第73話 メモを見てみよう。・・・どうすれば良い?
客間には誰も居なかった。
アリスは、中に入りメガネを探すとすぐに見つける。
エルヴィス爺さんがいつも座る席に置いてあった。
アリスはメガネをかけ、メモを見る。
「私のことは書いてあるのかな?」・・・ドキドキッ
読み始めて最初は「魔法は満遍なく使えそうですね」と武雄の使える魔法を「へぇ~」という感じで見始める。
自分のことが書いていなくて「ちょっと残念」と思うと同時に、さっきまでのちょっとテンション高めの自分が恥ずかしくなった。
・・・
・・
・
「・・・え?」
メモの最後で目が止まる。
・・・出頭命令?倒される?
アリスは自分の記憶を探るが、武雄といた2日間で兵士に話しかけられた記憶はなかった。
常に武雄の姿が目の端に入るようにしていたつもりだった。
「まさか初日に・・・」そう思うが、すぐに否定する。
初日は街中に出ていないのだからありえない。
では・・・いつ?
・・・わからない。わからないが今は武雄の事が心配だ。
「私と一緒に居ながら私の知らない内に私の知らない者と接触させてしまった」
アリスは、失敗したと思った。
武雄自身も言っていたが、武雄は武芸をしたことがないのが一目でわかる。
体付きや身のこなし・・・まったくの素人なのだ。
そんな武雄が倒される覚悟をしている。
アリスは焦る・・・どうすれば武雄が行った場所がわかるのだろう・・・
自分以外、誰も居ない客間でアリスは悶々とするのだった。
------------------------
エルヴィス爺さんはフレデリックと共に扉を開け客間に入ってくる。
「しかし、朝食にタケオが作った『マヨネーズ』は良かったのぉ。」
「ええ、あれは良いですね。
レシピも簡単でしたので、今度あれをドレッシングにしたサラダを作ってみ」
フレデリックは、そこで言葉を止めてしまう。
エルヴィス爺さんも言葉を失う。
客間には、先にアリスが居たのだが、ポロポロと泣いているではないか・・・
あのアリスが泣いている・・・
「ど・・・どうしたのじゃ!?アリス!?」
エルヴィス爺さんは動揺しながらも問いかける。
「お爺さま、タケオ様が・・・」
と紙を見せるが、何が書いてあるかわからない。
「ん・・・んん?・・・読めぬの・・・」
「あ・・・これを・・・」
とアリスはメガネを渡してくる。
「どれどれ。」とエルヴィス爺さんはメモを見る。
「これは・・・」
「お爺さま・・・タケオ様は・・・誰かに・・・呼び出されて・・・
・・・怪我をされる覚悟で・・・」
アリスは泣きながら言ってくる。
「う・・・うむ・・・」
武雄が昨晩、報告してきた内容だ。
・・・しかし、今のアリスに居場所を言えば、こっちに火の粉が飛んでくる可能性が高い・・・
エルヴィス爺さんは悩む。言うべきか・・・
紙とメガネをフレデリックにも渡す。
「アリスお嬢様、これにはヒントがありますね。」
内容を確認したフレデリックが言う。
「え?」
アリスはフレデリックに顔を向ける。
「タケオ様は、わざわざ「出頭命令」と書いています。
という事は公的な人に呼ばれたのでしょう。」
「ええ。」
アリスはそう言い頷く。
「タケオ様はここに来てまだ4日。昨日言われたのだとしたら3日。
いくら知識があってもそれだけでは誰が誰だか、わからないはずです。
なのに、タケオ様は、出頭命令と書いたという事は。」
「いう事は?」
「相手が名乗った、もしくは見た目がそうだったとしかありません。」
「確かに。」
アリスは頷く。
「エルヴィス家から文官・武官各幹部には報告がいっています。」
「ですね。」
「・・・では、幹部以外はどうでしょう?」
「あ!」
「そうですね・・・例えば幹部から言われたから逆に気になって声をかけた・・・とか?
それに文官ならワザワザ声をかけたりするでしょうか?
どんな性格の人物か、わからないのですから慎重に接触するはずです。
何か用事を作り、この屋敷に来る方が確実です。」
「確かに。」
「声をかけた人物は、相手がどんな行動・・・いきなり襲って来ても対処ができるという自信を持った人物なのでしょう。」
「でも、それって・・・」
「この街には、そんな組織は2つしかありません。
私はタケオ様は、そのどちらかにいる気がしますが・・・」
アリスは席を立つと部屋を出ていこうとする。
「アリスお嬢様、どちらへ?」
フレデリックは聞いてくる。
「部屋に戻って着替えます。
すぐに戻りますから、フレデリックは私のフルプレートを用意してください。」
「・・・戦支度で?」
「タケオ様をイジメる人達に仕返しします。」
アリスはそう言い残し、客間を退出していった。
------------------------
客間にはエルヴィス爺さんとフレデリックが残された。
「フレデリック、助かった。」
エルヴィス爺さんは、頭を下げ感謝する。
「いえ、自分自身でも良く頭が回ったと感心します。」
「結果的にタケオの所在地を言わなくて正解だったの・・・」
「はい、アリスお嬢様が立った時ですね。」
「うむ、あれが・・・魔眼の力かの。迫力があったの・・・」
「何というか、
力が溢れているのが見ているだけでもわかってしまう・・・
自然災害を間近で見ている感じでした。」
「あの状態でこっちに敵意が向けられたら・・・
客間は壊滅だったの・・・」
「私的には客間では済まなかったかと思います。」
「うむ、そうじゃの。」
「では、私はアリスお嬢様のフルプレートを持って参ります。」
とフレデリックは客間を退出していった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。