第74話 兵士詰め所に到着。
武雄は城門横の兵士詰め所に着いた。
のだが・・・外から見ただけでも、あまり人が居ない様子だった。
「んー・・・」
武雄は悩む。
兵士はスミス坊っちゃんの説明では約880名。
エルヴィス領内の警ら等でこの街以外に滞在・勤務しているのが6割として残り350。さらに裏の城門に100名として、ここには250名程度はいると踏んだのだが・・・
「警察本部のイメージなんだけど・・・なぁ・・・」
とりあえず、中に入るか・・・武雄は思いきって中に入った。
・・・やっぱり閑散としていた。
武雄の想定では、
警察本部に呼び出される→待ってましたと大男達に囲まれる→何かしら犯人扱いされる→奥の取調室に連行→無実を訴えるが認められない→グタグダ言うなら決闘だぁ!・・・のつもりで来たのだが・・・困った・・・
と悩み始めた時、女性兵士が近くを通る。
「あの・・・すみません。」
「はい!なんでしょう!」
女性兵士は元気に答えてくる。
「こちらは、城門横の兵士詰め所で合っていますか?」
「はい!そうですよ!」
「・・・私はタケオ・キタミザトと言います。
小隊長のトマス・ノースさんと昼過ぎに話し合いにとのお約束で参りました。
ノースさ」
「あ!聞いています!
こちらです!」
と女性兵士は武雄を先導する。
詰め所内の奥の一室に通される。
ドアを女性兵士がノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する
「し・・・失礼します!
お・・お客様がま・・まいりましたので、お連れしました。」
とやや緊張気味居に挨拶をする。武雄も入室する。
「タケオ・キタミザトと言います。
小隊長のトマス・ノースさんと昼過ぎに話し合いをとのお約束で参りました。」
「兵士長のアバン・デビットと言います。
この度はうちのノース小隊長の無理を聞いて頂きありがとうございます。」
二人とも軽く礼をする。
「どうぞ、お座りください。」
と兵士長が言い。
簡易的な応接セットに兵士長と武雄は椅子に座る。
「あー、すまないがお茶を持ってきてくれ。」
「は・・はい!わかりました!」
と女性が退出していく。しばらくしてお茶をもってくる。
「改めまして。タケオ・キタミザトと言います。
こちらには来たばかりでして右も左もわからない始末です。」
と武雄は苦笑いをする。
「はい。私はアバン・デビットと言いまして兵士長をさせてもらっています。
エルヴィス家からは報告が来ておりましたので、文面だけは知っております。」
「ちなみに何が書かれていましたか?」
武雄は恐る恐る聞いてみる。
「キタミザト様の名前とアリスお嬢様のお気に入りになって部下になったとしか書かれていませんでしたね。」
・・・え?それだけ?
そりゃ事情を聞きたくはなるわな・・・武雄はガックリとうな垂れた。
「それにラルフやテイラーの店に行かれていたみたいですね。
そちらからもキタミザト様のお話を聞いていますよ。
発想がとても真新しくて面白い方だと。」
武雄はそれが誰なのかわからなかった。
「・・・えーっと。」
「あ、ラルフは仕立て屋の店長。テイラーは魔法具商店の店長です。」
「あぁ、あの二人ですか。」
「それに街の青果屋からも良い人と言われているとか。」
・・・どこまで知っているの?と武雄は恐怖した。
とドアがノックされる。
兵士長が「どうぞ。」と許可を出すと扉を開け数人が入室してくる。
「失礼します。第1小隊ノースです。
商街区でのイザコザが終わりましたので帰還しました。
また、お客様がお見えの様ですので、第2から第8小隊長を連れてきました。」
と8名が入ってくる。
「はい。ご苦労様です。
さて、主要メンバーがきましたね。
キタミザト様・・・」
「はい。
タケオ・キタミザトと言います。
この度、エルヴィス家にご厄介になることになりました。
立場はアリスお嬢様の部下となります。
よろしくお願いします。」
と礼をする。
各小隊長も礼をする。
「まぁ、立ち話もなんですから座って話しましょう。」
と兵士長が言い、各小隊長も椅子をもってくる。
人数も少し多いので、車座になる。
「では、まぁ事情と言うより歓談しましょう。」
と兵士長は言う。
「そう言えば兵士長さん。トレンチコートのことは聞いていますか?」
武雄は話題を切り出した。
「いえ、聞いておりませんが?」
「そうですか。実は仕立て屋にて考案した物なのですが。
今度兵士への標準装備として決まりました。」
「ほぉ、どんな物ですか?」
武雄は兵士長と小隊長達にトレンチコートの概要を説明する。
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「なるほど。そのコートの概念や仕様は良いですね。」
兵士長はそう言い小隊長達も頷く。
「しかし、完全に防寒できないのです。
中に着る物も思案していますが、とりあえず第1弾としてトレンチコートは出来上がる予定です。」
「ちなみに支給品になるのですか?」
小隊長の内、一番若そうな者から質問が出る。
「いえ、今回は金額が高めになってしまい予算の関係上、完全支給にはできませんでした。
伯爵に掛け合って補助金を出して貰えるようにしましたが、金2枚は覚悟してください。」
「そうですか・・・」
質問してきた小隊長は少しがっかりした。
「まずは幹部と新兵からと思っていますので、その際は仕立て屋にサイズを提出してください。
支払い方法は、1回、4回、8回の分割も出来る様に考えています。」
「分割はありがたいですね。でも新兵ですか?」
違う小隊長が質問してくる。
「はい。」
「なぜです?」
「再来月に新兵の訓練があるとゴドウィン伯爵が来られた際に言っておられました。
仕立てる側からすれば他領地の兵士や幹部への広告と新兵訓練でコートの耐久性や使い勝手の確認をします。
多くの意見があれば、トレンチコートをより良くできますからね。」
「なるほど。」
質問してきた小隊長が頷く。
「ちなみにキタミザト様。」
第1小隊ノースが唐突に質問してくる。
「はい、なんでしょう?」
「その右手の指輪は?」
そこに気が付くか・・・と武雄は観念した。
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