第39話 付けてしまってはしょうがない。対応策を考えよう。
武雄とアリスはエルヴィス邸に到着した。
玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、アリスお嬢様、タケオ様。」
「ただいま、フレデリック。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「私が考えていたより少し早いお戻りでしたね。」
「ええ、お爺さまに相談事ができてしまったの。」
「そうですか。」
「はい。ちなみにお爺さまはどこにいますか?」
「客間にて、お二人の帰りをお待ちです。」
「では、客間にいきましょう。
フレデリックも来ていただけますか?」
「畏まりました。」
とアリスと武雄とフレデリックは客間に向かった。
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客間のドアをフレデリックがノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
「主、アリスお嬢様とタケオ様が戻られました。」
アリスと武雄も入室する。
「お爺さま、戻りました。」
「エルヴィスさん、戻りました。」
「アリス、タケオ、おかえり。
・・・少々早くないかの?」
とエルヴィス爺さんは残念そうに言った。
「なにを残念そうにしているのですか?」
とアリスは爺さんに突っ込む。
「いや・・・折角のデートじゃし・・・
まだ9時課の鐘が鳴ったくらいじゃし・・・
もう少し暗くなってから・・・ドキドキ、ワクワクのイベント事があっても良いじゃろ?」
「・・・お爺さま・・・」
武雄はアリスの斜め後ろに立っているため、アリスの表情は見えていない。
エルヴィス爺さんから「ヒィ!」と声が漏れる。
見えていないが、想像は出来る。
スルーするか・・・と武雄は思った。
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「で、これがその指輪とな?」
エルヴィス爺さんは手に持って眺める。
アリスが事の経緯を爺さんに語っていた。
「ふむ、その『威光』と言うのは知らんかったのぉ。」
「はい。私も店員の言葉を聞くまで知りませんでしたね。」
アリスは言う。
「王都にそのことを告げれば、最悪はその指を落とせと言われかねぬの。
それにその店員にも悪いことをしてしまうの。
さっきの説明では、超がつく元エリートじゃぞ、その店員。」
「でしょうね。」
武雄はしれっと言う。
「タケオ、あまりオドオドしとらんの?
怖くはないのかの?」
「いや、凄く怖いですよ?
アリスお嬢様は平気でも平民の私は間違いなく指が無くなるんですからね。」
「ふむ、でも怯えておらぬの?」
「ええ、いざとなれば家出しますから。」
「タ・・・タケオ様!??」
アリスは驚く。が、
「その際は、屋敷の前に部屋を借りようかな?くらいは考えています。」
「ふむ。遠くには行かんのか?」
「遠くに行けば捕まるでしょう?
ならば近くにいた方がわかりやすいですし、なにより私は別にエルヴィスさんと敵対して家出するわけではないですからね。
王都から誰か来て事情聴取されても、その間隠れていれば問題ないでしょう?」
「その通りじゃ。アリス、タケオ、お主らを守るぞ。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
アリスと武雄は返事をする。
「で、じゃ。
タケオはどういうシナリオを考えておるのじゃ?」
「そうですね。正直に
『アリスお嬢様が店で不思議な小箱を見つけた。
いろいろ弄っていたら中から指輪が出てきて面白半分に付けたら取れなくなってしまった。
残りの1個を良く見ると王家の紋章が刻まれていて困っている。
この指輪は何ですか?』
と王都の王家に近い知り合いにでも聞いてみますか?
あとはその知り合いが勝手に動くでしょうし。
そんな相手はいますか?」
「ふむ・・・レイラに頼むかの」
「お姉様ですか?」
「アリスお嬢様に姉妹が?」
「はい。王都には嫁いだ姉がいるのです。」
「うむ。基本的にはタケオが言った内容を送ることにするが、
表書きと裏書きを作る。
あとはなるようになるじゃろ。
タケオは一応、避難部屋に目星をつけておくのじゃ。」
「わかりました。」
武雄は了承する。
「私もレイラお姉様宛に手紙を書きます。」
とアリスは自室に戻っていった。
「フレデリック、レイラ宛に伝令を走らせる。
ハロルドに言って2、3名選出させるのじゃ。」
「畏まりました。」
とフレデリックは退出したが、すぐに戻ってきた。
「アリスお嬢様が丁度居ないので、内密のご報告を。」
「うむ。」
「先ほどの散策でアリスお嬢様が私から離れたスキに、
街の兵士で小隊長をしているトマスという人物から声をかけられました。」
「うむ・・・フレデリック。」
「はい、存じております。」
「内容は、明日の昼過ぎに城門の兵士詰め所に来て、アリスお嬢様との関係を説明する様にとの事でした。」
「うむ。アリスは屋敷に待機じゃの?」
「はい、一人で来る様にと・・・出頭命令ですね。」
「うむ。タケオ、どうするのじゃ?」
「私としては、行くと言ったので行ってきます。
ただ・・・」
「ただ?」
「顔に青アザくらいは覚悟していますので、戻ってきた際に治療してもらえればと。」
「うむ。その旨は、わしらに伝える旨は言っておるのじゃな?」
「はい。エルヴィス家が私の雇用先で、家の者に私の外出先を伝える旨の説明はしています。
ですので、命は安泰かと・・・」
「うむ。アリスにバレない様にしないといけないの。」
「では、私は荷物を持って、一旦部屋に戻ります。
あ・・・あとフレデリックさん。」
「なんでしょう?」
「パイプを買ったのですが、部屋で喫煙しても構いませんか?」
「構いませんよ。」
「ありがとうございます。
では、また後程。」
と武雄は客間を後にした。
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