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第89話 王都での会話。(指輪の付与効果と妃連合。)

アズパール王が退出して部屋には4人が残った。

「どうして16年前の物とわかったのですか?」

レイラは疑問を口にする。

「レイラ様、実はこの魔法は誰がかけたのかわかるのです。」

「そうなのですか?」

「はい。口伝伝承ですので、どうしてもかけるのに個人の癖が出てしまいます。

 歴代の王家専属魔術師がかけた『威光』は必ず最低1個は保管されていて、新たに王家専属魔術師になった者は、まず初めにその歴代の物をすべて見て自分の『威光』を確立させます。」

「そういう物なのですね。」

「それに歴代の王家専属魔術師は威光と一緒に違う効果も混ぜる者が多いのです。」

「ほぉ、どんな物を含ませたのか?」

ウィリアムは興味深そうに聞く。

「そうですね・・・戦争が続く時代なら声を大きくするとか、治政の時代なら相手の心を静めるといったものです。

 でも所詮、指輪ですので、そこまで大規模な効果はありません。

 交渉事に使えるぐらいですね。」

「なるほど。ちなみに、この指輪には何か付加されているのか?」

「されております。付属効果は『清聴』ですね。

 相手の感情が激しい時でも聞いてもらえるように相手の心を穏やかにさせる効果があります。」

「へー、面白い効果ね。」

「ちなみに王家専属魔術師殿、お主は作ったことがあるか?」

「はい、ございます。

 レイラ様用のを作らせていただきました。」

「私のですか?指輪を貰ったことはないのですが?」

「婚礼の指輪ですよ。」

「ああ。」

とレイラは左手薬指を見る。

「これには何か付与したのですか?」

「はい。『温和』という魔法をかけさせていただきました。

 聞く相手が朗らかな気持ちになる様にと願って。」

「ふふ。それは、また。」

レイラは朗らかに笑う。

「レイラにぴったりだな。」

「ええ、良い物を作られましたね。」

「そのお言葉、何よりの褒美でございます。」

と王家専属魔術師は頭を下げた。


------------------------

アズパール王が部屋に戻って来る。

「待たせたな・・・ん?レイラが嬉しそうにしておるな?」

「はい、お義父さま。

 この者が私の『威光』の指輪を作ったと聞きましたので。」

「なんだ、そこまで話したのか。

 でも面白いだろ?」

「はい、私にぴったりな効果を入れて貰えた様で。」

「『温和』を入れると聞いた時は即決で了承したぐらいだからな。

 とても良い効果だと思ったぞ。」

「陛下、ありがとうございます。」


「さて・・・っと。爺、ちなみに、この指輪には何の付与がされておる?」

「『清聴』でございますね。」

「なるほど、たしかに16年前の物だな・・・」

とアズパール王は持ってきた冊子を見ながら確認する。

「お義父さま、わかるのですか?」

「歴代の付与された物とその効果は我の部屋に書き留められているのだ。」

「そうなのですか。」

「・・・でも・・・あれ?」

「どうしました、父上?」

「・・・納期を一旦書き換えているな・・・なんでだったか・・・」

「この指輪はどういった目的で3つ作ったのですか?」

レイラが聞く。

「ん?1つはウィリアムが成人するお祝いで作ったのだよ。

 あと2つは第1皇子の婚礼用だな。」

「・・・兄上の奥方用に2個ですか?」

ウィリアムが疑問を言う。

「ウィリアム、あのアホ息子はな。

 正室と側室を同時に娶ったのだ。」

「・・・は?」

「だんだん、思い出してきたぞ。

 第1皇子とその正室、側室の3人は実は幼馴染でな。

 子供の頃から一緒だったのだが、第1皇子は一人には決められなかったのだ。

 で、3人で一緒になろうと誓い合ってな。

 建前上、正室・側室としたが、あそこは2人の正室が家を守っておる。」

「そうなのですか。」

レイラは少し驚いた風に聞き返す。

「うちの息子たちの奥方は仲が良いのだ。

 皇子間でのイザコザもないし、皇子の奥方連中も楽しそうに行き来しているな。

 これはとても良い事で嬉しく思っている。」

「ええ、どの妃様も良くしてくれています。」

レイラは言う。

「うむ。これの前例というか礎を作ったのは、実は第1皇子の妃達だ。

 『皇子の嫁は皆家族!』と言いだしてな。

 レイラも経験したろう?

 婚礼の式の後・・・」

「ええ、3日3晩妃のみで宴をしました。」

レイラは苦笑する、

「うむ。あれは皇子間のイザコザを妃間で・・・裏で調整させようという意図があってな。」

「ええ、徹底的に自身の考えや皆の考えを討論させましたね。」

「そんなことをしていたのかい?」

「あれは凄いわよ、ウィリアム。

 全妃が集まって、自分の皇子の問題点と他の皇子の問題点。

 皇子同士で何かあった際の妃同士の協力体制の確認。

 王家の継承問題の確認と政治的な事も含めて皆で話し合います。」

「僕も含め兄弟で何もないのにかい?」

「歴史を見ると妃が望んで陰謀が生まれることが多いのですって。

 なので、

『我々、皇子妃がしっかりしていれば、国内は安定する!

 安定すれば子供が増えて、ますますこの国は繁栄する!!』

 と皆で認識を統一するのよ。」

「なんだか・・・うちの妃達は優秀過ぎるな。」

アズパール王は苦笑する。

「それに来週末まで第1皇子邸で正室会議がされているはずですが?」

「ん?そう言えば、楽しそうに『いってきまーす』と言っていたな。」

ウィリアムは頷きながら言う。

「お姉様は、あの討論を楽しみにしていますからね。」

レイラは朗らかに笑うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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