第69話 マッタリしながら一日を過ごそう。
アリスは客間でマッタリしていた。
朝食も食べ終わり、エルヴィス爺さんとのんびりだ。ちなみにスミスは勉強中。
思えば武雄が来るまでの日常。
この3日間は驚きの連続だった。
不思議で面白い男性がきて、いろいろ自分の知らないことを教えてくれる。
知識も豊富で発想も奇抜。
こんなに面白い人がいるのかと興味が沸いたところで求婚。
唐突だが、面白い。この人となら一生を楽しめそうだと思う。
求婚・・・アリスは考えただけで顔がニヤケる。
自分が結婚するとは昨日までは思っていなかった。
でもいつかは知らない人と結婚するのかなぁとは思っていた。
昨日の時点でアリスは、「顔も知らない貴族よりかは、自分を楽しませてくれそうなタケオ様の方がマシ」程度で求婚を受けたのだが・・・
自室に戻り、気が付くと右手の薬指を見ながらニヤついていた。
「今、タケオ様は何をしているのだろう?。」とか思ったり、
まるで話に聞く「恋する乙女か」かと自身にツッコミをいれたりもした。
しかし、時間が経つにつれ実感がどんどん湧いてくる。
色んな思いも重症化していく。
終いには、子供の数や住む部屋のことまで考えていた。
そして、なかなか寝付けなかった。
今朝起こしに行ったのも誰に言われたわけではなかった。
なので、厨房にいるとはわからず部屋に行ったのだ。
「たぶん、タケオ様は私が部屋に向かう所を見つけたのだろう。
すぐに声をかけないのは私をからかいたいからかしら?
まぁそれも面白そうだし良いか。」とアリスは思うのだった。
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エルヴィス爺さんはアリスを観察していた。
終始ニコニコだ。
そして右手の薬指をみてニヤケる。
そんなことを繰り返している。
・・・ここまで変わるかの?・・・
孫娘というのもあり、アリスの結婚については少し考えていたのは事実だった。
ただ、エルヴィス爺さん的には、孫娘を政略に使う気は全くなかった。
本人が居たいと言えばいつまでも居ればいいとすら思っていた。
それにアリスは結婚に全く関心を示さなかったのもある。
いつか来るでしょ?的に構えている節もあったし。
アリスのお見合いの申し込みは2年前までは多く来ていたが、戦果と二つ名の影響だろうか。最近は来ていなかった。
ジェシーもレイラも2人揃って勝手に自分の嫁ぎ先を決めた。それも唐突に。
ジェシーは向こうに押しかけて、レイラはいきなり求婚されて。
アリスもタケオと電撃的に婚約した。
・・・姉妹だからか似ているものなのかの?
と自分や亡き息子を思い出す。
・・・血筋か・・・とエルヴィス爺さんは苦笑するのだった。
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ちなみに武雄は魔法具商店へ出かけている。
「今日は武器の仕様打ち合わせをしますから、アリスお嬢様にとっては少々・・いや、かなり退屈ですから今日は別行動をしましょう。」
と武雄に言われ、アリスもそうだなぁと思い従っている。
それに、明日か明後日には乗馬を武雄に教えないといけない。
どうやって教えるか・・・そもそも運動神経は良いのか?
スミスを教える時は多少時間を要した。
んー・・・優しい馬にしてもらって・・・
といろいろ計画を考え付く。
と、昨日の夜に武雄の部屋に行った際に本の回収を忘れたことに気がつく。
・・・不味い・・・
が、丁度、部屋の主は外出中。戻りも夕方になると言っていた。
お昼を取ってからでも回収に向かえば良いかしら?と思う程度だった。
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武雄は魔法具商店に向かっていた。
途中、雑貨屋によって、小銃が肩にかけられる様に紐ベルトを数個購入。
あとは小物も購入。リュックに詰め込んで、小銃を小脇に抱えて向かっている。
途中、街の人から気にもされていないと感じていた。
それもそうか・・・銃の価値がわからないし、武器とは思わないんだろうなと思った。
そんなことを思っていると魔法具商店に着く。
中に入ると「キタミザト様、いらしゃいませ。」
と店員が言ってくる。
「ええ、来ました。」
と言い、武雄は小銃が置かれている席に座る。
「とりあえず、襟章とネームタグはエルヴィス家で値段も含め許可が下りましたので、正式に発注がかけられます。
屋敷のフレデリックさん宛に注文書と請書を持参してください。」
「わかりました。
こちらが昨日言っていた襟章のサンプルです。」
と店員は机に並べる。
「なるほど。こうなるのですね。」
と武雄は感心する。注文通り・・・いやもっと見栄えが良い。
と注文していない襟章があった。
「これは?」
「あぁ、ついでにエルヴィス家の人達が付ける襟章も考えました。
鮮やかな赤の長方形の布の中央部分に金色の線を1本入れ星マークを付けました。」
武雄は、なるほどと思う。
「では、伯爵が星3つ、スミス坊ちゃんが星2つ、アリスお嬢様が星1つにしましょうか。
私とフレデリックさんが星なしで。
ただし、星1つは追加の可能性がありますが。」
「・・・なるほど。やはりそうなりましたか。」
「昨日の指輪の時点で想像はしていたのでしょう?」
「ええ、わかっていました。
昨日は大騒動でしたか?」
「いや、そちらの話は簡単に進んでしまいましたよ。
むしろ、私の心の方が混乱しました。」
武雄は店員に苦笑をするのだった。
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