第403話 皆で打ち合わせ。エリカ達の決意。
武雄とマイヤーは小会議室でマッタリしていた。
他の者は男女別の湯浴み場に入って身綺麗にしています。
「キタミザト殿、先ほどの女性ですが。」
「はい。来ると思いますか?」
「さて・・・言葉尻をちゃんと理解すると来るかもしれませんね。
キタミザト殿がお連れすることはない。
だが、同行を完全拒否はしていない。来たいなら自己責任で。
・・・遠回しすぎますね。」
マイヤーがため息を付く。
「同行を完全拒否も出来るのでしょうが・・・
そうした場合、こっちの内訳も言わないといけないと思いますからね。
あの程度の拒否しかできないでしょう。」
「そうですね。」
「それにあのエリカさん、皇族だと思うのですが?」
「やはりそう思いますか?」
「カトランダ帝国は貴族制度を取っていない。居たとしても将軍のような高位の人なのでしょう?
高位の軍人や文官があのように若い女性というのも無理があるでしょうし、カサンドラさんが言っていたでしょう『エリカ様は貴族ではなくなっています』と。
若い女性で個人を示して貴族ではなくなったと名言され、政策には関わらないと宣言をして、すでに名前も変えて国外退去の越境許可書を貰っている・・・
それを聞いただけで皇族だと断定するのは早いのかもしれませんが、私は他の回答が思いつかなかったですね。」
「まぁ・・・そうですね。
私もそう思いました。
来たら来たで同行者として対応すればよろしいのですね?」
「ええ、天下の往来を行くなとは言える立場に私はいませんよ。
個人の意思で旅をしている人に何か言えますか?」
「そうですね。」
マイヤーが頷く。
武雄とマイヤーは皆が湯あみが終わるのをのんびりと待つのだった。
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「断られちゃったわねぇ。」
エリカが喫茶スペースでニコニコしながら言う。
「エリカ様、本当に断られたと思っていないでしょう?」
カサンドラがため息交じりに答える。
「ええ。
タケオさんは『私がお連れすることは出来ません』と言いました。
ですが、同行を絶対してはいけないのではなく、相手が出来ないから誘わないと言ったのです。
自己責任で着いてくるのは可という事でしょう?」
エリカが楽しそうに言う。
「はぁ、そうとも取れるかもしれませんね。」
「明日の9時課の鐘辺りで出発と言っていましたね。」
「今から用意をすれば問題ないでしょうね。
行きますか?」
「ええ、この国に未練はないですからね。
あっちで第2の人生を謳歌します。
カサンドラは平気なの?」
「私は・・・まぁこの国に居るのもエリカ様が居るからですからね。
元旦那の事もあります。
私もこの国に未練はありません。」
「ありがとう。
バツ1同士頑張っていきましょうね。」
エリカが楽しそうに言うのだった。
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「キタミザト殿、マイヤー殿、お待たせしました。」
小会議室の扉を開けてブルックがヴィクターとジーナを連れて入って来る。
最後尾を歩いていた残りの3名が小会議室の扉の前に椅子を置いて扉に遮音の魔法をかける。
「ミア、タマ、出ておいで。」
「はい、主。」
「ニャ。」
チビッ子達が武雄の前の机に座る。
ヴィクターとジーナも席に座る。そんなジーナから一歩下がった位置にブルックが立つ。
「さてと。ヴィクター、ジーナ。
改めまして、タケオ・キタミザトです。
今日からアナタ達の主です、よろしく。」
「「はい。」」
2人は返事をする。
「そうですね・・・アナタ達の出自を教えていただけますか?」
「はい。まず最初から少し否定が入るのですが。」
「はい、何でしょうか。」
「私達は氏名を書いたり名乗ったりがもう出来なくなっています。」
「へぇ、そういう物なのですね。
で?」
「はい。その辺は大回りして話をします。
よろしいでしょうか。」
「良いでしょう。では、始めましょう」
「はい。私はヴィクターと言います。
こっちは娘のジーナです。
共に獣人と呼ばれる魔物になります。
年齢は私が180歳、ジーナは42歳になります。」
「ふむ、獣人なのに外見が人間ですが?」
「はい。私達の種族は人間から狼に変身する型になります。
同じ獣人という括りでも変身しない者もいます。」
「なるほど。
種族的に何歳まで生きますか?」
「大体250年は生きるかと思います。」
「人間の3倍くらいと見れば良いのですね。
外見的な特徴はどうでしょうか?」
「はい。主の仰られる通り人間と比較した場合3倍の寿命があります。身体的な特徴も大体3倍長くなると思います。
ですので、人間換算をした場合、私は60歳程度、ジーナが14歳程度と見ていただければよろしいかと思います。」
「わかりました。
アナタ達は伯爵だったとミアから報告を受けていますが本当ですか?」
「はい、アズパール王国に面している所の領主をしておりました。
夕飯を取って寝て起きたら奴隷船の中でした。
妻は奴隷船の中で病死し海に亡骸を流しました。」
「そうですか・・・奴隷船とは過酷な物ですね。
なぜ奴隷船の中で狼に変身しなかったのですか?」
「この首輪の効力で変身や魔法等が著しく制限されていました。」
「今は出来ますか?」
「はい。ジーナ、なってみせなさい。」
「はい、お父さま。」
とジーナが席を立ち席の横で狼に変身する。
ジーナはタマの母コラよりも一回り小さく体長2mくらいの銀毛の狼になる。
若手4名が若干警戒をするが、武雄が席を立って近寄りいろいろ撫でまわす。
「ほぉ、フサフサですね。
触り心地も気持ちが良いですね。」
「・・・キタミザト殿。
いくら奴隷契約をしているからと言ってそう軽々しく触るのもどうかと思いますが・・・」
ブルックがため息交じりに言ってくる。
「ん?・・・そうですか?」
武雄はそう言いながらも撫でるのを止めない。
全身を撫でる。
「主、お尻を触っちゃダメですよ!」
いつの間にか机伝いに来たミアに怒られる。
「ニャ!」
タマも批判してくる。
「ん?そうなのですか?」
武雄がヴィクターに顔を向ける。
「ええ、普通は触ったりはしないと思うのですけども。
・・・娘はまだでして。」
ヴィクターが苦笑する。
「あぁ・・・それは失礼しました。
ついつい触り心地が良くてね。
ミア、タマ、触ってごらん。」
武雄がそう言うとミアとタマがジーナの背に乗る。
「おぉ!柔らかいです!サラサラです!
主の言う通り、触り心地が良いです。」
「ニャ♪」
チビッ子2名がジーナの背中が気に入ったようだ。
「堪能しましたし、席に戻りますか。」
武雄はミアとタマを連れて席に戻る。
と、ジーナも変身を止めて人間の姿になる。
顔が真っ赤です。
「さてと、ジーナ。お尻を触ってすみませんね。
性的な意味はありませんから。」
「はい!」
「と、そうだ。こちらも話をしておきましょうか。
私以外のこの5名はアズパール王国の王都守備隊隊員です。
わかりますか?」
「アズパール王国が誇る最精鋭部隊ですね。」
「はい、その認識で良いでしょう。
私はアズパール王国のエルヴィス伯爵家の所属になります。」
「「エルヴィス伯爵家・・・」」
ヴィクターとジーナが驚愕の顔をして呟く。
「どうしましたか?」
武雄が聞いてくる。
「・・・はい、私たちが拝領していた領地がエルヴィス伯爵領の隣なのです。」
「・・・そうですか。
何の因果か・・・まぁ奴隷契約が終わるまでは魔王国に越境はしてはいけませんよ?」
「はい、畏まりました。」
ヴィクターとジーナが頷く。
「じゃ、次は仕事についての話をしましょうか。」
武雄が説明を始めるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
気が付けばこの小説を書き始めて1年が経ちました。
最初は2、3か月続けばいいなぁと思っていたのに・・・かなり長編になっていますね。
これからもよろしくお願いします。