第52話 アリスお嬢様の思い出。(慰労会。)
隊葬を終わらせゴブリンも焼いた後、兵士を集合させ慰労会をすることになった。
店は、街の大き目な飲み屋にした。
ここなら35名程度を収容可能と皆が言っていたからだ。
ちなみに参加人数が約半分なのは、残りは歩哨もしくは治療中だからだ。
皆で平等にくじで決定した。
歩哨+治療をしている者は、好きなお酒1樽贈呈という副賞つきで解決済み。
アリスは伯爵邸で待っていると呼び鈴が押された。
玄関に出ると兵士長がお迎えに上がっていたのだ。
「アリスお嬢様、準備が整いましたので、お迎えに上がりました。」
「ご苦労様。うちの酒蔵には突撃しましたか?」
「はい。今日の歩哨当番分を最優先に確保し、9割方運び出しました。」
「では、良しとしましょう。あとの1割はお爺さまと飲ませて貰います。」
「畏まりました。では、参りましょう。」
「スミス、行ってきます。」
「お姉様行ってらっしゃいませ。飲み過ぎないでくださいね。」
「ふふ・・・わかっているわよ。」
アリスが屋敷を出た後、屋敷に一枚の投書がされた。
これが後々の火種になるとは。
簡単にエスコートされながらお店を目指す道すがら兵士長が話し始めた。
「お嬢様、大変申し訳ないのですが。」
「どうしました?」
「どういう訳か話が広まりまして。」
「ゴブリンを撃退したのは広まって良いのでは?」
「そちらではなく、慰労会の方がです。」
「あら?マズイので?」
「・・・来ていただければわかるかと・・・」
「?」
アリスは意味が分からないと言った感じで兵士長の後をついていくのだった。
そしてお店がある通りに差し掛かりアリスは驚いた。
慰労会場だけでなく。
通りのありとあらゆるお店が開いており、酒盛りが始まっていたのだ。
酒屋だけでなく、パン屋、八百屋、スイーツ店、喫茶店・・・etc
ジャンル関係なく店先で飲んだくれている。
男も女も、老若男女関係なく。
この国では14歳から大人扱いをされるが、年齢に達していない者はサイダー水が振る舞われていた。
さすがのアリスも頭を悩ます。
「なんでしょう?このお祭りは・・・」
「申し訳ありません。アリスお嬢様。
皆が我も我もと参加を表明して撤回しないのです。」
「・・・まぁ悪いことで飲んでいるのではない様なので良いでしょう?」
そんな会話をしていると通りで飲んでいた人達がアリスを見つける。
そしてアリス発見の一報は駆け抜ける。
誰かが一言。
「せーのっ」の合図の元、通り全体から
「「「アリスお嬢様、初陣及び初勝利おめでとうございます!!!」」」
「「「 乾杯!!!」」」
至る所から杯をぶつける音が聞こえる。
その光景を見てアリスは無意識の内に泣いていた。
ここに来てようやく街を守ったと実感したのだった。
ちなみに後ろに控えていた兵士長は鼻水を流しながら号泣していた。
それからはアリスは大変だった。
まずは慰労会場で乾杯の挨拶で各兵士たちに労いの言葉をかけ。
次に向かったのは各店先の会場である。
パン屋、八百屋、スイーツ店、喫茶店・・・etc
軽く10件以上は回った。
その都度、今回の勝利の立役者は私ではなく、私を含めた81名の偉業だと。
そして自身のオッドアイもその時の戦果なのだと。
兵士も住民も皆がいてくれたから勝利できたのだと宣伝しまくった。
アリスはヘトヘトに疲れていた。
「はぁ・・・慰労会とはこんなに疲れるものなのですね。」
「はは・・・今回は特別でしょう。」
兵士長は労いの言葉をかけた。
「・・・最後に行きたい場所があります。
兵士長すみませんが、ご一緒してもらえますか?」
「はっ!了解しました。」
アリスはテーブルにあったお酒を持って歩き出した。
来たのは城門外の兵士を火葬した場所。
アリスは持ってきたお酒を火葬した場所にかけた。追悼の意味だった。
黙とうをした後、城門に向かう為、振り返った時。
アリスは驚いた。
城門に慰労会に出ていない残り32名が片膝立で待っている。
「・・・あなたたちは、体に無理言って来たのですか?」
「はっ!もうすぐ城門を閉めますので、お迎えに上がりました。」
「困った人達ですね。」
アリスは、本当に困ったという感じで、微笑んだ。
「我々は、今日、街を護るとともに、お嬢様をお守りすることを誓いました。
お許し下さい。」
「許すも何も・・・わかりました。
皆で一緒に街に帰りましょう。」
アリスは一人一人労いの言葉言葉をかけながら街へ帰っていった。
次の日には、慰労会の様子もこの城門の様子も街の人達に広まっていく。
皆一様に「うちのアリスお嬢様は流石だ」と信頼を増すのである。
兵士長にエスコートされながら屋敷に帰宅したのだった。
「スミス、皆、ただいま戻りました。」
アリスは玄関を入ってくる。
「お姉様、おかえりなさい。」
「ええ、帰りましたよ。」
そこにメイドが待っており、アリス宛の投書があったと手渡された。
「差出人不明・・・封蝋がある・・・どなたでしょう?」
そのあとアリスは屋敷に1週間以上、引きこもることになる。
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