第380話 30日目 魚醤を試してみよう。明日の打ち合わせ・・・とある一団の野宿。
「はぁ・・・今日もマッタリでしたね。」
「きゅ。」
アリスとクゥがのんびりと夕食後のお茶を飲んでいた。
「今日のお昼のお肉料理はなかなかでしたね。」
「きゅ♪」
アリスの言葉にクゥが頷く。
アリス達は店巡りを再開させていた。
「それにしてもクゥちゃんを見て王都の人達はあまり驚かないですね。
うちの街ならクゥちゃんは子供達に囲まれますよ?」
「きゅ?」
クゥは首を傾げる。
「ミアちゃんの時はもう凄かったです。」
アリスは楽しそうに言う。
「・・・きゅ。」
クゥは想像しただけで疲れるのか首を振りながらため息を付くのだった。
「明日は何をしましょうかね。
朝はテラスでのんびりとしますかね。
そう言えばクゥちゃん、ここ数日小鳥達が来ていますけどどんな事を話しているんでしょうね?」
「きゅ?・・・きゅ。」
クゥはアリスの顔を見て軽く頷くのだった。
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武雄達一行は焚き火を囲みながらのんびりと夕飯を取っていた。
周りには誰もおらず気兼ねなくマッタリしている。
「これは平気ですかね?・・・にゃ?」
ミアがタマに武雄が魚醤で作った簡単なスープを飲むように勧める。
タマは恐る恐る舐めると・・・
「ニャ!」
と嬉しそうに鳴く。
「にゃ?」
「ニャ!」
「主、タマは魚醤は問題ないようです。」
「わかりました。
明日は村に泊まる予定ですから牛乳が手に入るならそれにしましょう。」
武雄がミアからの報告を聞いて頷く。
「ん~・・・キタミザト殿やミア殿、タマ殿は良く食べられますね。」
「マイヤーさんはダメでしたね。」
「どうも臭みと甘さが一緒に来るのが・・・」
マイヤーがため息を付きながら言ってくる。
「まぁこればかりはしょうがないですよ。
無理して食べるような物ではないですから。」
「キタミザト殿、他にこういった食材はありますか?」
「ん~・・・臭みと甘味を取り除いた物は知ってはいますが、原料が発見できないので、今の所は調味料はそれぐらいしかないですね。」
「その調味料は私でも食べれますかね?」
「たぶん平気ですよ。
かなりあっさりとした味になりますからね。
でも原材料を発見しても加工と熟成があるから・・・まぁ早くても2年後とかになりますかね。」
「そうですか。
のんびりと待つしかないのですね。」
「ええ。
それにその前にエルヴィス領で作りたい食材もありますし。」
「何かまた面白い物を思い付いたのですか?」
「いや、面白いかはわかりませんが・・・キノコ専門の栽培業者を作ろうかと。」
「キノコ専門ですか?
キノコは自然に生えているのではないですか?」
「そうですね。
でも条件が揃えば室内でも育てられるのですよ。
なので市場価格を調べて価値が高いキノコを栽培出来れば収益になると思うのですよね。
それに普段は取れない時期に出荷すれば需要はありそうですし。」
「なるほど。
単価は安いかもしれませんが、量でカバー出来れば平気そうですね。」
「ですね。
まぁ何処かの町にお願いしてみますかね。」
武雄が軽く考えを巡らすのだった。
「キタミザト殿、明日からカトランダ帝国ですが、身分はどうされますか?」
「ん?偽った方が良いのでしょうか?」
「普通はしなくても良いのですが・・・今回ばかりはするべきだと思っています。」
「何故です?」
「・・・キタミザト殿が新貴族になったからです。
一応各貴族や諸外国に通達が行っている頃です。
カトランダ帝国が研究所に興味を示されても困るかと。無用な詮索をされない方が良いのではないでしょうか。」
「なるほど・・・では無難な設定を考えておきますか・・・」
武雄達は自分たちの設定を考えるのだった。
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カトランダ帝国の東の町から南に数十km行った先で、とある旅の一団が焚き火を囲みながらマッタリとしていた。
幌馬車は2台あるようで幌馬車を両脇に置き、その間で焚き木を囲んでいる。
「はぁ・・・親方・・・すみません。」
可愛らしさが残っている女性が初老の男性に謝っていた。
「・・・またそれか・・・
誰も店を畳んだのがお前のせいとは思ってねぇよ。
なぁ?」
「「その通りですよ、親方!」」
「そうです!恨むべきは魔法師組合と第4皇子一派ですよ!」
「「そうだ!そうだ!」」
「まったく・・・最後はゴロツキまで雇ってきて嫌がらせをしてきましたからね!
狭量な輩はやることが野蛮です!」
「「そうだ!そうだ!」」
「元々うちの工房・・・いやあの町自体が第3皇女殿下のお抱えです!
それを第4皇子が跡継ぎに決まった途端に規制をかけやがったんですよ!
なんですか!?新しい商品を開発するな!合併しろとは!?
その辺の鍛冶屋と同じに考えるな!って感じですよ!」
周りに誰も居ないからだろう初老の男性以外の男達が騒ぐ。
「まぁ、そういうことだな。
第4皇子達はうちらのような鍛冶屋を閉め出したいんだろう。
まったく・・・この国も底が知れるな!」
「ですね!それにうちらは兵士の為の鍛冶屋です!
あんな魔法師至上主義の鍛冶屋がそんなに良いんですかね!?
戦場での優劣は魔法師よりもそれ以外の兵士の質が問われるとわからないのですね!?
魔法師以外の兵士が魔法師と同等の威力がある武器を使うなんて最高じゃないか!
なぁ?」
「「そうだ!そうだ!」」
「ふむ・・・まぁどちらにしても今後はこの国は魔法師に傾倒していくのだろうな。
魔法師以外の兵士がどうなるのか・・・不安でしかないな。
それに・・・あの噂があったしな。」
初老の男性が難しい顔をする。
「あぁ・・・人形でしたか?自動人形とかいう商品らしいですね。
人形に戦争をさせるのはどうなんでしょうね?
味気ないと思いますけどね?」
「だな。人間や魔物同士、生きる物が戦ってこそ戦に意味があると思うがな。」
「ですね。」
男達が頷く。
「そんなわけでスズネ。
お前の発想は皆が認めている。ただこの国に合わなかっただけだ。
まだ第2皇子が居ればな・・・まぁ亡くなってしまったのだ、仕方あるまい。
もうこの国にはスズネの発想を理解する役人はいないだろう。」
「はい。」
「ほとぼりが冷めるまでどこかの田舎に行くしかないだろう。」
「親方、明日はどうしますか?」
「そうだな、南の村を頼ったが拒否されたしな・・・今度は東の村に向かうか。
あそこの村長は前に依頼の武具を作ったことがあったな。」
「了解です。」
「とりあえず、飯でも食え。
さっきから食べてないだろう。
明日も移動だ。」
「はい。」
一団はマッタリとしながら夜を過ごすのだった。
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