表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/3563

第48話 武雄が退出後の客間にて。

武雄は先に客間を退出していた。

あとに残されたのはエルヴィス爺さんとアリス、スミス、フレデリックの4名。

「しかし、アリス、いきなりじゃの。」

「う・・・だって・・・その・・・

 とりあえず指輪をしてみたくって。タケオ様に『して』と頼んだらいきなり右手の薬指に・・・

 その・・・嬉しかったのと、すぐに外すからと・・・思って・・・」

「なんじゃ?正式に口で言われてないのじゃな?」

「うぅ・・・タケオ様・・・この指の指輪の意味知らなそうでしたし・・・」

「・・・全く、この二人は・・・」

エルヴィス爺さんは呆れる。

「・・・僕は余計な事を言いましたかね?」

とスミスは申し訳なさそうに言う。

「タケオ様は、スミス様の言葉で指輪の意味を悟ったみたいですね。」

フレデリックはそう言う。

「うむ。まだ3日じゃが・・・タケオは良い人間なのはわかっておる。

 人情に厚いし、義理堅そうじゃ。

 それに戦略、戦術も分かるし商才も見せている。

 かなりの好物件なのは確かなのじゃが・・・」

「なんだか言葉を並べると・・・タケオ様は天才かしら?」

アリスは呟く。

「ご本人は違うと言われるでしょうが、我々はそう見てしまいますね。

 あの方の知識には価値がありすぎます。

 エルヴィス家ではユルユルとしていますが、新進気鋭の貴族なら明日にでも既成事実を作るでしょうね。」

フレデリックは言う。

「もし他家に行っていたらどうなると思います?」

スミスは疑問を口にする。

「うむ・・・そうじゃの。その家主が野心があるなら自分が贔屓にしている皇子以外を貶める。

 その愚策を頼むじゃろ。

 もちろん自分の娘に既成事実を作らせて裏切らせない様にしての。

 ・・・数か月後には敵対貴族を壊滅させられるのではないかの?」

「そこまで・・・ですか?」

「うむ。スミス、考えてみるのじゃ。

 誰に言われたわけでもなく、相手を壊滅させる戦術を考え付くのじゃぞ?

 さっきの話は銃を用いてだが、それを魔法と置き換えても良い。

 確かに考え付いた方法は戦術の基本だの。

 しかし、タケオはこうも言っておったじゃろ?

 誘い込むのは上手く負けられる兵士・・・つまりは精鋭を犠牲にするという。

 アホな指揮官なら精鋭を犠牲にする作戦は思いつかないのじゃ。

 被害を最小限にするために精鋭を初期に投入する。

 その考えが出来るだけで、あやつは短期決戦の戦い方を知っておるのじゃ。

 貴族壊滅も武力を投じれば早いし、たぶん手段は択ばんじゃろう。」

「・・・」

スミスは何も言えない。

その方を超えないといけないのかと・・・

「唯一の救いは、タケオに野心がない事かの?」

「ええ、全くと言っていいほど野心がないですね。

 義理人情で動いている節があります。」

エルヴィス爺さんとフレデリックはそう言う。

「え?タケオ様は野心がないのですか?」

「うむ。この家を乗っ取るとか、スミスを亡き者にとか全く考えておらぬの。

 それよりもスミスを良い君主にどうやったら成長させられるのか考えておる様じゃの。」

「え?」

「ですね。初日の夜もスミスに対して申し訳ないことを言ったと悔いておられましたし。」

アリスが言う。

「ええ?」

スミスは困惑する。自分よりも才能豊かな人が自分の成長を気にしていることに。

「そう言えば、ゴドウィン様、スタンリー殿、お二方がタケオ様を気に入っておられましたね。

 主が要らないと言うなら俺が貰うとも言っておられました。」

「ふん、嫌じゃ。アヤツにはもったいないわい。」

アリスもスミスもその言葉に苦笑するのだった。


「ところでアリス。」

「はい、お爺さま。」

「今すぐタケオの部屋に行くのじゃ。」

「なぜでしょう?

 タケオ様もいろいろ考えたいと思うはずですが?」

「・・・タケオは義理堅いとわしは思うが、

 ちと自己を低く見すぎな感があるとも思っておる。」

「?何が言いたいので?」

「恩を返さないといけない相手の娘と自分が唐突に奪う形で結婚なんて、義理堅い者からすれば相手を裏切ってしまったと思うはずじゃの。

 タケオはアリスを気に入っておったし、アリスの将来のことも考えておったはずじゃ。

 貴族の娘は貴族と結婚するのが習わし、許嫁がいたかもとか。

 アリスの将来を潰したと考えても不思議はないの。

 さらにタケオは、自己評価が低い。となると・・・」

「となると?」

「今頃、指を落としているか・・・最悪、自決しているか・・・」

「はぁ!?」

アリスは急いで立ち上がり客間を出ていく。


------------------------

武雄は自室に戻ってきていた。

出ていく前に広げた荷物を軽く部屋の片隅に積む。

キセルに火を付ける。

「どうしてこうなった・・・」武雄は思い悩むのだった。

いや・・・決してアリスが嫌なのではない。

むしろこんな幸運なことはないとも思う。

だが、アリスお嬢様の未来を潰した可能性が恐ろしかった。

アリスは貴族なのだ。いつかは同格の者と結ばれる。

・・・さらにもしかしたら許嫁がいたかもしれない。

いろいろ悩む。

いっそのこと・・・指を・・・とも思うが・・・

情けなくて泣けてくる。

・・・自身の指を落とす覚悟すら決まらない。

・・・人の人生を狂わせたのだ。その代償が指1本。

それすらも出来る覚悟をもっていなかった。


その時、扉をノックする音が聞こえた。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ