第407話 34日目 武雄の散策とアリスのアルバイト。
朝食を取った武雄とミア、マイヤー、ヴィクター、ジーナはアーキン達と別れて本屋に来ていた。
「・・・これも良いなぁ。」
武雄は中を軽く見た本を隣にいるジーナに渡す。
「キタミザト殿、こっちは決め終わりました。」
マイヤーとヴィクターが戻ってくる。
「はい、ご苦労様です。
ちゃんと見つかりましたか?」
「はい、言われた通り戦史を中心とした歴史そして魔法関連物を選びました。
それにしてもあそこまで私が習った歴史と違うとは思いませんでしたね。」
マイヤーがため息をつくとヴィクターも頷く。
「主観によって歴史は捉え方が違いますからね。
筆者の立場や文化によって同じ物を見ても感想が違うのはしょうがないでしょう。」
「そういうものですかね・・・
キタミザト殿は地理や文化でしたが・・・どうですか?」
マイヤーがジーナを見ると4、5冊抱えていた。
ちなみにヴィクターとジーナは荷物持ちをしている。
種族的な特性で人間種よりも高出力なのだそうだ。
ヴィクターに説明された武雄が簡単に「じゃあ、お願いします。」と頼んでいた。
「地理については周辺諸国が載っている全体図と国土を10分割した物があったのでそれを選びましたよ。
文化は伝承やら旅行記ですかね。
あとなんか武具特集が組まれている本がありましたからそれも選びましたね。」
「武具ならうちので良いのではないですか?」
「ん?・・・そう言われればそうですね。
じゃあ戻しますか。」
と、武雄がジーナが持っている本から対象の本を抜き取り本棚に戻す。
「マイヤーさん達が選んだのと合わせると10冊ぐらいですか・・・
じゃあ、また冒険者組合の事務所に行って送りますかね。」
武雄が呟く。
「わかりました。」
武雄達が移動を開始するのだった。
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「騙された・・・」
アリスは椅子に座って目の前の本の山を見ながら呟く。
事の発端は朝食後にレイラがアリスに「アリス達暇でしょう?本屋に行かない?お願い♪帰りに美味しい物食べましょう?」と誘ってきたことが始まりだ。
アリスもクゥも特にやることがないので「本屋に行ってみるか」と気軽に着いてきた。
店の前に来ればなぜか行列が出来ている・・・ついでにレイラもアリスも裏口から入店した。
アリスは最初「レイラお姉様が王家だからかな?」と何も不思議に思わずに裏口から入り、レイラから「アリス、ここが目的地よ」と指定された場所を見て悟る。
そこには「待望!鮮紅の冒険 第2弾発売記念イベント」と横断幕があったのだ。
「騙したなんて人聞きの悪い・・・お願いしたでしょう?
帰りに美味しい物いっぱい食べて良いから!」
アリスの隣に座っているレイラが苦笑している。
「本屋に行こうとは誘われましたが・・・コレはなんですか?」
アリスが訝しがりながら聞いてくる。
「この間のアリスとタケオさんの馴初めの初版が出来てね。
先着200名限定で第1弾と第2弾同時購入特典としてアリスの直筆サインをこの場で入れようかと。」
「私は聞いていませんけど。」
「今言ったわ。
実はねぇ、この間のエイミーちゃんがアリスにサインを求めたじゃない?アレを見てピンッ!て思ったのよ。
これは良い売り方が出来ると。」
アリスが若干睨むがレイラは気にしない。
「・・・クゥちゃんはどうするので・・・あれ?」
アリスが反対側の席に居るクゥを見ると大き目のインク台が用意され本屋の店員に説明されていた。
「クゥ様、まずはレイラ殿下がサインし、アリス様がサインしてからこの場に客が来ますので、手をこちらのインク台に置いてから本に手をおいてください。」
「きゅ。」
クゥが頷き、試しにポンとインク台に手を置いてからにその辺にあった紙に自らの手印を押す。
「きゅ?」
クゥが店員に「どぉ?」という顔を向ける。
「大変上手でございます、クゥ様。
今回は我がアズパール王国建国以来、初めて本にドラゴンの手印が押されるという貴重な物になります。
少し数は多ございますが、何卒、よろしくお願いします。」
と、クゥに店員が深々と頭を下げる。
「きゅ。
・・・きゅ?」
クゥが頷きアリスの方を向いて手を見せる。
「クゥちゃん、上手ねぇ。流石だわ。」
アリスはその可愛らしさに参ってしまう。
「ほら、クゥ殿もやる気になってくれているわ。」
「・・・謀られました・・・」
アリスはガックリとする。
「じゃあアリスも諦めがついた所でイベントを始めましょうか。」
「「はい。」」
レイラの一言で本屋の店員達が動き出すのだった。
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「発送の準備が終わりましたね。」
ヴィクターが武雄に言ってくる。
「ええ、王都の冒険者組合宛に本を送りましたよ。」
「ちなみにキタミザト殿。
ここに来る途中に少し寄った魔法具商店でなんの冊子を貰ったのですか?」
マイヤーが聞いてくる。
「あぁ、最新魔法具の冊子ですよ。それと今話題の最新武器情報を教えて貰いました。」
「最新武器情報???」
マイヤーが首を傾げる。
「ええ、何でも自動人形という商品の販売が噂されているらしいですね。」
「「自動人形??」」
マイヤーとヴィクターが揃って首を傾げる。
「人間大の人形で無機物らしいです。
なんか魔法師が頼んだことをするらしいのですけど・・・まだまだ情報が開示されないらしいです。」
「んー・・・自動人形・・・どうなんですか?」
マイヤーが唸る。
「さて・・・性能とがわからないと何とも・・・」
武雄はそう言い首を捻るが某映画のテーマ曲を思い出し「やっぱり筋肉隆々なのかなぁ?」と思うのだった。
「将来は戦場に出てくると思いますか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「・・・たぶん、指揮をする者にとっては兵士の命を考えない戦争は楽でしょう。
とりあえず近々の戦場に投入はないでしょうね。
それに1体の予想価格が金貨1000枚ですからね。」
「「「金貨1000枚!?」」」
3人が驚く。
「高いと取るか安いととるか・・・」
「いやいや、高いでしょう。」
マイヤーが言うと残り2人も頷く。
「ですが・・・熟練レベルの兵士が手に入るとしたら一兵士の養成期間中の費用や給与と比べてトントンな気もするんですよね。
それに熟練兵を増産するという目的自体は正しいですよね。」
「キタミザト殿は兵士の量が増えないから質で勝負、帝国は兵士の質より量で勝負・・・
キタミザト殿の真逆の考えなのでしょうか?」
「さて・・・真逆ではなく一歩先を行ってそうですが・・・
兵士の質と量の両方を兼ね備えている可能性はあります・・・どのくらいまでの完成度なのかが気になりますね。」
「完成度ですか?」
ヴィクターが聞いてくる。
「移動速度、攻撃力、思考形成、禁忌事項の徹底・・・考えればキリがないくらい、自動で動かす為に達成しないといけない事がありますよ。」
「はい。」
「初期試験品がどのくらいの精度なのか・・・まぁ今考えても意味はないですね。
戻ってから考えますか。」
「わかりました。
キタミザト殿、この後はどうしますか?」
「そうですね。
穀物屋に行ってみたいですね。
輸出入が自由になっているならもしかしたら面白い物があるかもしれません。」
武雄が提案に皆が頷くのだった。
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