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第406話 33日目 昨日もこんなだったよね。カトランダ帝国の政策。

夕飯も終わり、食器も若手4人が率先して片付けをした。

武雄とミアとタマはお風呂中です。

「・・・」

マイヤー達5人は何も言わずにお茶を飲んでいる。

「良いお風呂でした。」

武雄がチビッ子2名を両肩に乗せながらリビングに戻って来る。

ミアもタマも武雄に髪を乾かして貰ったようでサラサラしている。

「キタミザト殿、ミア殿、タマ殿、おかえりなさい。」

マイヤーがにこやかに言い、若手たちも頷いている

「「・・・」」

なぜか土下座しているヴィクターとジーナが居た。

「・・・何でしょう・・・昨日も同じような事があった気がしますが・・・・」

武雄が苦笑する。

「主、この度は拾って頂きありがとうございます!!」

「こんな美味しい食事は初めてでした!

 ご主人様、よろしくお願いします!」

ヴィクターとジーナが床におでこをぶつけてしまいそうな勢いで挨拶をしてくる。

「あぁ、はいはい。

 どれが美味しかったですか?」

「「全部です!」」

親子は揃って言う。

「まぁ・・・食事の風景を見ていたら薄々はわかっていましたが・・・

 喜んでもらえたようですね。

 椅子にちゃんと座りましょうね?

 と、ちなみにブルックさん。」

「はい。」

「プリンはどうでしたか?」

「最高でした!」

ブルックが満面の笑顔で答える。

皆の顔もにこやかになっている。

「こっちも平気でしたね。

 さて、明日の打ち合わせもそんなにないと思いますけど・・・

 アーキンさん達は明日は引っ越しの手伝いですね。」

「「「「はい。」」」」

「昼食は適当に取って来なさい。

 引っ越しの手伝いが終わり、一旦この部屋に戻ってから退去します。

 9時課の鐘前には戻ってきた方が良いでしょう。」

マイヤーが言う。

「「「「はい。」」」」

若手4名が返事をするのだった。

「キタミザト殿、我々はどうしましょうか?」

「私達は散策に行ってきます。

 本屋とか雑貨屋とか穀物問屋とか・・・

 もしかしたら2度とカトランダ帝国には来ないかもしれませんからね。

 色んな物を見たりしましょう。」

「わかりました。

 では、私達も9時課の鐘前に一旦部屋に戻りましょう。」

マイヤーがそう言い皆が頷くのだった。


------------------------

「あれ?・・・下着は入れたかな?」

エリカがリュックをひっくり返そうとする。

「エリカ様、何をしているのですか?

 折角入れたのに。」

「いや、下着とか入れたのか気になって。」

「入れました。

 何ですか、そんなにソワソワして。」

カサンドラがため息を付く。

「いや、何だか興奮して・・・アレも入れたかな?コレも入れたかな?と不安になってしまって・・・」

「越境許可証は無くしていないですよね?」

「ちゃんと上着のポケットに入れています!」

と、エリカが上着から出してカサンドラに見せてまた上着にしまう。

「冒険者組合のプレートは失くしていませんね?」

「はい!ここに!」

エリカが上着のボタンで留められるポケットから出してカサンドラに見せてまたしまいボタンをする。

「じゃあ、問題はないでしょう。

 最低限の物があれば越境できますから。」

「忘れ物とかあったら嫌だなぁと思ったんだけど・・・」

「そういった物は最悪向こうに行って買えば良いでしょう。

 無理に詰め込む必要はありませんよ。」

「・・・頭ではわかってはいるんだけど・・・」

「わかっていて出来ないのはわかっていない事と一緒ですね。」

「手厳しいわね。」

「もう何年の付き合いだと思っているんですか?」

「・・・5年くらい?」

「私がエリカ様付きになってからは途中離脱していますから4年半ですね。」

「そうかぁ、カサンドラの新婚は半年だったっけ?」

「ええ、新婚の時にウィリプ連合国への偵察で。

 エリカ様は結婚式の最中でしたね。」

「・・・普通、指輪の交換をした後に倒れますかね?

 初夜の前に未亡人って・・・私も運がないわ。」

「でもその後も婚礼の話はあったのでしょう?」

「あったわよ。

 でも一番上の兄が病に伏せたり、二番目の兄が演習中に死んだり、喪が明けたと思ったら一番上の兄が病死して・・・それに私の婚約者候補が何人死んだり病気したかしら・・・呪われているわよ、うちの家系。

 まぁそんなこんなで私は再婚もしないまま皇位の返上をして平民に降格。

 晴れて自由の身だわ。」

エリカが苦笑する。

「ですが・・・第4皇子殿下は平気でしょうか。」

「チコは上手くやるわよ。

 何だかんだ言っても後援組織がしっかりしているしね。」

「魔法師組合でしたか?

 第1皇子殿下や第2皇子殿下はどこが後援だったのですか?」

「一番上は将軍達だったわね。二番目は商工組合だったかな?」

「全部うるさそうな所ですね。」

カサンドラがため息をつく。

「まったくね。」

エリカもため息を付く。

「そう言えば、エリカ様。」

「ん?」

「タケオ殿ですけど、信用出来るのでしょうか?」

「さぁ?今の所は出来ないでしょうね。

 あっちからの詳しい情報はほとんどないのよ?」

「ええ、まぁ・・・そうですけど。

 アズパール王国の人間でこっちの職人を連れて行く事が目的で、騎士クラスの護衛を5名連れて行けるリーダー格。

 連れて行った人達を街の組合と話合いをさせられるコネも住む場所を提供出来る財力もある。

 ・・・商屋の息子ですかね?」

「かもしれないわね・・・掴み所があるようでない。

 来た目的とかは話すのに自身の事については何も言わない。

 逆にこっちの情報を渡し過ぎちゃったわね。」

「自分の直接の情報は出さずにこっちの情報を得る・・・賢いですが・・・」

「んー・・・騙すならもっと他にあると思うけど。

 例えば同行をあっちから切り出したりして・・・でもそれをしなかった。そして私からの直接の要求も断った。

 私と敵対するような関係にある者ではないのでしょう。

 むしろ私達にわかるとタケオさんが不利になる?・・・なんで不利になるんでしょうね。

 わからないわ。」

エリカがため息交じりに言う。

「タケオ殿の装備見ましたか?

 エリカ様と同じような剣を持っていましたが。」

「あぁ、この小太刀ね。

 一緒なのかな?・・・んー・・・私は気が付かなかったけど・・・

 それにしてもアズパール王国に行く前にフリップには挨拶をしておきたかったなぁ。

 まさか廃業しているとは思わなかったわ。」

「確かステノ工房の主人でしたね。」

「ええ。

 お忍びの際は良くお邪魔していたのよ。この町で唯一私の正体を知っていたしね。

 私がこの町を任されてからいろんなものを作ってくれたし。」

「この町は再開発がされると聞きましたが、エリカ様のご担当の町なのにですか?」

「正確には国の方針が決まり、町の再開発を開始するまでの間私が所管するという事だったのよ。」

「国の方針ですか?」

「カトランダ帝国は表立っては領土拡大路線は行っていないのよ。

 まぁアズパール王国にいちゃもんを付けるのは慣例ですからそこは置いておきましょう。

 ですが、皇族内では領土拡大は必要事項なのよ。」

「・・・将軍達が言い張っている事ですね?

 旧来の領土を取り戻すと言う。」

「違うわ。

 そもそもアズパール王国領土は正式にうちから譲渡されたものなのよ。合意文章がちゃんとあるわ。

 それでもうちの将軍達が暴走しないように宣戦布告しているだけよ。」

「え?・・・なぜ皆に言わないのですか?」

「・・・当時は良かったんだけどね。

 その後になってこの件で皇族廃止の機運が高まったことがあったらしいのよ。

 それ以来これを持ち出してはいないの。」

「・・・それもどうかと思うのですが・・・」

カサンドラが眉間に皺を寄せて言う。

「で、皇族の必要事項・・・それは農地確保の為の領土拡大。

 正確に言えばウィリプ連合国を攻める事が必要だと思っているの。

 それに合意を破ってアズパール王国に攻め入るのも出来るけど・・・決定的に兵力が足らないから割りに合わないのよ。」

「どうして農地が欲しいのでしょうか?

 今でも何とかなっていると思いますが・・・」

「何ともなっていないわ。

 カトランダ帝国は工業力を磨き上げ、物を売ってウィリプ連合国から食料を調達してきた・・・

 だけどね、このままの推移で人口が増えてしまうとあと20年、いや15年程度で今の輸入量では足らなくなるのよ。

 それがわかったのが10年前。再三ウィリプ連合国には輸入量の増加をお願いしていたんだけどね。

 何も対策を取られなかった・・・むしろ輸入量が減らされたの。

 だから父上達大幹部は昨年対ウィリプ連合国への戦争を決意したわ。

 その1弾目がこの東町の再開発よ。

 工房を統廃合し、大規模工房を作り安価な武器の製造を開始するわ。」

「安価な武器・・・ですか?逆なのでは?」

「ふふ、安価な武器で良いのよ。

 対ウィリプ連合国への輸出用だからね。」

「なぜ東町に?南に町が3つくらいありますけど?」

「1つ目は対アズパール王国用に作る新兵器開発工場と思わせる為。

 2つ目は・・・この町は工房が少ないからね。

 統廃合は反発を招くから反発が少ないであろう町が選ばれたの。

 ・・・ある意味でタケオさんは反発していた工房を数軒引き取ってくれるのでしょう・・・

 ステノ工房も拾って貰ったら良かったのにね。」

エリカが自嘲気味に笑う。

「エリカ様はなぜそこまでわかっていて皇位の返上を?」

「私が反戦派だからよ。

 『農地確保に戦争は不要』と言っていたのよ。

 結果的に父上が方針を決めたわ。一度決めたのなら国内に分裂の切っ掛けがあってはいけない。

 なら私は去るのみだと思ったのよ。」

「そうですか。

 だからアズパール王国へ?」

「ええ。ウィリプ連合国に居れば帝国が攻め込んできた時に私を盾につかう者がいるかもしれない。

 私は反戦派だけど、皇族の一員としては動き出したのなら完遂してほしいと思っているわ。

 戦争をするなら勝って終わって欲しい。

 そうすることで国民が生きながらえるのですからね。」

エリカは寂しそうに言うのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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