第382話 カトランダ帝国の東町と国境との間の村に到着。テイラー店長の思案。
9時課の鐘がさっき鳴っていた。
「着きましたね。」
武雄が村の中を見ながら呟く。
「はい・・・着きましたね。」
マイヤーも茫然としながら呟く。
武雄とマイヤーが国境を越えて東町との中間にある村の入り口に着いたのだが・・・
村の中はアズパール王国内の村とは全く様相が違っていた。
ハッキリ言うと活気がないのだ。
村全体が沈んでいる感じがひしひしと伝わって来る。
「・・・マイヤーさん、今日はここに泊まるのですよね?」
「はい、そうですね。」
「食べ物はあるのでしょうか・・・」
「わかりません。とりあえず宿を探してみましょうか。」
武雄達一行はまずは村長の家を探すのだった。
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「ん~・・・」
テイラーは机に向かって腕を組んで考え込んでいた。
「・・・テイラー、何を悩んでいるのだ?」
仁王様がため息を付きながらテイラーの机に置いてある文鎮に優雅に座っている。
「・・・ニオ、勝手に出ないでくれ。
他の人に見られたら面倒だろう?」
「どうせだれも来ないだろう。この店は暇だからな。」
「言ってくれるね。まぁあっているけど。
一応、いつでも隠れる用意はしてくれよ?」
「わかっているさ。で?何を悩んでいるのだ?」
「ん?キタミザト様の小銃だよ。」
「高威力を目指すとか言っていたアレか?
そんなに悩むことなのか?」
「いや、そっちの改造はとりあえず終わっているんだよ。」
「ほぉ、流石はテイラーだな。我が見込んだだけのことはある。
・・・高威力が出来上がっているなら終わったんだろう?」
「いや・・・キタミザト様が言っていたじゃないか。
撃ったらその衝撃を利用して薬莢を排出して新たに装填する自動装填という考え方があると。」
「・・・アレはテイラーが言ったような気がするが・・・
まぁ弾丸自体の装填と排出は自動的に行えるとは言っていたかもな。
で、それをするのか?」
「うん。あれは薬莢が新たに装填されることを前提に考えているんだよ。」
「そうだな。」
仁王様が頷く。
「だけどね、よくよく考えてみると・・・
小銃改シリーズでの薬莢はあくまで氷の弾丸を生成し爆発を起こさせるための媒体でしかないんだ。」
「そうだな。
で、その部分の生成速度を速めるために小銃改2というのを作って失敗しただろう?」
「うん、だけどね。
小銃の強化、肩に当てている部分のシールド、氷の玉の生成、氷の内部に爆発の魔法を仕込む、筒と玉の隙間に水の膜を生成、玉の後方で爆発で1発撃つのに魔力150が必要なんだよね。」
「そうだな。」
「キタミザト様の1回で使用できる魔力量は25、ほぼ同時に展開できる数が35工程。
1発撃つのに魔法だけの工程なら6工程必要。
そこで弾丸を他の箱に入れて・・・横から薬莢だけを差し込み1発撃つごとに横に移動出来たら・・・
5発までなら連射が出来るのではないのかな?と思ったのだけど・・・
上手い案が思い浮かばないんだよね。」
「ほぉ、テイラーは天才だな。」
「天才ならこの程度サッと思いつくのではないのかい?」
「ふふ、今はじっくりと悩む事だろう。
たぶんその考えをタケオに言えば喜ぶと思うぞ?」
「キタミザト様が?んー・・・やはりあの方は柔軟な発想をするんですね。」
「いや・・・タケオはどちらかと言えば柔軟な発想というより知識が広いんだろうな。
引き出しが多いのだ。なので使える知識を浅く広く知っている。」
「そうかい?知らない知識や考え方を示されて毎回ドキッとするんだけど。」
「生い立ちが違うのだから考え方が違うのは当然だろう?
皆が同じ考えをしているのはつまらんぞ?」
「そう言われるとそうだけどね。
まぁ・・・まだまだキタミザト様は帰ってこないだろうし、ゆっくりと考えるかぁ。」
「うむ、常に考えることは良い事だ。」
仁王様はテイラーの言葉に頷くのだった。
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「はぁ・・・今日はこのまま寝ますか。」
武雄がベッドに横になりゴロゴロしている。
「ですね。こうも他国の者に嫌な顔をするのも村長としてどうかと思いますね。
それに『食事は自分で用意しろ』とは・・・」
マイヤーが不快感を顔に出しながら言ってくる。
「まぁ、敵国ですしね。
それに一応、食材は売ってくれたではないですか。」
「ジャガイモに小麦に干し肉とタマゴとミカンですね・・・」
「何も売ってくれないよりかはマシですよ。
それにこれぐらいしかないのかもしれません。
ご無理は言ってはいけませんね。」
と、部屋の扉がノックされる。
マイヤーが扉横に行き剣を鞘から抜く。
武雄は立ち上がり、いつでもシールドを展開できるように意識を集中する。
マイヤーが1回ノックを内側からすると。
コンッコンッ・・・コンッコンッ・・・コンッコンッ・・・コンッコンッ。
と2回ノックを4回される。
武雄は「これが2-4ね。」と思う。
マイヤーが少し扉を開け外を確認し、来客者を中に入れる。
「キタミザト殿、第二情報分隊の2名です。」
「失礼します、第二情報分隊のリック・バートです。」
「ジョハンナ・フォレットです。」
2人は緊張した面持ちで入って来る。
「はい。
初めまして。タケオ・キタミザトです。
これからの道中よろしくお願いします。」
「「は!」」
「さ、座って話しましょう。」
皆が各々自由に座る。
「さて、お2方はいつ着きましたか?」
「我々は今朝の段階で着きました。」
バートが返事をする。
「なるほど。
おっと、自己紹介がまだでしたね。
私の部下で妖精のミアと猫のタマです。」
「お2方様、よろしくお願いします。」
「ニャ。」
チビッ子達が挨拶をする。
「か・・・可愛い。」
フォレットがチビッ子達の可愛らしさに一発で虜になってしまう。
「さて、お2人はカトランダ帝国には初めてなのですか?」
「いえ、私はカトランダ帝国には2年ぶりです。
我々第二情報分隊は対外情報を収集する部隊で一応、1年に1回は各国に入っています。
ちなみにフォレットは初の対外調査です。」
「なるほど、フォレットさん。
この国の・・・この村の印象はどうですか?」
「はい!
その・・・寂しい感じを受けました。」
フォレットの答えにマイヤーとバートともに「キタミザト殿相手にその回答?」という微妙な顔をする。
「ふむ・・・
フォレットさん、カトランダ帝国の事前情報を見てきましたね?」
「はい。」
「わかりました。
では、フォレットさん。言える範囲で結構ですから私にカトランダ帝国の概要を説明してください。」
「わかりました。えーっと、まずはこの」
「ちょっと待ってくださいね。
急かすつもりはありません。
今人数分のお茶を出しますからそれから話しましょう。」
武雄は席を立ち皆のお茶を用意するのだった。
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