第412話 野宿場所で出逢いと遭遇。
「親方、皆元気ですかね?」
可愛らしさが残っている女性が初老の男性に聞いている。
「あぁ、あいつらが元気でないのは見たことないがな。
それより村に置かせて貰えて何よりだ。
あいつらは一通り武具が作れるし、少し早い気もするが独り立ちの良い機会になっただろう。」
「あとは私と親方だけですね。」
2人は焚き火を囲みながら話している。
「はぁ、私達も早く住む場所を選ばないといけないですね。」
女性はお茶を見ながら呟くのだった。
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武雄達は街道をのんびりと移動している。
「さて、今日の野宿の場所が見えましたね。」
武雄が少し遠くを見ながら言う。
「はい、順調ですね。」
マイヤーも頷く。
「ご主人様、先客が居るようです。」
ジーナも遠くを見ながら言う。
「・・・ジーナ、後ろに行ってミアを救助してきてください。」
「はい、わかりました。」
ジーナは歩調を緩め後方にいる、エリカの下へ向かう。
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「エリカ殿、ミア殿を返してください。」
「もう少し良いじゃない?」
ジーナが言ってくるが、エリカは楽しそうに答える・・・ミアはグッタリとしていた。
「ご主人様がミア殿を呼んでいます。」
「・・・なら仕方ないか・・・」
エリカが渋々ミアをジーナに渡す。
「では。」
ジーナが早足に先頭に戻っていく。
「・・・無愛想ね。」
「今日初めて会ったのに愛想が良くても困ります。」
エリカの呟きにカサンドラが呆れる。
・・
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「ご主人様、戻りました。」
「はい、ご苦労様。
ミアは?」
「ここに。」
「主、当分あっちには行きたくありません。」
ミアがジーナの手の平に座って疲れきった表情で言ってくる。
「夕飯時よりは良いでしょう?」
「・・・まぁ・・・でも当分行きたくありません。」
ミアは苦渋の顔を作る。
「わかりました。
ポケットで寝ますか?」
「はい。」
ミアが武雄のポケットに滑り込んでくる。「やっぱりここが一番です。」と呟きが聞こえてくる。
「さて、もうすぐ今日の野宿する所ですよ。」
武雄達一行は開けた場所を目指す。
・・・
・・
・
野宿の場所には2人組の旅人・・・若い女性と初老の男性が焚き火を囲みながらのんびりとしていた。
2人は遠くに陣取っているので武雄は軽く会釈をして広場に入っていき皆も武雄に続いて入ってくる。
そして各々が馬を休ませてから武雄に近づいてくる。
「キタミザト殿、全員着きました。
異変や故障等もありません。」
アーキン達4名が報告してくる。
「いや~初日から飛ばしすぎじゃの。」
「爺ちゃん・・・これでも馬に比べればゆっくりよ。」
「父ちゃん、食材はどうする?」
「そうだな。キタミザト様、今日の夕飯はどの食材を?」
「あ、私達の分もあるのかしら?」
「お金をいくらか入れた方が良いですかね。」
各々がしゃべりだす。
「・・・マイヤーさん。」
「はい、キタミザト殿。」
「人数が多いとややこしいですね・・・」
武雄はため息を付く。
「行軍はもっと面倒ですよ?」
マイヤーが武雄の言葉にため息を付く。
「はぁ・・・とりあえず幌馬車組はかまどの準備。
馬組は個々のテントを作るのと薪を拾ってきてください。
エリカさんは薪を拾う必要はありません。」
「はい、わかりました。」
アーキンが答えるとエリカ以外の各々が作業を開始する。
「で?タケオさんは何をするのです?」
エリカが聞いてくる。
「ん?・・・最重要任務の湯浴み場を作ります。」
武雄が苦笑しながら言うが・・・エリカは「それ重要?」と不思議がる。
「あの!」
と、先に来ていた2人組の女性の方が武雄に声をかける。
武雄が皆と話している時に近寄って来たみたいだった。
「はい、なんでしょうか?」
武雄が普通に返事をする。
「あの・・・あそこに居るのはシントロンさんとビセンテさんではないですか?」
女性が恐る恐る聞いてくる。エリカが女性の顔を見て「あれ?どこかで?」と首を傾げる。
「ん?あの人達の知り合いですかね?
エリカさん、2人を連れてきてください。」
「お爺ちゃんとおじさんね!
わかったわ。」
とエリカが小走りに呼びに行く。
・・
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「スズネちゃんじゃないか!」
「おぉ!小娘元気じゃったか!?」
アレホとボリバルが驚きながら近寄って来る。
「お2人の知り合いですか?」
武雄がどちらにも聞く。
「あ!はい。
キタミザト様、この子はスズネ・タキノ。
ステノ工房の職人です。
スズネちゃんが居るってことは皆も?」
「ほぉ。」
武雄は一瞬目を細めるが誰も武雄を見ていなかったのでわからなかった。
「いえ・・・違います。
あ、親方を連れてきます。」
とスズネが一旦離れるのだった。
・・・
・・
・
工房の主人達が車座になり話し込んでいた。
武雄は当初の目的通りに湯あみ場を作成中。
エリカは武雄の邪魔をしていた。
「ほぉ、じゃあ皆も追い出されたのか。」
初老の男性がアレホとシントロン爺さんに言う。
「あぁ、フリップさん達が立ち退いた後も続きまして。」
「で?なんで2人が一緒に動いているんだ?」
「あぁ、キタミザト様はアズパール王国の方で。
我々にアズパール王国に来て懐中時計を作ってくれないかと仰っていただいて。」
アレホが言う。
「ほぉ、懐中時計をか。」
「ええ。で、カトランダ帝国に居ても我々では再起が出来ないだろうと考えて話に乗ることにしたんですよ。」
「第3皇女殿下もお亡くなりになった・・・あの町も益々規制が増えるだろうしの!
わしもサリタも向こうで一旗揚げるつもりじゃよ。」
シントロン爺さんが笑いながら言う。
「え?第3皇女殿下?亡くなった?」
フリップが遠目にエリカを見ながら言う。
「あぁ、フリップさん達が出て行ってから発表されていたよ。
あの町は大規模再開発をするそうだ。」
アレホがシミジミと言う。
「そうか・・・」
フリップが厳しい表情をする。
「フリップさん達はこの後はどこに?」
「いや・・・俺らはまだ決まってないな。」
「フリップよ、わしらと行かんか?」
「アズパール王国にか?」
「そうじゃ。少なくともキタミザト様は小銃も懐中時計にも理解がある。」
「爺さん、小銃の事を話したのか?」
フリップが厳しい顔つきで聞いてくる。
「話したには話したんじゃがな。
そもそもキタミザト様がカトランダ帝国に来たのは小銃の開発者を引き抜く事が目的だったらしいのじゃ。」
「あの方は小銃を知っているのか?」
「ええ、小銃を見て開発者が苦境に立たされていたら引き抜こうと考えていたそうです。」
「ふむ・・・そうなのか。」
フリップが腕を組んで悩む。
「わしらはカトランダ帝国に見切りを付けてアズパール王国の・・・いや、キタミザト様の下で再起をかける事にしたんじゃよ。
少なくともあの方は商品をちゃんと見てくれると思うのじゃ。」
「そうか・・・スズネと話をさせてもらう。」
フリップはスズネの方に歩いて行くのだった。
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