第47話 さて、今後の銃の対応は?そうだ。指輪の話をしなくては・・・え?求婚?。
「どうするかの。」
「どうしようもないでしょ?」
武雄はエルヴィス爺さんに言う。
「うむ・・・打つ手がないの。」
「ええ、何もできません。」
「タケオ様はどうされるのですか?」
アリスは聞いてくる。
「特に今、何かしないととは思っていませんね。
これは国家間の戦略の話なので、一貴族家が考えることを超えています。
それに、下手に動こうものなら攻撃されかねません。」
「カトランダ帝国にですか?」
「いえ、アズパール王国にです。」
「「え?」」
アリスとスミスは驚く。
「反乱の意図あり・・・なんて報告されたら袋叩きです。」
「うむ・・・そのとおりじゃの。」
「まさか・・・そんなことはないですよ?王国の為にするのに。」
「たとえ王家はそう思っても他の貴族はそうは思わないでしょうね?
エルヴィス家を凋落させたがっている勢力は存在するでしょうから。」
「それは・・・」
アリスは少し悲しい顔をする。
「それが政争という物でしょう・・・ありふれたお話です。
ですので、今は表立って何かをする時期ではないのです。
やれたとして、エルヴィス領の兵士の中に実験小隊を創設するのが関の山ですね。」
「それはできるのですか?」
「今は無理でしょうね。」
武雄の言葉にフレデリックも頷く。
「武器の購入から弾丸の手配・・・予算が無いでしょうから。」
「そうですね。トレンチコートが行きわたるまでは難しいでしょう。」
フレデリックが言う。
「そうなのですか。」
「トレンチコートは実利が説明できたので、何とか予算に計上してくれる運びとなりましたが、
それですら何とか2割の補助金です。
将来の・・・起こるかすらわからない危険の為に多大な予算は組めませんよ。」
「ええ、その通りです。」
「なので、小銃の研究というのは、今の段階では私の趣味でしかありません。
それに私は馬も剣も弓も魔法もできませんので、身を守る為には、一つくらいは武器が必要ですし。」
「ん?タケオは馬は無理なのか?」
「触れたことすらありませんよ。」
「そうなのですか?」
スミスが言う。
「ええ。私の世界の認識だと、乗馬はお金持ちしかしないですから。
ですが、今後、ある程度行動範囲を大きくするためには、馬に乗れないといけないとは思うのですよ。
アリスお嬢様も手伝ってくれると言ってくれているので、してみようかと。」
「ええ、みっちり教えます。」
アリスはやる気十分で答える。
「みっちりは嫌なのですが」と心の中で武雄は思うのだった。
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「で、タケオ様の武器も決まりましたし、雑貨屋で小物入れを見つけました。」
「うむ。例の指輪じゃの?」
「指輪?」
スミスは「何のこと?」と聞いてくる。
「ええ。お嬢様が見つけた小物入れから指輪が出てきて、試しに付けたら取れなくなってしまったのですよ。
ついでに私もしましたが取れませんでした。」
はは、と武雄は笑う。
「一大事ですね。」
「ええ。それによく見るとその指輪・・・王家の紋章があってですね。」
「はぁ!?」
スミスは変な声をだす。
「うむ。レイラに送って調べて貰おうと手配中じゃ。」
「な・・・なるほど・・・ん?・・・タケオ様・・・お姉様・・・その手。」
スミスの言葉にアリスは顔を赤らめる。と顔を伏せてしまう。
「・・・えーっと?」
武雄はどうすればいいのかわからない。
エルヴィス爺さんはニヤニヤと笑い、フレデリックは素知らぬ顔、スミスは唖然。
「そうですか・・・お姉様、おめでとうございます。」
とスミスは言い放つ。
「いえ!!そうではないのですよ!?・・・遊びでちょっと付けただけで・・・」
「遊びでもお姉様は拒否されなかったのでしょう??」
「う・・・うぅ・・・それはそうですが・・・」
アリスは顔を真っ赤にして今にも泣きそうになる。
「はて?」と武雄は思うが、今聞いたら危ういと本能的に悟りだんまりを決める。
「そうですか・・・とうとうアリスお姉様も・・・寂しくなります。」
スミスは少年ながら遠い目をする。
「タケオ様、お姉様をよろしくお願いします。
それにしても求婚の指輪が王家の指輪とは・・・凄いですね。」
スミスはそんなことを言う。
「嘘でしょ・・・」武雄は顔を真っ青にさせる。
そんな大それた気持ちはない・・・というか。
アリスお嬢様は貴族、そして自分はなんとか平民・・・不釣り合いすぎる。
・・・かなり失敗した。
アリスお嬢様の未来を潰してしまったかもと思う。
「・・・アリスお嬢様・・・」
と武雄は申し訳ない気持ちでいっぱいで顔を青くしながらアリスを呼ぶ。
「タケオ様、何というお顔を。」
とアリスはにこやかに答える。
「こんなことになるとは・・・申し訳ありません。」
武雄は頭を下げる。
「?・・・何を謝るのです?」
「私が深く考えもせずに不用意にその指に指輪を・・・」
「タケオ様・・・私もタケオ様の指にしましたよ?」
「そう言われれば・・・しかし・・・」
「ふふ、平気ですよ。大丈夫です。
それとも私では満足できませんか?」
「何を言われるのですか・・・私にはもったいないくらいとても素敵な女性です。」
「ふふ、では、良いでしょう?
ということで、お爺さま。」
「うむ。双方の合意も取れた様だの。
しかし、タケオが来てまだ3日・・・もう少し待てなかったのかの?」
「本当に申し訳ありません。」
武雄はエルヴィス爺さんに頭を下げるのだった。
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