっていた。
「そうだな~・・・全く、なんで俺は・・・・クソぉ・・・悔やんでも悔やみきれない」
 ドラゴンヘッズの解体のことを示唆しているのだろう。
 彼にはそれが幸いしたことは伝えたのだが、それでも悔いは残るようだ。
「シューニャどう思う?」
 リーダーはぶっきらぼうに見えて、事を起こす時は必ず相談する。必ずしも相談通りには動かないが、それがいい。そういう人間は責任をとる。逆にこれで責任をとらないのならダメなら上司だ。
 自分の中でピンと来たものは何も言わず採用。付き合ってみないとわからないものだ。当初の印象とはかなり違う。もっと「俺について来い」派だと思っていた。その手のタイプは速度がとにかく速く、こういう事態には特に向いている。
「本拠点急襲の件や先のブラックナイト戦といい、焦っても意味は無いような気がします。最近思うのですが、この戦いというのは相当昔から続いていたんじゃないでしょうか?」
「どうだろうな~。少なくとも俺が来た時は既に始まっていたけど」
「マザーは言ってました。数の問題じゃないって。ブラックナイトは物量じゃ勝てない。もっと根本的な解決策が必要だと思います。恐らく隕石型宇宙人もそうでしょう。不測のブラックナイトを気にしていても無理なものは無理ですから、目下はマザーの言う通り、直接的な脅威である隕石型宇宙人の進行を止めることが先決かと。推測ですが、それこそ彼らは無限の如くいると思いますよ」
「嫌なこと言わないでよ~」
 プリンが馴染むかどうか正直不安もあったが、取り越し苦労だったようだ。
 私は彼女を笑みで返し、言葉を続けた。
「レベルを上げて戦いやすくしたいのは山々ですが、それよりもカードの切り間違いに気をつけるべきだと思いますね」
「シューニャってさ」
「はい?」
「いや、なんでも無い。・・・ぶっちゃけ、心強いわ」
「いやいや、多分、一番役に立ってない存在ですよ。STGのレベルもアレですし」
 俺のSTGホムスビはレベルゼロからかと思いきや、尾部を本拠点に帰還させたのが幸いして、大破、修理扱いとなった。修理なら完成まで動かせないが、レベル四から再開出来るのは大きい。今回は先の戦闘の功労とやらで無償で一機配布されたSTGに搭乗している。これも危うく連中に阻止されそうになった。
「違う」
 ケシャが喋った。この部隊では初めてじゃないか。
 相変わらずサウンドオンリーである。
 最早モノリスのようなサウンドオンリーが彼女のアバターにすら見える。
 ブラックナイトでの雄弁さが嘘だったように彼女は貝のごとく固く口を閉ざしていた。
「シューニャに私は助けられた。命の恩人」
「ほら、猫氏もそう言っているじゃん」
 リーダーはケシャのことを何故か猫氏と呼ぶ。
「彼女だけだよ」
「私も思ってるって!」
 今度はプリン。
 彼女が真顔を見せる。
 単なる照れ隠しなのだが。
「絶対恩返しする。今度は私が守る・・・守る」
 パートナーのソードに何か聞いたのだろうか。
「ふぅ~ハ~レムゥ~」
 ”おはぎちゃん”さん、煽るね~。
「そう言って貰えるだけ、ありがたいよ」
「大人ぁ~」
「・・・」
 エースパイロットの竜さんは黙っていた。
 何か別なことを考えているような雰囲気をいつも纏っている。
 我が心ここにあらず。
 何を考えているんだろう。
 リーダーにこの前聞いたら、「サイトウのこったろうよ。アイツはいつもサイトウ、サイトウだったから。アイツにサイトウをネタに冗談言わない方がいいから。ガチギレされる」苦笑いしていた。かなりリーダーも”サイトウ”の話題では穏やかになった印象。
(無口なんだな)
「よし、せいぜい連中の戦い方ってのを見学させてもらおう。シューニャの言うカードの切り方、俺もそう思うんだ。正直なところ俺らは四面楚歌と言っていい。宇宙人だけが敵じゃないのは承知の通り。内側の敵とのバランスを考える必要がある」

 内側の敵。部隊”猫いらず”を中心とした大日本なんたらかんたら。彼らは口封じの為に、最後の特攻時に賛同しなかったプレイヤーを徹底的に排除にかかっている。
 しかしそれらは我らに幸福をもたらした。部隊”ブラックナイト”は彼らの受け皿になり、更に大きな組織として変貌を遂げつつある。最も、彼らの方が人数は遥かに多いが。連中曰く俺らはテロリストらしい。

「ただ何にしても戦果がいる。現実の金と同じだ。くどいようだけど、これを聞いている主力メンバーは当面作戦にそって戦果を導入してくれ。一戦果たりとも無駄には出来ない。タイミングを間違えば下手すると同じ地球人から締め出される可能性がある。まずは稼ぐこと!」

 控え組は今も確実に報酬を得られるミッションで稼いでいる。
 焦って勝てる相手ではない。
 かといって悠長に構えている場合でもない。
 先だっての急襲やブラックナイトの件もある。これらはほとんど紙一重だったと言える。幸運が我らに味方したに過ぎない。焦らず、呑気に構えつつ、機会は逃さず。
 即時行動が要求されるだろう。これは会社の中でそうした経験がある自分には直ぐに理解出来るものだった。

 勝つためにはキーがいる。

”サイトウだ”

 どうにかしてサイトウの協力がいる。我々にとっても、日本にとっても、恐らく、地球にとっても。
 彼は依然としてログインしていないようだった。
 今後の戦略の為に、サイトウが味方になってくれる可能性、戦力としての可能性をリーダーが竜さんに率直に尋ねたが、彼は「必ず来る!」とだけ言った。その迫力は他言無用の迫力を伴っていた。リーダー曰く「この僅か一ヶ月に何があったんだ」と、まるで人が違ったようだと言う。
 もしサイトウがいなければ地球にとって永遠とも思える戦いになる可能性すらある。
 地球人は纏まらないだろう。
 それはハッキリしている。歴史どころか現実が証明している。

 そして”STGI”だ。

 勝手な推測だけどサイトウがダメでも他国の”STGI”がいる。
 どうにかして情報が欲しい。
 考えれば考えるほど焦りが募りだす。
「考えている時、人は何もしていない」
 先生の言葉が思い出された。
 とにかく動くしかない。

 現状は必ずしも思わしくはなかった。

 本拠点機能の無い日本にアラートへの参加権限は無く、本来受け持っていたエリアの戦闘はアメリカが任についている。グローバルアラートぐらいだろう。マザーを通しての宇宙人の見解は明朗で日本に返上することを提案していたようがアメリカ本拠点は拒否した。そうしたことは誰しもが確認できる。その点は現実よりマシだ。
 宇宙人はそれを受け入れる。
 交渉事となると彼は遥かに上手で「今の日本は本拠点として体をなしていない」というのが理由だった。実にもっともらしく、返す言葉もない。
 総意が得られない環境下では大した役割は出来ないようで、嘗て自分たちの担当だった宙域をマザーに掛け合って出られるようにしてもらったが、これもアメリカ側の許可があったからである。これは我々だけである。この意図にリーダーも気づいている。

”サイトウ”だ。

我々が他国のSTGIを知りたいように、彼らもまた”サイトウ”の情報が欲しい。カードの切り合いが待っていた。
 ”猫いらず”はどうしているかというと、日本の総意であることをマザーに認めてもらう為にロビー活動に力を入れている。票稼ぎと言えばいいか。実際その活動はかなり彼らにとって功を奏しているようだ。賛同者を確実に増やしている。他の部隊員は少なからず彼らのロビー活動を脅威に感じていたようだが、私は内部でのロビー活動は外部では役に立たないだろうと踏んでいた。
 日本内の同意をどんなに得ても、マザーや宇宙人が認めるのは”戦果”以上でも以下でも無い。彼らが一つの大きな組織になる前に、一ポイントでも戦果を稼ぐ。これが目下のミッション。組織が大きくなってからでは手遅れだ。
 一方で、最悪、他国への移籍も想定に入れいている。
 それは奥の手にしたかったが、居場所を失い、さりとてアカウントを削除する気にはなれない。アレを見てしまった今となっては。
 この辺は”おはぎちゃん”が全部情報収集してくれている。アバターは可愛い顔しているのに凄いものだ。普通はリアルを明かさないこのゲームにおいて彼女は真っ先に明かした。

「リアルは女だけど、ブスで~す」

 あれにはやられた。
 全員もっていかれる。
 彼女の明るさは部隊の華となっている気がする。
 かなりの事情通らしく、リーダー曰く、「歩く週刊誌」と言っていた。戦闘よりソッチのほうが長けているらしい。才能は色々である。情報は武器そのものなのでこれほど心強い人もいまい。
 エースパイロットに情報屋、そしてロビー格闘家にアタッカー、ディフェンサー、そしてリーダー。幸か不幸か、サポーターは俺だけである。正直焦りはある。サポーターは要だ。それでも贅沢は言えない。必要な人員がかくも綺麗に揃ったのだから。これが幸運でなくて何が幸運なのか。

「アメリカってゲームでも数で押すんだな」

 リーダーがポツリと言う。
「数は力ですからね・・・」
「だよなぁ、数は力だとつくづく思うよ」
「でも・・・」
 納得はしていたが、一言付け加えたかった。
 出来ないことを嘆いても仕方がない。
「質も力です。その点、最高のチームが出来たことに改めて皆に感謝したい」
「俺もだ!」
「私も!」
「俺も・・・」
 思い思いの声が聞こえる。
「少ないからこそ出来ることもありますから」
「例えば?」
 こういう時のリーダーは話を流さない。
 下手な答えをすると見限るタイプかもしれない。
 社会ではよくある。
 無礼講と称して、相手のレベルを吟味する。
 そこで出た答えは今後どうあれ覆られないだろう。
 私は取り繕うことの無意味さを思い知っている。
 生まれっぱなしの感性で向かわないと。
 どのみちメッキは剥げる。
 見限るなら見限ればいい。
(開き直らず、率直に、愚かでもいい)
「迅速な行動、統率された意思、個我の発揮」
 彼は笑いだした。
(マズったかな)
 皆が訝しげにリーダーを見る。
「ごめんなさい。俺は嬉しいとつい笑っちゃう悪いクセがある。申し訳ない。リアルで会いたいわシューニャさん」
 ”さん”づけ?
 年上と見たか?ま、十中八九 年上なのだが。
 何か応えようとした瞬間にケシャに遮られた。

「豚だよ」

 全員がキョトンとする。
 そして爆笑の渦。
 無理もないが、口は軽いな。
「ケシャぁ・・・内緒だよ~」
「あ・・・だって・・・」
 彼女は慌てた。
「ちょっとーどういうことぉ!」
 やっぱり。
 プリンが食ってかかる。

「でも!・・・飛べる豚だよ」

「なんだよソレ!」
 腹を抱えて笑っているリーダー。
 アニメ系のネタは通じないか。
「嘘だ。汚い豚って言ってた」
「ケシャ~?!」
 いかん声が裏返った。
 全く。
 でも良かった。こんなことなら喜んで晒されよう。
 笑いに包まれる。
 この期で笑っていないのは、竜さんだけなのを俺は気づいた。
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