第65話 アリスお嬢様の思い出。(住民からの相談事。)
王都守備隊3名に声をかけた人はスイーツ店のおばさんだった。
相談をしたいと言われ、王都守備隊3名は用も済んでいるし、あとはお酒だけだったので少しの時間ならと話に付きあうことにした。
場所はスイーツ店の店内。
「で、相談とは何でしょう。」
「はい。実はあなた様が5日前、お帰りになる際に私は一枚の投書を手にしました。」
その言葉に王都守備隊3名は顔を真顔にする。
それはあのアリスへの投書でしかない。
話は続く。
「私としては、アリスお嬢様へ何かできないかと、いろいろ悩んだのです。
で、領主様やお嬢様方に迷惑のかからない方法はないか。
皆と一所懸命に話し合いました。
そこで王都に向け住民の嘆願書を出そうという結論になりました。」
「・・・嘆願書・・・ですか。
それは大まかに言ってどの様な内容になりますか?」
「ええ、アリスお嬢様への王都での誹謗中傷を何とか和らげて貰いたい旨の嘆願書になります。」
その言葉を聞き、王都守備隊3名はホッとする。
もし過激な要求だと伯爵に対して何かしら行動をしないといけないからだ。
「その原本はありますか?お見せいただいても?」
「はい、少々お待ちください。」
と店のおばさんは奥から1冊の本の様な物を持ってくる。
表紙には「嘆願書」とのみ書かれていた。
第一近衛分隊長が中を確認すると。
「アリスお嬢様は我々の街を守る為、一生懸命に努力した。
オッドアイについて、街を守ったことで成ってしまった。
もしそれに罪があるのならば、お嬢様に頼ってしまった我ら住民にこそ罪がある。
アリスお嬢様は我々住民への理解もあり、優しく、気さくに対応してくれる良い方なのです。
そんなお嬢様が誹謗中傷されるのは忍びない。
アリスお嬢様に対する誹謗中傷を何とか和らげる方法を王都で考えて貰えないだろうか。」
とそんな感じで主旨が書かれている。
また数十人の署名があった。
他の2人にも渡す。
「なるほど。で、この嘆願書をどうするのです?」
「結構な人数の署名が集まったので送ろうかと思ったのですが、送り先が・・・」
「なるほど。送り先がわからず困っていたのですね。」
「ええ。お恥ずかしい話、集めてみたものの送り先をどうするか考えていなかったのです。」
「結構な人数とは、どのくらい集まったのですか?」
「えーっと・・・3万人くらいかしら?」
「「「・・・え!??」」」
その言葉で王都守備隊3名は固まる。
この街は約5万人都市。その6割もの人の署名を5日・・・実質4日程度で集める。
驚異的、奇跡的、普通なら1か月とかの期間で集める単位をいとも簡単に成し遂げている。
それだけエルヴィス家とアリスに対する愛情が凄く、絶大な人気を誇っていることわかった。
「・・・とりあえず、こちらの嘆願書の写しを貰えないでしょうか。
我々がすぐに関係部署に提出しますので。」
「本当ですか!!何卒、よろしくお願いします。」
とおばさんは第一近衛分隊長の手をとりぶんぶん振っている。
「とりあえず、集まった署名は箱に詰めて送ってください。箱には嘆願書と書いておいてください。
送り先は王都の第八兵舎で問題ありません。届き次第、私が責任を持って担当部署に渡します。」
第八兵舎は王都守備隊の詰め所である。
「王都の第八兵舎ですね。わかりました。」
と言われ、嘆願書の写しを貰い、王都守備隊3名が席を立ち店から出る。
「休暇は王都に帰ってからか?」
苦笑しつつほかの2名も笑っていた。
王都守備隊3名は帰りも走り抜く気になっていた。
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