第77話 戦いの行方。・・・アリスお嬢様の乱入。
城門の上に男二人は陣取り武雄の奮戦を見ている。
「これほどとは思っていませんでした。なかなかやりますね。」
「ええ。私は、あの方に軍隊に所属する魔法師にはなれないと言ってしまいました。」
はは、と苦笑いをする。
一人は仕立て屋の店長:トーラス・ラルフ。
もう一人は魔法具商店の店長:スミソン・テイラー。
二人はメイン通りでトレンチコートと襟章について話していた時、武雄と各小隊長が城門外に行くのを目にし、
「何か面白い事が?」とここに陣取り観戦していた。
「それにしても酒とツマミを忘れましたね。」
ラルフ店長はぼやく。
「ええ。シラフで見るにはもったいないですね。」
とテイラーも言いながら、なんとなく城門の上からメインストリートを見るとまだ遠くであるが騎士2名が向かってくるのを確認する。
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武雄は兵士5名と対峙している。
・・・上限の5名・・・
5名は離れ過ぎず、近づきすぎずの絶妙な間隔で武雄にじりじりと近づいてくる。
流石は同じ小隊の仲間か・・・これは負けるか?・・・
「ファイア×15 4本の指先からガトリング 発動」
武雄は左手をかざし、中央の一人とその右隣に向け浴びせる。
撃ち終わる少し前に最右翼にいる兵士に向け
「ブリザド×1、エクス×1 発動」とけん制の意味で打ち込むと同時に最左翼に向けダッシュ。
こっちに来るとは思わなかったのであろう。最左翼の兵士が剣を振りかぶる。
武雄は左手に「シールド×10」を作り剣を受け止める。
右手のナイフを持つ手に「エクス×5」と考え小隊長の腹を殴ると同時に発動。
「ボフッ」という音と「ぐふっ」という声と共に崩れ落ちる。
すぐ右にいる兵士が刺突してくる。
武雄は後方に転がる勢いでおもいっきり退避し少し離れて様子を伺う。
頬にかすったみたいで軽く血がでている。
と武雄と兵士の間に一人乱入する。
深紅のフルプレートの騎士が一人・・・木剣を片手にたたずむ。
頭部には兜があり誰だかわからない。
「タケオ様、ご無事で?」
その騎士は顔を武雄に向けずに聞いてくる。
「・・・え?・・・アリスお嬢様???」
武雄は聞き覚えのある声に驚く。
「はい。
・・・この者達ですか・・・あとはお任せを。」
とアリスは兵士に向かって歩き出す。
「ちょ・・・ちょっとアリスお嬢様??」
「おい、タケオ。お嬢様は今は何も聞こえないぞ?」
と、いつの間にか武雄の隣に騎士団長のハロルドが来ていた。
「ロ・・・ロイド騎士団長も?」
「・・・ハロルドだ。」
「わかりました・・・ハロルドとアリスお嬢様はどうしてここへ?」
「アリスお嬢様が騎士団詰め所にカチコミに来てな。
で、お供だ。」
・・・武雄は、なんとなくわかってしまう。
・・・どうやって・・・って忘れたメモしかないか・・・
「・・・被害は?」
「騎士団詰め所の玄関の扉と騎士団長部屋の扉・・・」
「私の給料からの分割払いで何とかしてくれ・・・」
と武雄は頭を押さえる。
「と、これからの人的被害。」
武雄はアリスを見る・・・あぁ・・・何?この迫力??
「このアリスお嬢様を見るのは2年ぶりです。」
と後ろに控えていた兵士長が言う。
「・・・魔眼の力か・・・」
ハロルドはそうつぶやく。
と。
「私の!タケオ様に!なにするの!!!」
アリスは剣を振り上げ大地へ向かって打ち込む。
ドガンッ!!!!
砂煙と共に立っていた兵士4名が吹き飛ぶ。
砂煙が晴れると大地には大きいクレーターが・・・
・・・え?今止めようとするとこれを受けなきゃいけないの??・・・無理!!!
3人はアリスの勇姿(?)を目を細めながら見ている。
「・・・ハロルド。兵士長。」
武雄は2人に話しかける。
「ん?」
「なんでしょう?」
「・・・今だけで良いから指揮権貸して貰えます?」
「構わぬよ。」
「ええ、良いです。」
2人は即断する。
武雄は2人に心の中で感謝をし、顔を向ける。
「・・・命令!」
「「はっ!」」
「これより大規模訓練に移行。
想定「強力魔物の束縛」」
「「はっ!」」
「ハロルドはまず、ここにいる兵士を掌握し、混乱を収めろ。
古株、新兵混合だが各小隊長を指揮し上手く想定対象者に対応せよ。」
「はっ!」
「兵士長は兵士内の救護兵を集めよ。
臨時の救護所をここに設営。
片っ端から治して戦線に戻す。」
「はっ!」
「アリスお嬢様の気が済むまで徹底的に戦う気で臨む!
行け!」
「「はっ!」」
とハロルドと兵士長は後方に急いで向かう。
あとはアリスお嬢様か・・・
左手に集中し「アクア×1、エクス×1、フロスト×1 発動」と考える。
と小さいが霧が発生した。
アリスは先ほどのクレーターの位置に立っている。
が、兵士たちを見ていて動かない。
武雄はアリスに近寄ると
「アクア×5、エクス×5、フロスト×5 発動」を何回もする。
とアリスの周りを霧で隠せるくらいになった。
「アリスお嬢様。」
「タケオ様?どうしました?」
アリスは顔を動かさず聞いてくる。
「今は周りを霧に包みました。
兜を取れますか?」
「はい。」
とアリスは兜を取り始める。
武雄は話す間も周囲に霧を出し続けている。
アリスは兜を取り顔を武雄に向ける。
「アリスお嬢様、私へ言いたいことはあるでしょうが、屋敷に帰ってから受けます。」
「ええ。」
「今はアリスお嬢様が動き足らなそうなので、存分に動いて貰って構いません。
これから今ここにいる兵士がアリスお嬢様を迎え討ちます。」
「ふふ、足りるかしら?」
アリスは笑う・・・怖っ!武雄は恐怖する。
「とりあえず、私はアリスお嬢様の応援に来たのですが・・・いります?」
「ふふ、いただけるものはいただきますよ。」
「そうですか・・・では。」
「んっ・・・」
と武雄はアリスの腰に手を回し、キスをしてくる。
ちょっと長めに。
「少しは応援になりましたか?」
「・・・良かったです。」
とアリスは武雄の腕の中で嬉しそうに言う。
「それと」
とアリスの腰に当てている手に「ケア×15」を発動し、アリスを回復させる。
「タケオ様?」
「少ないですが回復させました。
アリスお嬢様、来てくれてありがとうございます。
丁度良いタイミングでしたね。
こういうのもあれですが・・・カッコ良かったです。」
「ふふ。では、婚約者から良い応援を受けましたのでこれから思う存分動きますね。」
と霧が晴れてくる。
「タケオ様、いってきます。」
「アリスお嬢様、ご存分に。」
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「新兵達には悪夢だったろう。」
とハロルドは後に回想をした際に呟いた言葉がこれである。
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