第93話 王都での会話。(かなりの妥協案を提示される。レイラの旅の行程予定。)
「はぁ・・・
では、文官代表として陛下に上奏申し上げます。
我々、全文官が仕事を溜められるのは10日が限度です。
なので、10日間の休暇は認めましょう。」
「なに!?認めてくれるのか!?」
「今の陛下は使い物になりませんので、旅にでも何でも行ってきてください。
もちろん最低でも王都守備隊はお連れしてね。
まったく、武官の方々に迷惑をかけて・・・」
「ぐぬぬ・・・なんて物言いを。」
「何か言いましたか?休暇を取りやめますよ?」
「!・・・何も言っておらぬ!」
「しかし、10日空けられてしまうので、至急性のある陛下承認書類を裁可して貰わないといけません。
なので、今日から2日ほぼ完徹で仕事をしてもらいます。」
「え?」
アズパール王は固まる。
そんな王を無視して文官は続ける。
「また、陛下がエルヴィス伯爵の所に泊まりに行って、伯爵やアリス嬢、それにアリス嬢の婚約者に無理難題を吹っ掛けないとも限りません。
なので、今回の旅の全権をレイラ殿下にお与えします。」
「あら?私で良いの?」
「はい、結構です。
例えアリス嬢の婚約を破棄すると陛下が言っても、レイラ殿下が認めると言えば、陛下が何と言おうと我々文官は認めます。
それにレイラ殿下であれば妹君の婚約を破棄する真似はしないと考えます。」
「わかりました、私がこの旅の全権を担います。」
「よろしくお願いいたします。
では陛下、いきましょうか。」
と全文官が立ちアズパール王を連行していく。
アズパール王は何も言わずにトボトボと文官達の後に付いていった。
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広間には武官とウィリアムとレイラが残っている。
「さて、父上は仕事に復帰されたね。」
「そうですね。お義父さまも頑張らないといけませんね。」
と夫婦揃って出て行った扉を見ている。
「はぁ・・・
レイラ殿下、どうするのですか?」
第2騎士団長がため息交じりに聞いてくる。
「何がです?」
「休暇は先ほど10日と決まりましたが、エルヴィス伯爵邸まで馬車で9日程度かかるはずです。
どうやって往復10日以内にするのですか?」
「そうですね・・・王都守備隊総長、2年前のことは覚えていますか?」
「は?・・・いえ、うちの分隊長達が楽しんでいるのしか覚えておりません。」
「そうですか・・・私はエルヴィス伯爵邸まで4日で帰りました。」
「「「え?」」」
「何をなさったのですか?」
「昼夜問わず走っただけですが?」
「・・・まさか・・・」
「ええ、今回も同じ手でいきましょう。往復8日向こうに2日居られますね。」
とレイラは笑う。
ウィリアムは「ヤレヤレ」と苦笑する。
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その日のうちに第1騎士団と第2騎士団の半数と王都守備隊の全隊員ではないが多くの隊員が王都を出立した。
第1及び第2騎士団はエルヴィス伯爵邸までの街道の全周囲1kmの掃除と駆除に。
・・・1か月後、近くの住民から王都に「急に獣がいなくなったのだが、どうしてでしょう?天変地異の前触れですか!?」と相談に来られ担当は苦笑いしかできなかった・・・
王都守備隊は、各村に滞在し、レイラ一行の護衛の交代要員として、また馬車の交代用の馬を用立てる為に先行した。
広間から退出したレイラは手紙をエルヴィス伯爵宛に緊急伝文で送った。
内容はと言うと。
「今回の指輪の件にて、第3皇子妃である私とお義父さまと旦那様でそちらに向かいます。
出発はこの手紙が王都を出てから2日後、到着は、この手紙が王都を出てから6日後です。
アリスとその婚約者には、私達の事は内密で。」
手紙を送ってからウィリアムと一緒に祝いの品を物色しに街に出かけて行った。
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