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第397話 カトランダ帝国が取った経済連携の考察。

無事ミア達と合流した武雄は冒険者組合の事務所にやってきた。

「キタミザト殿、こちらです。」

玄関を入るとすぐにフォレットに声をかけられた。

奥のカウンター横にバートがガラクタを箱に詰め終えて待っていてくれていた。

「バートさん、フォレットさん、ありがとうございます。

 もう箱詰めは終わったのですね。」

「はい。後はキタミザト殿が手続きをすれば発送できます。」

「わかりました。

 じゃあ、ちょっと受付に行ってきます。」

武雄は受付に向かい発送先や現在の残高を見に行くのだった。


------------------------

「カサンドラ・・・今入ってきた一行は腕がたつの?」

結局出来そうな依頼を発見できなかったエリカとカサンドラは冒険者組合の事務所の隅にある喫茶スペースでお茶をしながら事務所内の人間観察をしていた。

「エリカ様、たぶん騎士並でしょうね。

 それにしても騎士クラスを5名帯同出来るとは・・・並みのリーダーではないでしょうね。」

カサンドラも見ながら言ってくる。

「ふーん・・・それにしてもあのリーダーの男性のリュックから猫が顔を出しているんだけど・・・」

「ええ、モフモフ感がありそうですね。」

「あとで声をかけてみようかしら。」

「いきなり声をかけるのは不審がられますよ?」

「そうよね~・・・んー・・・」

エリカはどうやって声をかけるか悩む。

とカウンターにいた男性が立ち上がり、他の5名と奥に行ってしまう。

「あ・・・奥に行っちゃったわ。」

「奥は会議室ですかね?

 打ち合わせをするんでしょう。」

「じゃあ、もう少し悩む時間はありそうね。」

エリカは楽しそうに言うのだった。



------------------------

「キタミザト殿、遮音終わりました。」

マイヤーが小会議室に入るなり4名を四隅に座らせ遮音の魔法を展開させる。

「魔法とは便利な物ですね。」

武雄が感心しながら言ってくる。

「ですが、あまり長時間出来ませんので簡潔にお願いします。」

「わかりました。

 まずは私から話しましょうか・・・ミア、タマ。

 その後に報告をしてくれますか?」

「はい。」

「ニャ。」

武雄達は先程のやり取りのすり合わせを始めるのだった。

・・

「ふむ・・・なるほど。

 マイヤーさん、まずはカトランダ帝国とウィリプ連合国との経済連携・・・どう思いますか?」

「キタミザト殿、あの話を振っていただいてありがたかったです。

 まさか全品目の輸出入が可能だとは思いませんでした。

 今までは小麦や鍋等の生活必需品+嗜好品が数点のみの輸出入だったはずなのですが・・・」

マイヤーがため息をつく。

「ある意味で我ら第二情報分隊の情報の取り方を見直さないといけませんね。」

アーキンがため息をつく。

「休戦協定と経済連携・・・その先にあるのは?」

フォレットが聞いてくる。

「軍事同盟でしょうね。」

ブルックがため息をつく。

「?・・・ブルックさん、たぶん違いますよ?」

武雄が不思議そうに言い返す。

「そうなのですか?」

「軍事同盟をする意味がないですから。

 私の考えでは休戦協定→不戦協定→経済連携の最中なのだと思いますね。

さらには関税緩和→関税撤廃→不戦協定破棄→併合という流れでしょうか?」

「「「「「は!?」」」」」

皆が驚く。

「併合とはなんですか!?」

フォレットが聞いてくる。

「合意の元に地域をくっつけるのが統合。吸収するのが併合。

 合意の元に離れるのが割譲。無理やり離れるのが分離独立です。」

武雄が説明する。

「いや、言葉の意味ではなくてですね。

 併合する事をこの国のトップは思い描いてると読みますか?」

「さぁ?併合や統合で統治をする切っ掛けになるかなぁと思っただけですけど。

 マイヤーさんはどう読みますか?」

「私はブルックの言う軍事同盟を結び我が国に対しての共闘戦線構築が目的と思っています。」

マイヤーの言葉に他の4人も頷く。

「ふむ・・・その考えはクリフ殿下とニール殿下のどちらかで2か国の軍隊を集中運用することにより勝利を目指す・・・ですか?」

「はい。」

マイヤー達が頷く。

「まぁ、そうとも考えられますかね。」

武雄は思案しながら言う。

「キタミザト殿は違う考えを?」

ブルックが聞いてくる。

「はい・・・どちらが言い出したか・・・まぁ私はカトランダ帝国だと思っていますが・・・

 まず、不戦協定を結びアズパール王国との戦線で足並みを揃えるとは思います。

 次に経済連携を呼びかけウィリプ連合国からは農産物をカトランダ帝国からは工業品を輸出出来るようにします。

 フォレットさん、そうするとどうなると思いますか?」

「え?・・・お互いが補完し合うという事ですか?」

「補完し合う・・・まぁ表向きそうでしょうね。

 カトランダ帝国は農業があまり発展していない地域だそうですからね。

 ウィリプ連合国からは農産物を大量に仕入れるでしょうね。

 ですが・・・ウィリプ連合国側としては、カトランダ帝国から安価な武器が流れ込んできたらウィリプ連合国内の鍛冶屋はどうなると思いますか?」

「打撃を受けて数が減ってしまうかも・・・あ。」

「武器を作る職人が衰退します。

 また安価な武器、つまりは自分たちの装備している武器より少し下の品質の武器を大量に流すとしたら?」

「・・・相手の軍事力が下がってしまいます。」

バートが答える。

「徐々に相手の国力を下げてからアズパール王国と戦闘を開始します。

 そして・・・」

「ウィリプ連合国とカトランダ帝国側が負ける。

 そしてウィリプ連合国に甚大な被害を出させる・・・ですか?」

アーキンが悩みながら言ってくる。

「はい。

 私的にはカトランダ帝国側では引き分け、ウィリプ連合国側では大敗を目指すのかと・・・

 で、カトランダ帝国はウィリプ連合国が敗戦して軍事力減少を確実にしたと判断したら不戦協定を破棄してウィリプ連合国への戦端を一気に開きます。

 そしてウィリプ連合国の半分程度を支配するのではと私は睨みますね。」

「キタミザト殿、それは出来るのでしょうか?」

「出来るとは思いますが・・・ウィリプ連合国も馬鹿ではないでしょう。

 問題はどうやって不戦協定を破棄する方向に持って行くか・・・

 ですが上手くいく可能性はありますよね。

 もしかしたら本当にアズパール王国相手に軍事同盟をしたのかもしれませんけど・・・」

「けど?」

「対外戦争で他国と協力し合うという考えではありますけど・・・勝利したらどうするんでしょうね?」

「勝利する為の軍事同盟をするのですよね?」

「ふむ・・・でも勝利するという事は、面倒が増えるってことなんですけどね・・・例えばですよ?

 クリフ殿下方面の2貴族分の領地が戦闘の結果占領できたとしますよね?」

「はい。」

アーキンが頷く。

「どうやって分割するんです?

 カトランダ帝国が面しているからと言って全部は支配できないでしょう?

 どうやって隣接していないウィリプ連合国に分割してあげるんですか?」

「それは戦果から割り出して」

バートが答える。

「戦果はどうやって誰が判断するんです?

 味方兵士の死者の数ですか?

 終わった時の前線にいる生き残った兵士の数ですか?

 それとも戦争において一番村や町を占拠した数ですか?

 団長や兵士長の首の数ですか?

 私はハッキリ言って多国間軍事同盟は防衛戦ではありですが、侵攻戦では結果勝利を得ても後々の面倒が多いような気がしてなりませんね。」

武雄はため息をつく。

「じゃあ、同時日時に進攻するのはどうでしょうか?」

フォレットが聞いてくる。

「同時日時の進攻なら不戦協定のままで良いのです。

 わざわざ軍事同盟という援助条約を締結する意味はないですよ。

 ですので、最初の話に戻りますが、経済連携を取り始めた所の方を注目するべきだと思いますね。

 まぁ、その辺はここで話しても結果は出ませんね。

 王都の文官や武官達に考えて貰って国としての指針を出して貰うのが良いでしょう。」

「ちなみにキタミザト殿、もしキタミザト殿が考えたことと違う軍事同盟論が王都内で意思統一されたらどうしますか?」

「どうもしませんよ?

 国の外交政策は王都の専権事項でしょう?

 一研究所所長が意見する物でもないですし・・・それに陛下がそもそも侵攻する気がないのですからやることは変わりませんね。

 負けない国を作る事に尽力するだけです。」

「なるほど。」

マイヤー達が頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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