第385話 32日目 バートとフォレットの関係は?2。エルヴィス家での説明会。
「おはようございます!」
武雄達の部屋に来たフォレットが元気に挨拶をしてくる。
「はい、おはよう。」
マイヤーが挨拶を返す。
武雄は皆の朝食の準備をしています。
ミアとタマは「主!私達は魚醤のスープが良いです!」「ニャ!」と武雄の脇の机から要求をしている。
武雄も「良いですよ~」と返事をしながら料理をしている。
「・・・今日もキタミザト殿が料理ですか・・・」
フォレットがそんな光景を見ながら言う。
「ええ、キタミザト殿が率先して作ってくれていますよ。」
「確か貴族になられていますよね・・・
それなのに食事を自ら作ってしまうのですか。」
フォレットがため息を付く。
「キタミザト殿曰く『今回は私のわがまま旅行ですから、気になされず』と仰っているのでお言葉に甘えているのです。
それに、キタミザト殿より料理を上手く作れる者がいるのか・・・」
マイヤーも武雄達を見ながらため息を付く。
「・・・おはようございます。」
バートが挨拶をしながら入って来て席に座るとフォレットが顔を若干赤くしながら椅子を離す。
「おはよう。」
マイヤーが目を細めながら挨拶を返す。
マイヤーは2人の表情を見て「上手く行ったかな?」と楽しく見ている。
「簡単ですけど朝食が出来ましたよ。」
と武雄が朝食を持って来る。
「「「ありがとうございます。」」」
3人は礼を言う。
武雄は配膳をしながらバートとフォレットの椅子の距離が昨日と違うのに気が付くが何も言わない。
「さ、食べましょうか。」
と、武雄も席に座り声をかけ皆が朝食を取るのだった。
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「皆、集まって貰ってすまんの。」
エルヴィス爺さんがエルヴィス邸の広間に設けられた席に着きながら言う。
広間にはスミスがおり、各局長と各組合長(仕立て屋組合は代理)が勢ぞろいしており、起立していた。
「いえ、問題はありません。」
総務局長が皆を代表して言葉を言うと皆が頷く。
「そうか、皆にはいつも苦労をかけていてすまんの。」
「いえいえ、滅相もないことです。」
ローが答える。
「じゃあ、皆、座ってくれるかの。
打ち合わせを行う。」
「はい。」
エルヴィス爺さんの言葉に皆が席に着く。
「さて、そうじゃのぉ・・・何から話すかの。」
「主、まずはアリスお嬢様とタケオ様の話からいたしましょう。」
フレデリックが促す。
「うむ、そうじゃの。
では、皆少し話を聞いてくれ。」
エルヴィス爺さんが話を始めるのだった。
・・・
・・
・
結局、武雄とアリスの婚約の話から武雄がカトランダ帝国に視察に行く事、王都での珍事そして武雄が貴族になった事、研究所の設立をする事の話がされた。
「という訳で、街が大きく変わろうとしておる。」
エルヴィス爺さんが楽しそうに語っていた
「まずはアリスお嬢様とキタミザト様のご婚約おめでとうございます。」
酒場組合の組合長が起立して挨拶をすると、他の組合長や局長達が声を合わせ「おめでとうございます。」と礼をする。
「うむ。やっとアリスが婚約出来たの。」
エルヴィス爺さんが苦笑しながら言う。
「我ら住民も安堵しております。」
酒場組合の組合長が着席して楽しそうに言う。
「そうじゃの。アリスは『皆が過保護です』と言っておったぞ。」
エルヴィス爺さんが言うと皆が楽しそうに笑い声をあげる。
「はい、私達の関心事ですので。それに、アリス様もキタミザト様も街を守る為に奮戦していただいています。
我ら住民一同、お2人のご婚約とキタミザト様の爵位授与を誠に嬉しく思っております。」
「うむ。
だが・・・だな。」
「伯爵様、王都での件・・・どうされるのですか?」
ハロルドが聞いてくる。皆も関心があるのだろう笑い声がピタッと止む。
「うむ。
陛下には『タケオ達が納得するのであれば私共は大事にしません』という旨の返事をしておる。
そして、王都ではタケオ達と王都側で示談が成立しておるの。
エルヴィス家としては、今後この件について何か言うつもりはないのが実情じゃ。」
「畏まりました。」
ハロルドが難しい顔をして頷く。
皆も何も言わずに難しい顔をする。
「だが、各組合長にお願いがしたいのじゃがの。
たぶんじゃが、王都の商隊辺りからこの件の話が広まると考えておる。」
「はい、十分に考えられます。」
商屋組合長が答える。
「この件については、我らも王都も噂を立てられても良い事がないのじゃ。
そんな噂は早急に終わらせねばならぬ。」
「はい。」
「向こうがしたり顔でこの件の話をしても、うちの住人達が笑い飛ばすなら『噂も大したことではない』となると考えておるが・・・どうじゃ?」
「・・・確かに。
『そんなことをしたり顔で言われてもねぇ』と対応すればよろしいのでしょうか?」
「うむ。酒場や宿、各商店で向こうから言われても、そう対応すれば『エルヴィス領では気にしていないのか』となって、この話は気にしなくなるじゃろう。
当の我らが気にしないのじゃ。周りもはやし立てる気がなくなるじゃろう。」
「畏まりました。
我ら商屋組合と不動産組合、酒場組合で話し合い、従業員にその対応を徹底させます。」
「うむ、すまんの。」
「いえ、我々も折角のアリス様とキタミザト様のご婚約の祝賀で楽しみたいので、そんなつまらない事を言われて気分を害したくないのです。
問題ありません。」
「うむ、よろしく頼む。
と、あとは研究所なのじゃがの・・・
鍛冶屋組合長はおるかの?」
「はい。」
「研究所について、どう思うかの?」
「はい。キタミザト様がどういった物を研究するかは定かではありませんが・・・
試作する工房は研究所に内接するでしょう。ですが、量産する所が必要になると思います。」
鍛冶屋組合長が答える。
「うむ・・・タケオの事じゃ。
新しい概念を打ち出す可能性があるの。
その際に現在の鍛冶屋達で生産は足りるかの?」
「いえ、現在の個々の店での対応ではエルヴィス家に所属する兵士分を数年かけて作れるかどうかです。」
「うむ・・・多少の統廃合は可能かの?」
「どうでしょうか・・・職人達や親方連中が何と言うか・・・」
鍛冶屋組合長が頭を捻る。
「そうか・・・この件は、タケオが帰って来てからまた話し合おうかの。
タケオが何を作りたいのか・・・どう考えているのか。
それを聞いてから皆で方針を決めようかの。
ただ、わしとしては武具の量産化も悪くない事だと思っておる。
なので、統廃合についても頭の片隅に置いておいてくれるかの?」
「はい、畏まりました。」
鍛冶屋組合長が返事をする。
「さてと・・・不動産組合・・・と言うよりバーナードとカーティスはおるか?」
「「はい。」」
2人は返事をする。
「うむ、タケオから聞いておるかの?」
「はい。仕立て屋組合の新工場の建設について用地検討を我々はしております。」
カーティスが答える。
「うむ、その件じゃが。
タケオの研究所用地も同時に考えよ。
ちなみに、用地検討はエルヴィス家からも1案出すからの。」
「はい、心得ました。
満を持してプレゼンに臨みます。
プレゼン実施時期があと2週間後ぐらいと言われておりますが、変更はございますか?」
「ふむ・・・
仕立て屋組合長が戻ってから意向を確認するかの。
長ければタケオ達が戻って来るまで、1か月程度先延ばしになるかもしれんの。
確認次第、連絡を入れる事にする。」
「畏まりました。」
カーティスが答えバーナードも頷く。
「うむ、頼むの。
では、本日は以上じゃ。」
「ちょっとお待ちください、伯爵様。」
「なにかあるのかの?ロー。」
「いえいえ、アリス様とキタミザト様の結婚式はいつでしょうか?」
出席者全員が頷く。
「ふむ・・・わからんの・・・
そもそも、あの2人はいつ結婚するかも決めずに王都に遊びに行ったからの。
わしとしては、スミスが来年春に寄宿舎に入ってしまうから、その前にしたいのじゃが・・・これもタケオ達が帰って来てからじゃの。」
「畏まりました。決まり次第お教えいただければ、準備をいたします。」
「うむ、すまぬの。
では皆、以上じゃ。」
「「はい。」」
と各組合長達が返事をして会議が終了するのだった。
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