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「湖畔の殺人」後日譚
 私神村律子は、群馬県の榛名湖畔で起こった連続殺人事件に遭遇した。

 私の大親友となった中津法子の名推理で無事事件は解決し、法子は一躍警察関係者の間で有名人になった。

 私はその事が自分の事のように誇らしく、周囲の人々に吹聴して回った。

 とにかく得意だったのだ。自分の親友が、殺人事件を解決したのだから。

 彼女は控え目な性格なので、決して驕らないし、偉そうではない。

 そこがまた彼女の魅力なのだ。

 法子のファンクラブは日に日に会員を増やし、今や他の大学にまで広がっている。

 美人で、頭が良くて、その上性格も良いとなれば、もうこれ以上望む事はないだろう。

 少し分けて欲しいくらいだ。

 私はどうしようもなく浮かれていた。

 法子の気持ちなど全く考えもせずに。



 そんなある日。

 法子から携帯にメールが入った。

「何だろ?」

 普段はあまりメールをしない法子だったので、私は不思議に思ってすぐに開封した。

 すると恐ろしい事にタイトルは「絶交します」だった。

「ヒィィィッ!」

 私は震える指先で本文をスクロールさせた。

「律子へ。私が事件の事をおおやけにしたくないのを知っているはずなのに、貴女は誰彼構わずに話して回りました。非常に困惑しています。貴女のようなおしゃべりな人とは今後お付き合いできそうにありません。このメールを最後に、絶交とさせて頂きます」

 私は涙も出ないくらいショックだった。

 どうしよう?

 でももう取り返しがつかない。

 全部私が悪いのだから、何も言えない。

 推理小説同好会の誰かに相談しようと思ったが、多分誰も私に同情してくれないだろう。

 法子の存在は、それくらい会にとって大きいものなのだから。



 ああ。

 それでも私は、何とか言い訳をしたくて、大学に行くと、法子を探した。

 同じ英語クラスの子に尋ねたが、法子を見かけた人がいない。

 途方に暮れて、学部棟のロビーの長椅子に座った。

「はァ……」

 溜息ばかりが出る。

 何てバカなんだろう、私は。

 あんな事をして、法子が喜ぶ訳がないのに。

 そんな事もわからないなんて、何が親友だ。

 友達の資格すらないよ。

 項垂れた。誰かに顔を見られるのが嫌だった。

 その時だった。

「反省した、律子?」

 法子の声。

 遂に幻聴が聞こえるようになったのか?

 ふと顔を上げる。

 するとそこには、幻覚でも何でもなく、法子が立っていた。

「法子……」

 私はもう顔をグチャグチャにして泣いていた。

「泣かないでよ、律子。ちょっと脅かし過ぎたかしら?」

「へっ?」

 私はキョトンとして泣くのをやめた。

「絶交はウソよ。貴女にしっかりと反省して欲しかったから」

「ええっ?」

 法子はニッコリして、

「ごめんね、こんな事して。はい」

と綺麗にラッピングされた箱を手渡した。

「えっ? 何これ?」

「お誕生日おめでとう、律子」

 法子は更にレベルアップした微笑みで言った。

「お誕生日ドッキリなの。だから、法学部の皆にも手伝ってもらって、私を見ていないって言ってもらったのよ」

「……」

 何が起こっているのか理解するのに時間がかかりそうだ。

「あ、ありがとう、法子。う、嬉しい……」

 また洪水のように涙が溢れる。

「これに懲りて、お喋りも程々にね」

「うん」

「私のファンクラブなんて存在しないのだから、いろいろ尾ひれを付けて話すのやめてね」

「うん。でも、ファンクラブはホントにあるんだってば……」

「それ以上言うとホントに絶交よ」

「わわ、もう言わない」

 私はようやく笑えた。

 法子、本当にごめんなさい。

 お喋りは慎みます。



 多分……。

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