第88話 王都での会話。(レイラに手紙が着いた。・・・陛下に聞きに行くか。)
時間的には少しさかのぼる・・・
王城の一室で昼食後の一時をレイラは楽しんでいた。
先ほど、実家のエルヴィス家から至急の伝令が来て、手紙と小箱を置いていったのだが。
手紙を読み終わりニヤニヤしていた。
「おや?レイラ、楽しそうだね。」
「ウィリアム、わかります?」
「ああ。ニヤニヤして・・・何か良い事があったのかい?」
「さっき実家から緊急に手紙と小箱が届いたので、とりあえず手紙を読んでいたのですが・・・ふふ。」
「まったく僕の奥さんは一人で楽しそうに・・・君の旦那にも楽しませてくれるかい?」
「あ、ごめんなさい。私の妹の事なんですけどね。」
「レイラの妹・・・『鮮紅』のアリスだね。」
「ええ、アリスが求婚されて受けたそうなの。」
「おお、それは目出度いね。何か祝いの品を送らないといけないな。」
「そうですね。何が良いかしら?
あ、でも続きがあって求婚されたのは貴族ではないみたいですわ。」
「ふむ・・・貴族ではない・・・か。
あのエルヴィス伯爵が認めているなら相当、優秀なのだろうね。」
「ええ、お爺さまも求婚を認めていますね。
私的には、相手が貴族だろうが平民だろうが、アリスが幸せならそれで良いのですけど。」
「そうだね。当人達が幸せなのが一番だね。」
「で、求婚の馴初めが面白いのですわ。」
「ほぉ。」
「二人で雑貨屋に行った時に指輪を見つけて試しにと薬指に付けたそうなの。」
レイラはクスクス笑う。
「ん?ということは?」
「二人とも遊び感覚で付けて・・・すぐに取るつもりだったのでしょうね。
でもその指輪が取れなくなったそうですよ。」
「何とも変な指輪だね。」
「ええ。指輪は3つあったらしく、2つは付けてしまったので、困って3つ目を良く見たら王家の紋章が入っていたそうで。」
「王家の?」
「ええ。で、私にこの指輪は何ですか?って調査依頼が来たというわけです。」
「んー・・・『鮮紅』のアリスは良いとして・・・その相手は問題だね。」
「ええ。アリスだけなら何とかして・・・ウィリアムを陛下に売ってでも何とかするのですが。」
「・・・レイラ、本人の前でそういうことは言わないでね?・・・怖いから。」
「どうしましょうかね・・・相手の指がなくなればアリスも・・・とするでしょうし・・・」
「そうだね・・・とりあえず、父上に話してみるかい?」
「そうですね、それしかないですよね。
この指輪が何なのかもお義父様に聞けばわかりそうですしね。」
二人はアズパール王が居る部屋に向かうのだった。
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ドアをウィリアムはノックする。
中から「構わぬぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
中にはアズパール王と第一近衛分隊長が二人してお茶をしていた。
「失礼します。」
と中に入る。
「父上、突然来て申し訳ありません。」
「ウィリアムか。ん?レイラも一緒か?どうした?・・・まさか!」
「お義父さま・・・違います。」
「そうか・・・残念だ・・・」
アズパール王はガッカリとして見せる。
「で?どうしたのだ?」
「はい。レイラ宛にエルヴィス家から手紙と小箱が届いたので、相談に来ました。」
「ん?手紙に小箱?・・・わかった話を聞こう。」
「はい、お義父さま。実はさきほど・・・」
レイラはさっきウィリアムに話した内容を話すのだった。
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「んー・・・指輪に王家の紋章が・・・」
「はい。お義父さまは誰かに下賜されましたか?」
「いや、在任してから1回もないな・・・勲章はあるがな。」
「でも、この紋章は明らかに王都の人間が作っていますよね?」
レイラが器用に指輪を持ち、アズパール王とウィリアム、第一近衛分隊長は見て確かめる。
「うむ。ここまで精細なのを作るのは王都の人間だけだろうな。」
とアズパール王は頷く。
「・・・とりあえず・・・なんで取れないか確認が必要ですね。」
ウィリアムがそう言い。
「その通りだな。・・・爺を呼ぶか。」
とアズパール王は伝令を走らせる。
王城内にいた様で、すぐに人が訪ねてきた。
部屋のドアをノックしてアズパール王が入室の許可を出すと一人の老人が入ってくる。
「失礼します。陛下、お呼びと伺いましたが?」
「爺、急がせてすまんな。指輪を見てほしいのだ。」
「畏まりました。」
と老人は皆が集まっている机に近づき、指輪を手にしいろいろと見始めたが、すぐ顔色が青ざめていく・・・
「・・・爺、どうした?」
「陛下・・・これは・・・どういった経緯でここに?」
「ん?エルヴィス家から照会の依頼で来たのだが?」
「・・・陛下・・・これは・・・その・・・」
とレイラと第一近衛分隊長に目をやる。
「・・・構わぬ。この2人は平気だ。」
「はい。では・・・この指輪には『威光』がかけられています。」
「は?・・・『威光』とは・・・あの『威光』か?」
「・・・はい。」
アズパール王と王家専属魔法師は、二人して難しい顔をする。
「お義父さま。なんです?『威光』とは?」
「ん・・・まぁ良い機会だ。
これは王家の者以外には言ってはならぬぞ?」
「わかりました。」
「『威光』とは、簡単に言えば威圧感を出す魔法だ。」
「威圧感?威圧ではなくて?」
「違うな。威圧は相手を押さえつけることをいうが、
この指輪は、ただそこにいるだけで相手にプレッシャーを与えることができる。
存在感があるとか、その場にいるだけで安心するとかだな。
それが『威光』だ。
この魔法は王家専属魔術師のみ口伝にて相伝される物で一般には知られていないのだ。」
「??なんでそんな物がエルヴィス領から出てくるので?」
レイラはアズパール王に聞く。
「わからん。わからんが・・・爺この指輪はいつぐらいの物かわかるか?」
「・・・そうですね・・・15・・いや16、7年前くらいでしょうか?」
「16、7年・・・か・・・ふむ。
すまんが、一旦部屋に戻ってからまたくる。しばし待っておれ。」
とアズパール王は部屋を出ていくのだった。
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