第411話 武雄達出発。エルヴィス邸に組合長達がやって来る。
9時課の鐘が鳴っている。
町の入り口に数人の人が集まっていた。
「・・・早く集合してしまいましたね?」
武雄が横に居るマイヤーに聞く。
「そうですね。
今、再度の積み荷確認をしています。」
「キタミザト殿、積み荷忘れはありません。
また食料も16人を5日賄える量があります。」
アーキンが報告してくる。
「関までは持ちそうですね。」
マイヤーが頷く。
「・・・まったく・・・14人しかいないのに・・・
マイヤーさん、言いましたね?」
武雄がマイヤーに言う。
「ええ。人数が多くなるならその準備は必要でしょうから。」
「・・・まぁ、そうですね・・・良いでしょう。
全員騎乗、アズパール王国に帰還します。」
「出立!」
マイヤーの号令で武雄達の帰路の旅が始まるのだった。
・・・
・・
・
しばらく経ち東町が見えなくなった頃。
「あら?タケオさん、奇遇ね。」
街道沿いにエリカとカサンドラが騎乗して待っていた。
「おや?こんにちは。
エリカさん達も旅を?」
先頭を行く武雄が止まり挨拶をする。
「はい、アズパール王国までね。
付いて行きますけど良いかしら?」
エリカがしたり顔で言ってくる。
「エリカさん達の意思で旅をしているのでしょう?
天下の往来を行くなとは言える立場に私はいませんよ。
人数が多い方が楽ですが・・・緊急時は私の意見を尊重してくれるなら良いですよ。」
「大丈夫、そっちの方が人数が多いのだし従うわ。」
エリカが楽しそうに言う。
「わかりました。
では、同行を許可します。
マイヤーさん、配置を決めてください。」
「はい。
先頭はキタミザト殿と私とヴィクター殿とジーナ殿。
幌馬車を挟んで最後尾にアーキン達とエリカ殿達でお願いします。
アーキン、後方の指揮はお前が行え。」
「はっ!」
アーキンが返事をする。
「こっちもわかったわ。」
エリカが返事をし、カサンドラが頷く。
「では、出立!」
マイヤーの号令で皆が移動を始める。
「ミア、皆さんに挨拶してきなさい。」
武雄が自身のポケットに向かって呟く。
武雄達の帰路の旅が余興から始まるのだった。
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「~♪」
エルヴィス爺さんとフレデリックが客間で楽しそうにお茶とバターサンドを楽しんでいる。
と、客間の扉がノックされる。
エルヴィス爺さんが入室の許可を出すと執事が扉を開け入って来る。
「失礼します。
仕立て屋組合長と副組合長様が参られました。」
「うむ。」
「伯爵様、失礼いたします。」
組合長とラルフ店長が入って来る。
「うむ、戻ったか。」
「はい、昼過ぎに戻りました。」
「王都はどうであったのじゃ?」
「はい。噂通り人・物・金が集まっているのがわかりましたが、あまり魅力はありませんでしたね。」
「そうなのかの?」
「ええ、キタミザト様が言われる通り面倒な事も多そうに感じました。」
「うむ・・・そうか。
タケオ達には会ったかの?」
「はい。お会いして王都の組合とも打ち合わせを行い当初の案の通りに進む運びになりました。」
「順調じゃの。」
「はい。」
「これでエルヴィス家とウィリアム殿下の兵士達分の2箇所と王都の仕立て屋向けの受注が決まり契約も取れました。
早い段階で生産を始めないといけません。」
「うむ。
今の所、街南と街北と農地案が出来ておる。
わしとしては街南と街北案は現在ある建物を改修して2棟か3棟をそのまま使うか一旦更地にしてから建物を建てるかだと思っておる。」
「はい。」
「一応、年を越してタケオが戻ってからプレゼンを開催する予定なのじゃが、仕立て屋組合としてはどう考えるかの?」
「我々としては今すぐにでも用地を選定し、従業員の面接に臨みたいと考えています。」
ラルフ店長が答える。
「ふむ・・・
タケオがまだ帰って来ないがプレゼンをするかの。」
エルヴィス爺さんが思案する。
「キタミザト様が不在でもよろしいのでしょうか?」
組合長が聞いてくる。
「構わぬと思うの。
仕立て屋組合の為のプレゼンなのじゃ。
本人達がやりたいのなら今が好機じゃ。
タケオを待っていたのでは好機を逃してしまう可能性はあるの。
タケオにはその旨を手紙で知らせておく。」
「わかりました。」
組合長が頷く。
「プレゼンは4日後にしようかの。
場所はうちの広間でやろう。」
「4日後ですか?」
「うむ。
うちの文官やバーナードとカーティスにも準備が必要じゃろう。
それにお主らもどのくらいの費用がかけられるのか。
組員やラルフの資金も考えないといけないだろうしの。」
「畏まりました。
では4日後という事で。」
「うむ、よろしく頼む。」
と、組合長とラルフ店長が退出して行く。
・・
・
「フレデリック。」
「はい、畏まりました。
うちの文官や兵士長そしてバーナード殿とカーティス殿に連絡を入れます。
またレイラお嬢様宛にタケオ様にプレゼンを実施する旨をお伝えして貰えるよう依頼の手紙をお送りします。」
「うむ、頼むの。」
エルヴィス爺さんが頷くのだった。
「さて、街が変わろうとしておるの。
どう変わるのか・・・はたまた変化しないのか・・・」
エルヴィス爺さんが楽しそうにお茶をすするのだった。
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