第43話 銃の歴史。
「あとは、タケオ様が見つけた武器ですね。」
アリスは武雄に目線を送る。
「そう言えば、昼過ぎに魔法具商店から木箱が来てましたね。」
とフレデリックは一旦退出し、すぐに木箱を持って戻ってくる。
木箱が机に置かれる。
武雄は中から小銃と弾丸を取り出し、机に置く。
木箱は部屋の隅に移動させた。
「コレがタケオ様が見つけた武器ですね。
確か『ショウジュウ』と言いましたか?」
「ええ、合っていますよ。」
「うむ・・・で、コレは何なのじゃ?」
「ちなみに、確認の為に聞きますが。
アズパール王国には『銃』と言う物はあるのですか?」
「聞いたことがないの。」
「私もありませんね。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが揃って知らないなら、少なくともこの近隣では知られていないのだろうと武雄は考えた。
「・・・そうですか。」
武雄は難しい顔をする。
「タケオ、悩む前にわしらに説明をして貰えるかの?」
「ええ、そうですね。これは小銃といって、弾丸を飛ばし、相手に当てる兵器になります。
魔法具商店の店員の話では、カトランダ帝国製で魔法適性が無い人でも遠距離攻撃が出来る様に開発されたとのことでした。」
「でも、一発ずつじゃし、発射間隔が長いから使えそうもないの。」
「・・・」
「ん?どうしたのじゃ?」
「いえ・・・兵器の・・・歴史の転換期とは怖い物だなと・・・」
「ちょ・・・ちょっと待て。これはそれほどの威力があるのか?」
武雄の呟きにエルヴィス爺さんは答えたが、他の3名も驚きを隠せないでいる。
皆、一様に「こんなものが?」との認識だからだ。
「いえ、これ単体には、そんなに威力は無いでしょう。
この鉄を飛ばすだけですし。」
と武雄は弾丸を手に言う。
「・・・私は専門家でもないし愛好家でもないので、正確な認識とは言えませんが・・・私のいた世界の話をしますね。
私が居た時代から750年くらい前に筒に鉄球を入れて筒の端部を爆発させて、その威力で鉄球を飛ばすという発明がありました。
まず発射口から筒の底に爆薬を引いてから球を仕込むという物なのですが。
紆余曲折があり、この小銃くらいの大きさに進化したのが、発明後300年です。
その時も発射口から爆薬を入れ、球を入れてから撃つという方式だったはずです。
さらに250年後。この弾丸の様に元から球と爆薬が一体になっている銃が開発されます。」
「うむ。その形状になるのに550年もかかったのか。長いのぉ。」
「銃が開発される前の2200年以上は剣と弓ですから・・・割と早いのではないでしょうか?
で、発明から550年の間、発射口から爆薬と球を入れる方式でしたが・・・
スミス坊ちゃん、この方式の欠点はわかりますか?」
「え?・・・そうですね。詰め込むのに時間がかかるのと爆薬の精度が必要なことでしょうか?」
「そうですね。アリスお嬢様、他にあると思いますか?」
アリスは机の上の弾丸を手に取りながら考える。
「あ。・・・雨に弱い・・・ですか?」
「正解です。それに発射口から入れるので、銃を斜め下に向けすぎると球が出てくるという欠点もあったと言います。」
「ぷ。それは兵器としてどうなのです?」
とスミスは笑う。
「ええ。そこだけ見ると大きな欠点でしょうが、ある戦いでそれを上回る戦果が出せたのです。」
「わからんの・・・どうやるのじゃ?」
「量です。」
「ん?当たり前のことなのじゃが・・・」
「ええ。とっても当たり前すぎてどうしようもないですね。
例えば、戦場で銃を配置する場所を事前に決めておきます。
そこは平地であり、テントを張って雨が降っても影響が無いようにします。
そして、敵をこの地に誘い込む様に誘導するのが、騎馬や兵士です。
上手く負け、逃走している風を装います。
敵を平地に誘い込んだのちに、4人一組になり4つの銃を使い、連続的に撃ちます。」
「連続で打つじゃと?」
「正確には、割と早い間隔でですね。
4人一組とは、撃つ役、爆薬を込める役、弾丸を込める役、撃つ役に銃を渡す役の連携で行います。」
「なるほど。でも戦果とはどういう事じゃ?」
「それが200組いたらどうします?」
「・・・負けじゃな・・・」
「ええ。追撃に来た部隊は全滅しますね。
それに大体追撃に来るのは精鋭だったりします。」
「・・・そうじゃの・・・」
「精鋭部隊をなくした軍は敗走し、国家存亡の危機に。
という感じで勝利の立役者になるわけです。」
「うむ。」
「この銃は、その欠点を克服した物になります。」
「雨でも撃てて、斜め下にも撃てる・・・ですか?」
アリスは真面目に回答してくる。
「ええ。
さらに、携帯がしやすくなるので、それまでの待ちの戦法から少人数での作戦行動が出来る様になります。
戦術の幅が広がる訳です。」
「なるほど。歴史の転換期か・・・言われると納得するの。」
とエルヴィス爺さんは難しい顔をするのだった。
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