第46話 銃の対応方法と進化形の説明。
客間の雰囲気は重くなっている。
「と、まぁ、スミス坊ちゃんを軽く脅したのですが。」
「うむ、そうじゃの。」
「で、なんでしたっけ?
これを開発したアホは国の中枢にいないとの仮定でしたね。」
「アホって・・・」
アリスは苦笑する。
「アホですね。所属するコミュニティの為に動いていないのですから。
それに私が説明した方法は最初の1回のみ有効な戦略ですからね。
商売っ気もまったくない、もっと上手い売り方はあるでしょう。」
「はぁ。」
アリスはまたわからないという顔をする。
「相手がそんな兵器を持っていることがわかれば、こちらも同等の兵器もしくは対応方法の検討をするでしょう?
事実、戦争前に敵国に武器を流出して私の手元にあります。」
「確かにそうですわ。」
「対応方法は完璧ではないにしてもされたら滅ぼせません。
なので、このアホは政治中枢にもいないし、政治的なコネも弱いのでしょう。」
「うむ、そうなるの。」
「それに戦争になったら簡単ですが対応方法もありますから。」
「そうなのですか!?」
スミスは驚く。
「ええ、簡単です。
弾丸を消費させます。」
「・・・ええええ・・・それだけですか?」
スミスはガッカリする。
「はい。楽ではないですが、とっても簡単でわかりやすい方法です。
1.敵の小銃隊を王国の深くまで進攻させる。
2.小銃隊の備蓄を使わせる。
3.後方からくる輸送隊を徹底的に叩く。
これで負けません。」
「うむ、簡単だの。」
「ええ、戦術の基本でしょう。ただし、国や軍を率いる者は苦渋の決断をしますが。
・・・今の所、そのぐらいしか思いつきませんね。」
「え?なぜ苦渋の決断なのですか?」
スミスは聞いてくる。
「相手の戦線を伸ばすために深くまで侵攻させる・・・
つまりは、それまでに何個の村や街を犠牲にできますか?
と、これを提案する者は聞いているのです。」
「・・・あ・・・」
スミスは再度落ち込む。
「それに、後方の輸送隊に攻撃を仕掛ける部隊ですが、
守っているのは小銃を持った小隊ですよ?
軍のトップはその攻撃に参加する者に「死んで来い」と言わないといけません。
それも・・・精鋭しかその攻撃はできないでしょう。
相手の目を潜り後方に展開するのですから・・・」
エルヴィス爺さんとフレデリックは頷く。
「まぁ、初戦で負けない戦い方は以上ですね。
それに、後方を叩けば叩くほど、戦争は終結せざるを得ません。」
「そうなのですか?」
「小銃の弾丸・・・これ、工業製品ですよ。
いくら大量生産できるにしても限度があるのです。
生産が追い付かないのであれば、戦争を終結させる方向に向かうでしょうね。」
「うむ、なるほどの。」
「ええ。ですので、私の中では当分、この国は滅びません。」
「当分ですか?」
アリスは不安そうに聞いてくる。
「ええ、当分です・・・と言ってもあと何年、何十年間は。」
アリスはホッとする。
「ただ・・」
「まだあるのですか!?」
アリスは睨みつけてくる。
いや・・・睨まれても・・・と武雄は思う。
「このアホが私と同等の知識ならこの銃の進化形を知っています。
それが恐ろしいですね。」
「そんなに怖いのかの?」
エルヴィス爺さんは聞いてくる。
「・・・昨日、トレンチコートの説明時に私のいた世界の大戦の話をしましたが、覚えていますか?」
「うむ。おびただしい数の死傷者が出たのじゃったな。」
「この小銃で出来ると思います?」
と武雄は小銃を手に聞く。
「あ・・・不可能な数かと・・・それも期間が短かった気が・・・」
アリスは悲しそうに言う。
「この銃の進化形を話しましょうか。
この銃の補給以外の欠点は何でした?」
「・・・発射間隔が・・・まさか・・・」
「ええ。連射が可能な物ができます。
この小銃の開発から100年後には、毎秒20発という驚異的な物が登場します。」
「「「「え?」」」」
「タケオ・・・そんなにいきなり進化するのかの?」
「100年はかかりましたよ?」
「うむ・・・で、どうなるのじゃ?」
「結局、この武器に対抗するには近づいて壊すしかないのですが、物陰から顔を出しただけで弾丸が飛んできます。
そこでどうやって近づくかと考え、地面に穴を・・・縦穴を掘って少しずつ近づく方法が考案されます。」
「そうじゃの。」
「平地に穴を掘る・・・衛生環境は最悪になります。
雨が降れば水が溜まり、排出もままならない。ネズミや害虫はそこら中に・・・」
「なるほど。それであのトレンチコートですね。」
フレデリックは頷く。
「ええ。腰ベルトと袖口を閉められるのは、防寒だけではなく害虫等の侵入も防ぎます。」
「・・・聞けば聞くほどタケオのいた世界の戦争は凄惨だの。」
「さて、この縦溝戦法ですが、どうやればもっと簡単に敵地に行けるかと考えた人がいます。
そこで考え付いたのが・・・全面鉄板張りの自走式の馬車ですね。」
「自走式?とはなんじゃ?」
「馬によらない機構で動ける様にしたものを作り出したのです。
それの発明でその乗り物は兵士数名を乗せて弾丸が飛び交っている戦場を縦横無尽に走り回ります。」
「戦況が一変するの。」
「で、その鉄板の馬車をどうやったら仕留められるかと考えた人がいます。
その人は弾丸を大きくしようと考え付くのです。
そうやって防御力を高めると攻撃用の弾丸も大きくしていく様になっていきました。」
「うむ。それが進化か・・・」
「はい。私のいた世界では、一つの弾丸で街1つを蒸発させる物もありましたよ?」
「・・・凄まじいの。」
「私のいた世界の国は、各々がそういった兵器を持つことによって、相互警戒をするようになったのです。
相手を滅ぼせる戦力はあるが、したらこちらも甚大な被害がでる。
だから戦争はしないでおこう、という考え方ですね。」
「なるほどの。」
「なので、このアホがどこまで作るのか気になりますね。」
ここまで読んで下さりありがとうございます。