第85話 コートの受け取りとトレンチコートの納品について。
仕立て屋に武雄は入っていった。
「キタミザト様、いらっしゃいませ。」
店長は挨拶をしてくる。
「お邪魔します。」
と武雄は返事をする。
「スーツとコートは出来上がりましたか?」
「はい、準備できております。奥にお越しください。」
と奥へ通される。
他の店員がスーツ3着とコート2着を持ってきていた。
「まず、スーツから着ます。」
と武雄は今のスーツを脱ぎ、仕立てられた物を着る。
ポケットの内側等々を確認していく。
「・・・問題は・・・なさそうですね。」
「わかりました。」
その後2着とも着て問題が無い事を確認した。
そして着てきたスーツに着替える。
「では、次はトレンチコートになります。」
と店長に言われ、武雄はコートを着る。
武雄はボタンを全部付けたり、外したり。
ベルトを腰に巻いたり後ろで縛ったりした。
「・・・」
武雄は無言でコートを脱ぎ、ハンガーにかけ。
今度は遠くから眺めたり、近くで見たり、表も裏も前も後ろも同じようにして見る。
また肩口の縫われている箇所を引っ張ってみたり、コート全体を斜めに引っ張りもしたが、どこも縫い目が解けたり、破けたりはしなかった。
また、コップを二つ用意してもらい片方に水を少し入れ、布地を挟み込むようにしてもう片方でフタをし、逆さまにして水がすぐに漏れないかも見てみた。
・・・そんな普通じゃない方法でいろいろ試してから。
「良いでしょう。」
武雄がそう言うと。その場にいた皆がホッとするのがわかった。
「では、スーツ3着とコート2着の清算をお願いします。」
「わかりました。少しお待ちください。」
と店員が一端退出して行くとすぐに戻ってきた。
「スーツの残り残金:金3枚、銀2枚とコート2着で金10枚の合計:金13枚、銀2枚になります。」
武雄は言われた枚数を支払う。
店長は、枚数を確認し。
「確かに頂きました。この度は、ありがとうございました。」
と頭を下げる。
「いえ、こちらこそ無理を言いました。
申し訳ありませんが、この5着を帰るまでに袋か何かに入れてください。」
「わかりました。」
「では、トレンチコートの契約の話をしましょう。」
武雄は、そう言うと店長と奥にあった机と椅子に座る。
他の店員が契約書の最終案を持ってくる。
武雄はその中身を軽く読む。
「では、まず私と仕立て屋さんとの契約の確認をさせてください。」
「はい。」
「「トレンチコート(全天候型の兵士用コート)」の契約内容は
・トレンチコートの販売権、デザイン権は仕立て屋が有すること。
・仕立て屋の本社及び仕立て工場はこの街に置くこと。
・タケオ・キタミザトへのデザイン料は1着あたりの売値の2割とすること。
また、タケオ・キタミザトが死去等した場合は、エルヴィス家にデザイン料を納付すること。
・市販用とエルヴィス家の者と仕立て屋の店長の双方が許可した者しか着れない専用の2種類の品質を基本の型とすること。
以上です。
デザイン料についてはエルヴィス家を追加しました。
が、他にありますか?」
武雄は店長に聞く。
「ありません。そちらで結構です。
ちなみにS・M・L・LLのサイズを4種類にすることについての契約はしないのですか?」
「する必要はないでしょう。
4種類は販売方法でしかありません。
販売していく際に不都合が生じれば、サイズを6種類にしても良いですし、3種類にしても構いません。
ただし、ほぼすべての兵士へ対応できることが望ましいです。」
「わかりました。」
「では、次にエルヴィス家からの発注についての話をしましょう。」
「はい。」
「発注予定数は総数900着をお願いします。
販売価格はいくらになりますか?」
「1着:金2枚と銀5枚になります。」
「わかりました、それで構いません。」
「エルヴィス家より1着当たりの補助金は銀5枚になります。
補助金の支払いは3年分割にて、エルヴィス家よりお支払いします。」
「わかりました。」
「トレンチコートの話は兵士の幹部には伝えてあります。
その際に兵士より、金2枚の分割払いをお願いされていますが、仕立て屋としてはどうお考えでしょう?」
「ちなみにその分割回数は何回になるでしょうか。」
「1回、4回、8回から選べるようにしたいです。」
「・・・仕立て屋としてはそれは飲めません。
補助金については、身元がしっかりしているエルヴィス家ですから分割を了承しましたが、
一兵士となると信用が足りません。
ですので、金2枚は一括払いでお願いします。」
「なるほど。そう言われてしまうとそうですね。
・・・ちなみに一兵士でも可能な分割回数はいくつでしょう。」
「・・・2回でしょうか。」
「わかりました。支払方法については、屋敷に戻って確認をします。」
「はい。」
「トレンチコートの月々の納品可能数をお教えください。」
「我々は、月45着を納入できます。」
・・・武雄は驚いた。
最初からその数の生産をするとは・・・
「・・・そうですか。それで構いません。」
「はい。」
「では、一旦屋敷に戻って支払い方法を聞いてきます。」
と武雄は席を立つ。
「また、あとできます。」
と店を出て行った。
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