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第384話 31日目 バートとフォレットの関係は?帝国と王国の関係。

武雄達は先の2人も交えて夕飯を終え、お茶をしながら談笑をしている。

ミアとタマはもう寝ています。

ちなみに調理は武雄が担当し、食材は皆の買った食材を集めてポテトサラダとかシイタケの出汁のスープで終わりにしたのだが。

「はぁ・・・たったあれだけの食材であそこまで美味しい料理が出来るとは・・・」

マイヤーが楽しそうに言い、他の2人も嬉しそうに頷く。

「あぁ、何かお酒が飲みたいですね。」

「あ、私達の部屋にブランデーがありましたよ。」

武雄の呟きにフォレットが答える。

「そうですか・・・1杯頂けますか?

 寝酒にはちょうどいいでしょう。」

武雄の言葉に男性陣が頷く。

「はい、持ってきます。」

と、フォレットが一旦退出して行く。

・・

「で?バート、どうなんだ?」

マイヤーがバートに聞く。

「・・・なんですか?第一近衛分隊長殿・・・そのニヤニヤは?」

「え?婚前旅行なのでしょう?」

武雄も聞いてくる。

「は!?・・・ちょっと待ってください!?

 どうしてそういう話に!?」

バートが驚く。

「・・・だって・・・お互い独身だしなぁ。

 そういう返しという事は・・・まだかぁ。」

マイヤーがつまらなそうに呟く。

「ねぇ。面白いと思ったのに。」

武雄もつまらなそうにする。

「いや・・・そんな任務中ですよ?」

「「だから?」」

武雄とマイヤーが聞き返す。

「流石に任務中はマズいでしょう。」

バートが汗をかきながら言ってくる。

「・・・まぁ任務に支障をきたすなら問題だが・・・

 キタミザト殿はどう思います?」

「とりあえずキスぐらいはすれば良いのでは?」

「は!?」

「冗談ですよ。

 任務に支障をきたすのはマズいですが・・・

 この部屋に入って来た時、明らかに上司と部下のカチカチ感しかなかったですよ?

 友達同士での旅行というのではなく、夫婦を装っているのでしょう?

 上手く出来ているのですか?

 結婚するかどうかは本人達の決断でしょうけど。

 外から見て明らかに夫婦感がないのも問題なのでは?

 夫婦感が無理なら恋人感でも良いです。

 性行為やキスをしろとは言いませんが、明日の朝までにもう少し柔らかくしておいてください。」

「はい・・・わかりました。」

バートがうな垂れながら返事をする。

と、フォレットがノックをして入って来る。

「戻りました。」

「「おかえり。」」

武雄とマイヤーが声をかける。

「ん?バート、どうしたのですか?

 うな垂れていますが。」

「いや!何でもない!」

「そうですか・・・キタミザト殿、一応グラスを人数分を持ってきました。」

「はい、ご苦労様です。

 まぁ、軽く1杯飲んで寝ましょう。」

「「はい。」」

「・・・はい。」

4人は寝酒用の酒を各々準備するのだった。

・・

そんなこんなでいろいろ話したのだが・・・

「そう言えばマイヤーさん、前から気にはなっていたのですが。」

「はい、何でしょうか。」

「なんでアズパール王国は国王の子供が皇子と呼ばれるのですか?」

武雄は疑問を言ってくる。

「ふむ・・・

 まぁ普通なら帝の子供が皇子、王の子供は王子ですけどね。

 実はこの国の建国に由来しています。」

「はい。」

「そもそもこの国の初代皇帝は」

「初代皇帝?王ではないのですか?」

武雄が驚きながら聞く。

「違います。まぁ簡単に言いますので。

 元々は今のカトランダ帝国とアズパール王国の西側は一つの国でした。

 その時の国の名はカトランダ帝国。

 そして約1000年前に当時のカトランダ帝の弟君に国の東側を任せる事にしたのです。

 その国をアズパール帝国と言いました。

 で、今から約600年前に貴族制を採用するに当たって帝国から王国に変更したのですが、当時のアズパール王が王の子供だがカトランダ帝国との縁を消さないためにと子供は王子と王女ではなく皇子と皇女としたのです。

 そして今のいままで特に不便はなかったので変更はされていません。

 ちなみに現在の陛下は第34代ですが、代数は帝国から数えています。」

「・・・なんで兄弟国家で戦争が・・・

 ん?違いますかね・・・だからこその戦争なんですかね?」

「おや?キタミザト殿は戦争の大義名分がわかりますか?」

マイヤーが楽しそうに聞いてくる。

「まさかとは思いますが・・・カトランダ帝国は領土返還を求めているのですか?」

「正解です。」

「1000年も前の事を持ち出しているのですか?」

武雄は困惑する。

「ええ。なので、我々アズパール王国側としては『そんな古いことを持ち出されても困る。この地は当時のカトランダ帝から譲渡された物であり、1000年の間支配と運営をしてきたのだから返還は出来ない』と断り文を送って戦争が起こります。」

「分離独立ではなく領土を譲渡されたのでしょう?

 問題はないと思い・・・カトランダ帝国では分離独立と言っているとか?」

「正解です。

 私も宣戦布告文を見てはいないのですが、毎回陛下がため息混じりに『また分離独立かぁ』と愚痴を言っていますので確かだと。」

「まぁ歴史認識は各々立場がありますからね。

 アズパール王国側としては難癖ですが・・・カトランダ帝国側からすれば正当な土地の支配者との認識をしている・・・面倒な事ですね。」

武雄はため息を付きながら言う。

「はい、その通りですね。」

武雄の言葉に皆が頷くのだった。

「キタミザト殿、解決策はあると思いますか?」

「ないでしょうね。」

武雄は即答する。

「キタミザト殿でも無理ですか。」

「そもそも両方とも主張的には間違いがない時点で解決策はありません。

 一方は1000年の実効支配。もう一方は古の土地の支配権。」

「それだけ聞くとカトランダ帝国の方が正当な言い分に聞こえますけど。」

バートが腕を組みながら言ってくる。

「そうですか?実効支配は年数が経てば経つほど有効になると思いますよ。

 1000年の長期支配とはつまり何代にも渡ってアズパールの国民が住んで居るという事です。

 生活も習慣も考え方もアズパール王国に染まっている者がカトランダ帝国で生きていけるのでしょうかね?

 そもそもカトランダ帝国は領土を回復したらソコに住んで居る住民はどうするつもりなんでしょうね?」

「キタミザト殿だったらどうしますか?」

フォレットが聞いてくる。

「私?・・・敵国の一部の領地が貰えたとして・・・

 んー・・・要らないという回答はダメなんですよね?」

武雄が少し考えて聞き返す。

「はい。」

「そうですね。

 施政者側の選択肢は2つ。現在住んで居る住民を排除して新たに国民に開放するか、排除しないでそのまま取り込むか。

 どちらかしかないでしょうね。

 どちらにしても荒れそうです。」

「そうなのですか?」

バートが聞いてくる。

「ええ。

 前者の排除して国民に開放するという事は殺すか移動させるかですが・・・

 そもそもソコに何代もいた家族からは不満が出るでしょうし、そんな強制的な事をすれば敵国が黙っていないでしょう。

 戦争勃発です。

 後者はどうかというと敵国の住民をそのままにするので・・・内乱が発生しそうですね。

 私が敵国なら住民の中に情報系の部隊から数人を入れておいて内情を偵察するでしょうから・・・

 あ、こっちもいずれは内乱から戦争になりそうです。

 そんな面倒な事はしたくありませんからね。

 という訳で要りません。即刻返還して対価を金銭で貰えれば良いですね。

 そのお金で今の関の防衛力強化を進めますか。」

武雄がため息を付きながら言う。

「それではキタミザト殿的には侵攻はする気もないし譲渡もしないとお考えですか?」

バートが聞いてくる。

「ええ。対外戦争をする必要がアズパール王国にあるとは思いません。

 農地が不足しているわけでもないですし、人口過多なわけでもない。

 向こうの言い分を聞いて譲歩する意味もない。

 対外戦争をこちらから起こして何かこちらに利益があるのですか?

 勝って領地が増えたとしても向こうの住民についてはさっき言った通り、不安材料でしかないですよ。

 なら今の農地を拡大する方向に政策をして行った方が国内も安定するし、国が強固になると思いますね。」

「わかりました。」

バートとフォレットが武雄の言い分を聞いて安堵の表情をする。

「ふふ、2人とも少し安心したか?」

マイヤーが言うと、2人が頷く。

「ん?マイヤーさん、私が何か?」

武雄がマイヤーに聞いてくる。

「いえ。

 私はキタミザト殿と話をしていますからわかりますし、エルヴィス家での戦闘と覚悟を見ていますから何も不安は抱いてはいませんが、この2人は今日初めて話していますからね。

 いくら王家が認めていてもどんな人物なのか不安なのでしょう。

 キタミザト殿はなまじ功名が過ぎますので。」

「功名?・・・何か私は手柄を立てましたかね?」

武雄が「んー?」と悩む。

「キタミザト殿!

 先に陛下へオーガとゴブリンが襲撃した際に見事にエルヴィス家の兵士を指揮し殲滅したではないですか!?

 それに単独で突出してオーガを30体も撃退しています!

 陛下の御身を守る為の決死の戦いとそして犠牲者を1名も出さないという偉業は手柄です!」

フォレットが少し興奮しながら言ってくる。

「・・・あぁ・・・そういえば何か身分を偽っていた方々が3名いましたよね?

 ・・・マイヤーさんは、ちゃんと名乗っていましたか。」

武雄がため息を付きながらジト目でマイヤーを見る。

「はは・・・キタミザト殿。

 アレは陛下もウィリアム殿下もレイラ殿下も反省していましたので、ご容赦を。」

「まったく・・・国王と王家だと知っていればもっと違う事をしていたのに・・・」

「キタミザト殿・・・違う事とは?」

「さっさと街を脱出してもらうに決まっているでしょう。

 エルヴィス家の騎士団とスミス坊ちゃんも一緒に。」

「まぁ、普通はそうですよね。」

「わざわざ危ない橋を渡る必要はないですよ。

 即ゴドウィン伯爵家に行って貰い態勢を整えて貰うのが一番でしょう。」

「そうですね・・・それが無難ですね。」

「アレは結果的に上手く行っただけですからね・・・

 はぁ・・・もう一回同じことがあったら次はどうすれば良いのか・・・」

武雄はため息を付く。

「その時もキタミザト殿が何とかしますか?」

「毎回ポンポン発想が出てくるわけではないでしょう。

 あの時は閃いただけです。

 まぁ最大限の努力はしますが・・・次は・・・こちらが壊滅するかもしれない。

 そのぐらいの覚悟で臨まないといけないでしょうね。」

「キタミザト殿に慢心はないのですね。」

フォレットが感心したように言う。

「慢心はないですよ。

 常に最悪を考え、そして最大限の成果を求められるのが施政者であり上司の役目です。

 状況によっては兵士の半分を確実に失わせてでも勝利を収めないといけない時が来るかもしれません。

 私の命令で半数が死ぬ・・・気持ち的に厳しいですがね。」

「ふふ、その辺がわかっていただけるのなら兵士は納得はしますね。」

「納得ですか・・・まぁ覚悟は必要ですかね。

 あとは上手く命令を出して犠牲者を少なくしながら対応するしかないでしょう。」

「ええ。」

「さて・・・長話が過ぎましたね。

 明日は何時の鐘で出立の予定ですか?」

武雄が話を切り上げマイヤーに聞く。

「そうですね・・・

 3時課の鐘ぐらいに出れれば9時課の鐘が鳴って少し経ったぐらいには着けるかと思います。」

「わかりました。

 明日の朝と昼は私が作りますので・・・と言っても余り物でしかないので豪勢には出来ませんが。

 朝は適当に起きてきてください。

 昼は小休止程度なので、町に着いたら先行している2人と合流し、そのまま宿に行きましょう。」

「「「はい。」」」

武雄達は明日の朝の予定を確認して今日は寝ることにするのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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