第45話 武雄の懸念とは。
フレデリックは皆のお茶を変えていた。
「んー・・・タケオの不安に思ってる内容がわからんの。」
「ええ。タケオ様は何を不安に思っているのですか?」
エルヴィス爺さんとアリスは武雄に質問する。
「さっき、この小銃の成り立ちをざっくり説明しましたよね?」
「うむ。」
「銃の発明からこの形状、方式になるのに私がいた世界で550年かかったと言いましたよね?」
「言いましたわ。」
「おかしくないですか?」
「何がです?」
アリスはわからないという顔をする。
「なるほど。言われてみるとおかしいですね。」
フレデリックが皆にお茶を出し終わったのか答えてくる。
「やっぱりおかしいですよね?
あ、この話は長くなりそうなので、フレデリックさんも座って話しましょう。」
「うむ。フレデリックも座って加わってくれるかの?」
「では。」
とフレデリックも座って話に加わる。
「で、フレデリック、おかしいとは?」
エルヴィス爺さんが聞く。
「ええ。タケオ様が感じる違和感。
たぶん情報ですね。」
「はい。魔法がないところですら進化は550年かかりました。
この世界は魔法という便利な物があるのです。
進化はもっとかかっていいはずなのです。
それに、長い間開発していると、隣国にその噂が来ていても不思議ではないのです。
ですが、それすらもない・・・おかし過ぎます。」
皆が考える「確かに変だ」と。
「で、私が出した仮定が・・・懸念の内容になりますが。
私と同等の知識を持った者がカトランダ帝国に居るのではないですか?
もしくは、天才が現れたか。」
「「「「え?」」」」
「兵器の知識と発想については、私以上でしょうね。」
「そ・・・それは脅威です・・・」
アリスは驚きを隠せない。
「はい。タケオ様の発想は僕たちからは奇抜すぎます。
それがもう一人、それも敵国に・・・」
スミスは不安そうな顔をする。
「うむ・・・それは脅威だの。」
「ただし、これも仮定ですが、その者は国の中枢にはいないのでしょうね。」
「なぜです?」
スミスが聞いてくる。
「実戦投入されていない節があるのです。
もし、私が国の中枢にいる人間で開発したなら、準備を完璧にして、隣国に攻め込み、滅ぼします。
情報統制もある程度強固にしてね。
まぁ、わざと戦争をするよくらいの情報は出しますが。」
「・・・恐ろしい事を考えるの。」
「戦略の基本でしょう?」
「なぜ滅ぼすのです?」
スミスは疑問を口にする。
「下手に相手国の主要な人間を生き残らせると反乱されるでしょう?」
としれっと武雄は言う。
「「え?」」
アリスとスミスは驚く。
「相手国を治めるという考え方が、誰に言われたのか分かりませんが、甘いのです。
もっと簡単に支配する方法があるのに。」
エルヴィス爺さんとフレデリックは頷く。
「その・・・方法はなんですか?」
アリスは恐る恐るきいてくる。
「・・・言いたくありません。
考えただけでムカつきますから。」
武雄はアリスの質問に答えるのを拒否する。
「うむ・・・わしもそうだがの・・・
スミスも居るしの。上に立つ者としては、この考えを知っておかないといけないと思うのじゃが。」
「・・・それはわかりますが・・・エルヴィスさん、説明して貰っていいですか?」
「うむ、わしが適任じゃろうの・・・スミス。」
「はい。」
スミスは背を正して返事をする。
「敵国を打ち負かして簡単にその地を治める方法はわからんか?」
「はい・・・わかりません。」
「うむ、教育的にも教えないからの。治政は学ばせるが・・・
その方法は奴隷国家の建国じゃよ。」
アリスとスミスは絶句する。
武雄とフレデリックは目を閉じて聞いている。
「そんなの・・・酷いです。」
アリスは顔を青ざめさせながら呟く。
「うむ、酷いの。
だから上に立つものは、自分の領土がそうならない様に知恵を絞るのじゃ。
どうやったら負けないかとな。」
「・・・そうなのですか。」
スミスも顔を青ざめさせながら言う。
「うむ。それにしてもタケオ、お主をわしの元に置いておいて良かったと心底思うぞ。
その考え方が出来てしまうのであれば他の所に行っていたら洒落にならん。」
アリスとスミスは無言で頷く。
「はは、それは褒められていると受け取りますよ。
では、ちょっと補足しましょうか。」
と武雄はスミスに顔を向ける。
「スミス坊ちゃん、この話はもっとも悪い事態を想定した時の物です。
実際は治政を敷くでしょうね。」
「そうでしょうか?」
「ええ。国を一から作るのは大変でしょう?
ならば国の幹部のすげ替えをして住民等々はそのままにします。
あぁ、ただし重税は課されるでしょうね。」
「え?どのぐらいですか?」
「そうですね・・・まぁ簡単に考えれば3倍でしょうか?」
「そ・・・それでは生きていけません!!」
スミスは抗議する。
「でしょうね。ですが、反乱をするなら鎮圧されます。
それも見せしめの意味も込めて、根絶やしで。」
「うぅ・・・最悪です。」
スミスは落ち込み始める。
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