第54話 アリスお嬢様の思い出。(部屋から出てきたお嬢様。)
エルヴィス伯爵が大激怒。
ちなみにゴドウィン辺境伯爵、フレデリックは投書を渡され内容を確認済。
二人とも一言。
「「殺っ●ゃいましょうよ。」」
「ふむ、それも手だの」
ニヤリと笑う3人。
三者とも意見の一致。
後に居合わせた両騎士団長はあれは悪魔の客間だったと語った。
「ふむ。とりあえずアリスを部屋から救わなくてはいけないのぉ。」
「親父殿が行けばいいじゃねえ?」
「主が行くべきでしょう」
「ふむ・・・では行ってくるかの。」
一人アリスの部屋に向かうエルヴィス伯爵。
何を言えばと考えながらまとまらない内に扉の前に到着。
「コホンッ、アー、アー・・・」
よしやるかの!
「アリス。じいちゃんだ。
今、戻ってきたのだがの。実はここ数日アリスが部屋に籠っていると聞いての。
いろいろ考えておったのだが、なぜか知らぬがわしの手元にアリス宛の投書があり、
失礼かとは思ったが、アリスの悩みを知りたくて読ませてもらった。
あの内容は、酷く残念じゃ。
とりあえず、部屋から出てきてアリスの考えを聞かせてくれないかのぉ?」
・・・返答はなし。
どうしたものか・・・
んーっとそのままの姿勢で考えていると。
「お爺さま。孫の部屋の扉に耳付けて何しているのですか?」
真後ろからアリスの声が・・・
エルヴィス伯爵はブリキのおもちゃの様に擬音的には「ギギッギギギッ」と後ろを向く。
そこには、オッドアイになった孫娘アリスが、めちゃくちゃ冷たい目線を送っている。
「ヒィ!」と思わず声が漏れてしまう。
これが後々までエルヴィス伯爵のトラウマになる。
「なるほど、心配をしてくれたのですね。
その件については申し訳ありません。体調不良でしたので休んでおりました。」
冷たい目線のままアリスはエルヴィス伯爵の説明を聞いていた。
「下にゴドウィン様やフレデリックがいるのですね?
丁度良かったです。いろいろ考えていたので、それも皆さんで話し合いましょう。
では、着替えますので、お爺さまは客間にお戻りください。
・・・聞き耳立ててたら次は殺●ますよ?」
エルヴィス伯爵が高速で頷いて、さっさと客間に戻っていく。
「困った人達ですね。」
その後ろ姿を見送りながらアリスは微笑みながら呟く。
客間に戻ってきたエルヴィス伯爵は座った途端にうな垂れてしまった。
ゴドウィン辺境伯爵とフレデリックは少し心配になったがエルヴィス伯爵が「怖かったぁ」と
ガタガタ震えながら感想を言ったのをみて、アリスは元気だと確信した様子だった。
しばらくして客間にアリスがやってくる。
客間に入って、皆に挨拶。
アリスの顔をみたエルヴィス伯爵、ゴドウィン辺境伯爵、フレデリック、騎士団長2名は驚きを隠せない。
オッドアイにではなく。
入ってきた顔つきが現場指揮官の凄みを持っていたためだ。
「皆さま、大変ご心配をおかけした様で申し訳ございません。」
5名はそれぞれ頷き返した。
「で、じゃ。わしの手元にアリス宛の投書がある。
内容は言いたくもないし、確認もしたくない。
だが、内容はアリス宛ではなく、我が伯爵家を対象にしている節がある。
よって家として報復をしなくてはならん。」
ちなみに投書の内容は・・・簡単に言うと。オッドアイは呪われた目だとか、
お前は鮮血の姫だとか、血を啜った吸血鬼だとか、罵詈雑言のてんこ盛り。
ついでにお前のせいで領地を没収だとか。
ちなみにオッドアイは3辺境伯爵・子爵領では珍しくない。
魔王国が近いからなのか、オッドアイが普通に街を行き来している。
なので、街では誰も気にしないし、話題にもしない。
しかし、これは王国の東部の話、西に近づけば近づくほどオッドアイは珍しく。
気持ち悪がられたり、差別の対象になっているのも現状なのだ。
国としては比較的、差別は緩いのだが地域差が出てしまうのはしょうがないことなのである。
「でも、お爺さま。差出人がわからないのです」
「なるほど、アリスはそこで行き詰って悩んでおったのかの?」
「はい。差出人がわかれば、お姉様2人のお力も借りて、すぐに解決できそうでしたので。」
・・・その言葉を聞いてゴドウィン辺境伯爵が汗をかきだす。
フレデリックと騎士団長2名は、まぁそうだろうなぁという顔。
エルヴィス3姉妹は美人ぞろいと評判というのは表の評判。
では、裏の評判は?となると
策謀大好きな長女、情報収集が得意な次女、実力行使の3女
という風になる。
「で、どうしようと思ったのじゃ?」
「差出人がわからず、封蝋があるので、とりあえず様子を見てみようかと。
一応、脅し文句に王都の政治家たちがオッドアイを見逃さないだの、領地召し上げだのと書いてあったので、何も活動をしなければ、実施は延期にされるかな?ぐらいに思っていましたが。」
「で、部屋に引きこもりかの?」
「最初の3日は寝込んでいました。気負いすぎたからなのか、突然オッドアイになったからなのか。
とりあえず寝ていました。ついでに様子見ですね。」
「・・・あとの2日は何をしておったのじゃ?」
「オッドアイの制御ですね。」
「制御とはなんじゃ?」
おもむろにアリスは立ち上がり。テーブルに置かれたリンゴを持って・・・握りつぶした。
「こういうことです。」
5名は驚愕していた。
兵士長の話ではゴブリン7匹程度なら瞬殺だったのを思い出す。
・・・逆らえないかも・・・5名の共通認識となった。
「今ならゴドウィン様といい勝負かも。」
とアリスは微笑むのだった。
「・・・では、本格的に報復の方法を考えるかの?
の前に兵士詰め所の騎士たちを本国に返してきなさい。
あと、うちの騎士たちは平常業務に移行する様に伝えてくれ。」
「わかりました。」
フレデリックが頷き、席をはずしたのだった。
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