第383話 カトランダ帝国の概要。製鉄技術かぁ・・・
皆の前にはお茶が配膳されていた。
ちなみにタマにもお茶を用意しました。
「さてと、フォレットさん、始めましょうか。
マイヤーさん、バートさん、足りない所の補足はお願いします。」
武雄の言葉に2人は頷く。
「そうですね・・・
フォレットさん、まずは地理的にカトランダ帝国はどういう所ですか?」
「はい。
カトランダ帝国はアズパール王国の西にあり人口は120万程度の国家になります。
国土面積はアズパール王国の8割くらいですが、半分は山岳地帯になっています。
北と西は高い山々があり、山向こうの国家とは国交は無いようです。またカトランダ帝国の南、アズパール王国の南西にはウィリプ連合国があり、そことは休戦協定を結んでいます。」
「なるほど。
国家としての体制はどうですか?」
「はい。
我々は貴族制度を敷いていて各領地の自治権を与えていますが、カトランダ帝国では貴族制は取っておらず中央からの各町に文官や武官が派遣されて行政等を担っているようです。
一応、将軍や大臣というクラスが我々で言う貴族なのだと言われています。」
「なるほど。
マイヤーさんから旅の道すがら教えて貰った通りですね。」
武雄は頷きながら言う。
「キタミザト殿、アズパール王国の制度とカトランダ帝国の制度とどちらが良いのでしょうか?」
マイヤーが聞いてくる。
「ん?マイヤーさん達は習っているのではないですか?」
「まぁ、一応習いましたけどね。
キタミザト殿の考えを聞きたいと思いまして。」
「・・・まぁカトランダ帝国は中央集権国家であり、アズパール王国は地方分権国家と捉えれば良いかと思いますね。」
「それはどういう物なのですか?
どうも私達は王国寄りの意見しか聞かないもので・・・カトランダ帝国の制度がいまいちわかっていないのですよ。」
「簡単に言えば中央集権国家は人・物・金を首都に集めると共に地方の行政は中央の役人が数年交代でしてるのでしょうから汚職が防ぎやすいでしょうね。それに中央の命令が早く行きわたるので政策の実現が早いという考えが出来る一方で、地方行政が数年ごとにリセットされてしまう可能性もあるので地域の発展が遅々として進まないことが良くあると考えられます。」
「はい。」
「対して地方分権国家は地方自治を各領主がしますので、地域にあった政策を長期の計画で出来るのです。
それに長年その土地を同一家族が管理する為、地域への理解や領主への愛情が生まれると考える一方で汚職や中央の命令を聞かなかったりとデメリットもあると考えられます。」
「んー・・・」
マイヤー達が腕を組み悩む。
「どちらの国家体制でも良し悪しがあるのです。
どちらにしても施政者が堕落すれば国家の破たんや内乱に繋がります。
それにアズパール王国のやり方がカトランダ帝国内で上手く行くとは限らないですし、カトランダ帝国のやり方がアズパール王国内で上手く行くとは限らないですよ。
国家運営の根底にあるのは国民の生活をちゃんとできるのか・・・です。
政策が良くても国民が悲鳴を上げては意味がありません。
アズパール王国内は内乱もなく王位継承も順調に行きそうです。
国民の生活も割と満足しているし、国の運営も上手く行ってそうです。
この生活を無理やり変える必要があるとは思いませんね。」
「なるほど。」
マイヤー達が頷く。
「であるならば、この制度を守ることが今は大事と考えます。」
「そうですね。
そのためのキタミザト殿の研究所立ち上げですものね。」
「まぁいきなりは良くはなりませんが・・・国防の質を上げる為の武器の開発かぁ・・・
やりがいはありそうですが・・・上手く行くかはわかりませんね。
と、話が逸れましたね。
フォレットさん、次はカトランダ帝国の主要産業を教えてください。」
「はい。
カトランダ帝国は2方を山に囲まれており、国土の半分が山岳地帯の為、農業が盛んではありません。
国としては山岳地帯にある鉱山を生かした工業力が売りのようです。
アズパール王国は国内に鉱山はありませんが、カトランダ帝国では豊富な鉱石を利用した職人気質の国家だと教わっています。」
「ふむ・・・やはり鉱山は欲しいですよね。」
「キタミザト殿は必要だと思いますか?」
バートが聞いてくる。
「ええ、鉱山は資源の宝庫でしょうからね・・・自国内にあるかどうかで工業力が変わると思いますね。
アズパール王国はドワーフの王国からの輸入に頼っているのですよね?」
「はい。アズパール王国では製鉄の技術がないとされています。
基本的にはドワーフの王国から製鉄された物を輸入して国内で加工しています。」
「輸入は専売局が?」
「はい。専売局が一括で輸入して小分けに加工し、各領地に卸しています。」
「そうですか・・・で?製鉄技術がないとされているとは何ですか?」
武雄がバートに聞く。
「実は国内にも製鉄所はあるのです。
ですが・・・ドワーフの王国の物より純度が低い事と原材料の鉱山が今の所発見できていないので発達はしていません。
また金山、銀山、銅山は国内の数か所に存在はしていますが、産出量は少ないのでそちらも輸入に頼っています。」
「・・・そうですか。
製鉄や各金属の精錬方法については私には知識がないので・・・これと言ったアドバイスが出来ませんが・・・ふむ、とりあえずその辺はここで考える事ではないですね。
あとはカトランダ帝国は帝政なのですよね?
皇室があるのですか?」
「はい。
向こうは帝を頂点とした組織になっています。
皇室は皇子が4名で皇女が1名の5兄弟でした。」
「でした・・・とは?」
武雄がフォレットの言葉に違和感を覚える。
「キタミザト殿、実はカトランダ帝国の兄弟は跡目争いが激しいという認識を我々はしてます。
で第1皇子と第2皇子はすでに亡くなっています。
今は第3皇女と第4皇子と第5皇子のみですね。」
「・・・アズパール王国の跡目があの3兄弟で良かったですね。
跡目争いなんてやられたら国を分割しそうです。」
「まったくです。今の王家は非常に仲を良くしようと努力をしています。
これが跡目争いにでもなったら・・・はぁ・・・考えただけで恐ろしいですね。」
「今の所、第1皇子のクリフ殿下がちゃんとしていますから問題はなさそうですね。」
「はい。クリフ殿下も相当前から王になる準備をされています。
ニール殿下やウィリアム殿下に至っては兄を支えようと努力なさっています。」
「そうですか。
王家も大変なのですね。
まぁ、とりあえずはこの視察を上手く終わらせないといけませんね。」
「「「はい。」」」
皆が頷き合うのだった。
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