第62話 アリスお嬢様の思い出。(監査後編とお茶タイム。)
伝令役の騎士長が城門を走り抜けていく。
その姿を鞍から落ちた紙を見ながらスイーツ店のおばさんが見送っていた。
「・・・どうすれば・・・」
・・・いろいろな考えが沸き上がってくるのだった。
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小休止が終わり、監査官達一行は場所を城門前に移し、監査の続きを始めた。
「あちらとあちらに旗を配置しました。
この間に戦闘開始前に200匹が並びました。」
「なるほど。実際に現場を見ると・・・臨場感が出てきますね。
ちなみにゴブリンが目前に並んだ時に感じた事はありますか?」
「はっ!アリス指揮官や私はゴブリン軍に突貫前と最中におかしさを感じていました。
これは戦闘後の慰労会で話をしていてわかった事です。」
「おかしさとは?」
「統率され過ぎていた感があったと考えています。
目の前で対峙した瞬間に漠然とおかしいという違和感がありました。
ゴブリンは最大でも8~10匹の集団で行動し、獲物を目にしたら直ぐに襲ってくると認識しています。
そのゴブリンが200匹で我々の前に並び、我々が突貫するまで襲ってこない。」
「確かに、先ほどの戦闘経過では気が付きませんでしたが、言葉にされると、おかしい・・・いや異様ですね。
他に戦闘中や戦闘後に感じた事はありますか?」
「異様な件の続きになってしまいますが、統率されているのに指揮をしている者が見当たらないこと。
ゴブリンよりも強敵がいない事に違和感が残りました。」
「わかりました。では、最後に隊葬をした場所に案内してください。」
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監査官達一行がとある場所に連れて来られた。
「・・・ここですか。」
そこには小さな石とお酒が置いてあった。
「これはどなたが?」
「本当はアリス指揮官本人が毎日したかったと言っておったが、わしの家の者が代わりにやっておる。」
「そうですか・・・」
監査官達は黙とうをささげる。
「では、会は終了になります。
一端、屋敷に戻って、我々は王都に帰ります。」
「泊りにならないので?」
「本心で言えば1泊していきたいのですが、今は監査官という役目ですので。
被監査対象の周辺には宿泊しないのが原則なのです。」
「なるほどの。」
「私も今回、急遽監査官に任命されましたので、急いで関係法律を頭に入れてきました。」
皆で微笑みながら屋敷に戻っていった。
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「では、第3皇子妃レイラ様、エルヴィス伯爵、ゴドウィン辺境伯爵と奥方様。失礼します。」
と言い、監査官達はエルヴィス伯爵邸をあとにした。
「・・・さて、客間でのんびりするかの。」
「ええ、そうしましょう。」
ジェシーが頷き、皆、屋敷に入っていった。
「皆さま、お疲れ様でした。
私も隣の部屋で聞いておりましたが、この目は凄い事なのですね。」
客間で待っていたのは、アリスだった。
それに頷きながら皆が席に着く。
「いろいろ聞けたわねぇ。」
とレイラが言い。
「新事実が盛り沢山だったわ。」
とジェシーが言い。
「アリスの方は上手くいったのかの?」
「はい、お爺さま。言われた通りに行動しております。」
「ふむ、賽は投げられたの。」
と言われ、軽く皆が頷くのだった。
3姉妹がキャイキャイ話している横で。
「まさか王都守備隊が出てくるとは・・・」
とゴドウィン辺境伯爵は疲れ切った顔をしながら言う言葉にエルヴィス伯爵は頷きながら
「レイラは、あの騎士長を知っておるのかの?」
「はい、知っていますよ。
あの者は、私たち王家一同で食事やお茶をする時に陛下の横にいますからね。
ちなみにただの騎士長ではないですよ?」
皆「はい?」という顔をしている中、レイラが役職をバラす。
「王都守備隊 第一近衛分隊長と言うのが彼の役職ですね。」
皆の顔が引きつっていた。
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