第79話 エルヴィス家に帰宅。今日は災難と言われた・・・災難?
武雄はエルヴィス邸に到着した。
玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、タケオ様。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。
エルヴィスさんは、どこにいますか?」
「主もアリスお嬢様も客間にて、タケオ様の帰りをお待ちです。」
「わかりました。
私は一旦、部屋に荷物を置いてから客間に向かいます。」
「畏まりました。」
と武雄は自室に戻っていった。
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客間のドアを武雄はノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
中にはエルヴィス爺さんとアリス、スミス、フレデリックがいた。
「失礼します。」
と中に入る。
「エルヴィスさん、戻りました。」
「タケオおかえり。」
「アリスお嬢様、スミス坊ちゃん、戻りました。」
「はい、おかえりなさいませ。」
「おかえりなさい。」
と武雄も席に着く。
「しかし、武雄は今日は災難だったの。」
「ん?どれが災難ですか?」
「いや・・・アリスの件が・・・」
「お爺さま!!」
アリスは顔を赤くして抗議する。
「?・・・別に災難ではなかったですが?」
「ん?そうなのかの?」
「ええ。これと言って・・・」
武雄は、しばし考えるが災難という物はなかった気がする。
「小銃の仕様も決めましたし、兵士の小隊長達とも歓談しましたし。
私が使える魔法でも、ある程度身が守れるのも分かりましたし。
アリスお嬢様がカッコいいのも確認しましたね。」
「タケオ様。」
アリスは少し照れている様だった。
「むしろ災難は私ではなくて、ハロルドと兵士達でしょうね。」
武雄は苦笑する。
「ん?そうなのかの?」
「ええ。客観的にみて、新兵達は精神的にやられたのではないですか?
私はアリスお嬢様側にいましたから敵意は向けられていませんので断定できませんが、あの威圧を受けながら吹っ飛ばされるのですから・・・」
「タケオ様!?」
「誇張ではなく事実・・・吹っ飛んでいましたよ?」
「そうですけど・・・」
アリスは更にジト目で抗議してくる。
「そんなに・・かの?」
エルヴィス爺さんはちょっと震えながら聞いてくる。
スミスもコクコクと頷く。
「・・・スミス坊ちゃんも経験してみます?
あれは経験するとたぶん屈強な精神力が付くと思いますが?」
「今は・・・結構です。」
「そうですか?
まぁ今回の一番の収穫は新兵に死の淵を覗かせたことでしょうね?」
「タケオ様・・・死の淵は言い過ぎです。
倒された数が多い程度でしょう?」
アリスは再度、抗議してくる。
「・・・そうでしょうか?
確かにアリスお嬢様的には来た敵を薙ぎ払っただけなのでその認識で良いのですが。
私と兵士長がしたことが兵士たちに追い打ちをかけましたね。」
「なにをしたのじゃ?」
「片っ端から回復させて戦線に復帰させました。」
武雄はしれっという。
「ん?・・・んん?・・・ちなみに兵士数はいくつで対応したのじゃ?」
「えーっと・・・150名くらいですか?
たぶん救護班が回復させまくりましたので、皆4、5回は吹っ飛ばされているはずです。」
「・・・それでどうなのじゃ?」
「・・・自分自身で最大の防御をとっても倒されてすぐに回復させられて、また倒されて・・・
こんな絶望的な訓練ないでしょう。楽にさせてくれと思うくらいには精神的に追い詰めたはずですが。」
武雄は苦笑する。
「今年の新兵は合同訓練までに結構な数が辞めそうだの。」
「そうでしょうか?」
「なぜじゃ?精神的に追い詰めたのじゃろ?」
「ええ。でも、見方を変えれば、これは所詮訓練です。
戦争となり、アリスお嬢様が出張ったらその時は味方ですよ?
これほど負けなさそうな戦はないでしょう?
辞める理由はないと思いますが?」
「そういう物かのぉ?」
「さぁ?私はわかりませんが・・・まぁいなくなったらいなくなったでしょうね。」
「簡単に言うのぉ。」
「残った兵士は精神的に強いのでしょうから、結果的に良いのでは?」
「うむ・・・まぁ今はそう思うかの?」
と客間に他の執事がきて、夕飯の支度が整ったと知らせてきた。
「皆さま、夕飯の用意ができました。」
皆は席を立って食堂に向かったのだった。
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食堂に向かう最中。
武雄はアリスにコッソリ耳打ちする。
「あの、アリスお嬢様?」
「なんです?」
「私の部屋に入るのは結構なのですが、痕跡を残し過ぎです。」
「?そうですか?」
「・・・ベッドが・・・」
その言葉にアリスは顔を真っ赤にする。
「いえ!それは・・・その・・・」
「あぁ、別に責めていませんよ。むしろ嬉しいのでいくらでもして良いのですが。
・・・部屋に入るとびっくりするので次からは、楽しんだ後は気持ち程度で良いので直してください。」
「うぅ・・・わかりました。」
「ん?アリス、タケオ、どうしたのじゃ?」
アリスがビクッとする。
「いえ?今日は楽しかったと言っていたのですよ。
皆の前で抱擁までしちゃいましたから。」
「ほぉ、やるのぉ。」
「タ・・・タケオ様!?」
「ん?」
「それは言う必要はないかと!」
「・・・まぁ良いではないですか。」
ははは。と言いながら皆で食堂に向かうのだった。
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