第50話 客間に戻って。
客間には、エルヴィス爺さんとアリス、スミス、フレデリックがいる。
「さてと、アリスは無事にタケオから求婚されたの。」
「はい。」
「で?どうじゃった?」
「タケオ様らしかったかと。」
アリスはにこやかに言う。
「うむ。謙虚さをアピールしてから、
『私の横で一緒に幸せを探せるのは貴女しかいない』・・・とな。
ふふ、いいのぉ。」
「ええ、いいですねぇ。」
エルヴィス爺さんとフレデリックは楽しそうに言う。
アリスは言われた側なのに顔を真っ赤にしていた。
「僕もいつかするのかぁ」とスミスは思うのだった。
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客間のドアを武雄はノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
中にはエルヴィス爺さんとアリス、スミス、フレデリックがいた。
「失礼します。」
と中に入る。
エルヴィス爺さんは、ニヤニヤ顔。
アリスは顔を若干赤くしている。
スミスとフレデリックはにこやかにしている。
「・・・随分と心配させてしまった様で申し訳ありません。」
と武雄は席に着くと言った。
「うむ。タケオの様な人間は、思い詰めるからの。」
「自分でも割と思い詰めてしまうとは、理解はしているのですが。
自分の中で相手に迷惑をかけたと思うとどうしても自責の念が・・・
それに、ある程度の友好をもってしまうと保護欲にかられますし。」
「・・・一応聞くが、それはどのくらいの人数かの?」
「この街で私に良くしてくれた人達まででしょうか・・・
あとは、今のところはわからないですね。
徐々に広がるかもしれませんが・・・」
「え?割と少ないですね。」
スミスは不思議に思う。
「スミス坊っちゃん、私はそこまで出来た人間ではありません。
人には、それぞれ愛せる人数・・・背負える人数があります。
素質や生活環境、学業等々で変わるのでしょうが、
私には、精々そのぐらいです。」
「はぁ。」
スミスはわからないという顔をする。
「スミス坊ちゃんには、私の様に許容が少ない人間には成って欲しくないですね。
私は思い込みをしやすいので、極端なんですよ。
好きな人、恩ある人には徹底的に甘いですが、敵と思うと徹底的に敵対してしまいます。」
「そうなのですか?そうは見えませんが?」
アリスは聞いてくる。
「ええ。ある程度隠せるようになったのは、働き始めてからになります。
それでも根本は変わらなかったので、自分の性格を把握して何とかやっていますけどね。」
「うむ、そういうものかの。
まぁ、誰しもその傾向はあるものじゃよ。
タケオはそれが強いのだろうの。」
「そう言って頂きありがとうございます。
アリスお嬢様には、私の手綱を上手く扱ってもらいたいですね。」
「え?私ですか?
・・・上手くできるかしら?」
「私はアリスお嬢様を甘やかしますが。」
「あら?私はどんどんわがままになってしまいますね?」
「・・・今までとあまり変わらないと思いますが?」
「タケオ様!!!」
と、皆で笑うのだった。
「そうだ、アリスお嬢様。」
「はい、なんでしょう?」
「今日、雑貨屋で買った本ですが。」
ビクッとアリスは体を震わせる。
「ええ、それが?」
「あの児童書は、あれはアリスお嬢様の武勇伝ですか?」
「え?・・・ええ。
2年前の戦いを本にされてしまいました。」
「なるほど、そうですか・・・いい話ですね。」
「何か気になりましたか?」
「いえ、特には。」
「?・・・変なタケオ様ですね。」
とアリスは言いつつ、もう1冊の本を後で回収しようと考えていた。
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客間から武雄は自室に戻ってきていた。
「さて寝るかの」というエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が部屋に帰っていった。
「さて、とりあえず魔法が使える様になったから何が出来るのか試すか」と思い机に本を開く。
と、扉がノックされ、武雄が「どうぞ。」と答えると扉を開きアリスが入ってきた。
「お邪魔します、タケオ様。」
「いらっしゃい、アリスお嬢様。」
アリスはベッドに腰かける。
「タケオ様、何をなさろうとしているのですか?」
「ええ、魔法が使える様になったので、何が使えるのかと思ってですね。
一通りしてみようかと。」
「あまり無理をしてはいけませんよ?」
「わかっています。アリスお嬢様はどうしてこちらに?」
「・・・なんとなくです。」
とアリスは返事をする。
本の回収とはさすがに言えない。
「さて、私は寝ます。
タケオ様もあまり無理しない程度にしてくださいね。」
「ええ、心得ておりますよ。」
とアリスは部屋を出て行こうとする。
武雄も扉まで付き添う。
「アリスお嬢様。」
アリスは呼ばれて顔を武雄に向ける。と、
「んっ・・・」
武雄がいきなりキスをする。
「おやすみなさい。」
扉の手前でされ、おやすみの挨拶で廊下にでる。
「おやすみなさい。」
と顔を赤らめてアリスも返事をする。
武雄は「はい、では。」と扉を閉める。
今日はいい夢が見れそうだ。
アリスはルンルン気分で自室に戻っていった。
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