表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
385/3563

第377話 29日目 夕飯後の雑談。戦争形態と今後の展開を考えよう

武雄達一行は国境前の最後の町で宿を取っていた。

今日はリビングと2部屋タイプの宿にしていた。

「夕飯が出来ましたよ。」

武雄が料理を持ってくる。

「おぉ、キタミザト殿、パスタ料理ですか。」

「主、トマトですね!良い匂いです!」

待っていた2人が待ちに待った感を出しながら言ってくる。

「んー・・・ちょっと違いますね。

 これはニョッキという物です。

 小麦粉とジャガイモを合わせて捏ねた物を茹でてもっちり感を出しましたよ。

 それを濃い目のトマトソースに絡めて食べようかと。

 ちゃんとひき肉も入れていますからね。」

「なんだかわかりませんが、大作なのですね?」

「はは、簡単料理ですよ。

 さ、食べましょう。」

「「はい。」」

武雄達は夕飯を取り始めるのだった。

・・

夕飯を終え、お風呂にも入り、武雄とマイヤーはマッタリしている。

ミアはもう寝ました。

「いや~、食事が美味しいと旅も良い物だと思ってしまいますね。」

マイヤーが楽しそうに言ってくる。

「そんなに干し肉とパンは不評なのですか?」

武雄が不思議そうに聞き返す。

「何と言うか・・・同じ味で飽きてしまうのです。」

「・・・前から思っていますが・・・なぜこの国の料理人は料理の種類を増やそうとしないのでしょう?」

「ん~・・・国民のほとんどが現状に満足しているからでしょうか?

 国が安定していて小麦が余るほど豊作ではないけど、飢えがあるわけでもない。

 農業を筆頭に仕事には何かしらありつけるので暮らしが困窮もしていないのです。 」

「理想的な国家・・・なのでしょうかね?

 でもそんな安定的な国家だと危機感は薄らいでいくのでは?」

「そうですね。

 少なからず他国に面している貴族以外の地域は危機感が薄いですね。」

「・・・王家も?」

「んー・・・正直な話、王家の方々もそこまで国家の危機を考えていませんね。

 一応2人の皇子を国境に近い所に行かせて危機感を持たせようと陛下は考えていました。

 なので、中央の貴族達よりかは多少あるとは思いますが・・・それでも国全体として見ると危機感は薄いのかもしれません。

 それに他国とまともに戦闘をした経験がこの国にはここ100年はありません。」

「ウィリプ連合国、カトランダ帝国、魔王国、それぞれと定期的な戦争をしていると説明を受けていますが?」

「表面上はしていますね。

 ですが、実質は違います。

 戦争は両国で事前に日時の取り決めをしています。」

「は?」

武雄は「事前に話し合うって何?」と驚く。

「取り決めというのは少し違いますか・・・私の感覚なのでそう言いましたが。

 実際は向こうの国から宣戦布告がされます。

 で、うちから返答をして1か月後に戦争があります。

 場所は殆どの場合、関と関の間にある草原です。」

「・・・うん・・・まぁ・・・理解はできます。

 つまりは戦争には手順があるのですね?」

「そうなりますね。

 で、大体が互いにほぼ同数を用意して睨み合い、小規模な戦いがあってから『長期間の睨み合いで引き分け』として終了となります。

 これがここ100年の戦争形態ですね。」

武雄は「演習?」と頭を捻る。

「あれ?確か・・・アンダーセンさんが『どこかの戦場で息抜きをしている』と言っていましたが?」

「あぁ、それは王都守備隊数隊が陛下の命令で各皇子の指揮下に臨時編入をされるのですけど。

 各騎士団や兵士達が小規模戦闘で疲弊してしまうといろいろと大変なので、我々が敵と小規模戦闘をする時もあるのです。

 それを我々は息抜きと言っていますね。」

マイヤーは苦笑しながら言う。

「・・・ふむ。

 まぁ・・・良いです。

 何となくわかりました。」

武雄は、「トップ同士が正面衝突を回避しているのだろうな」と簡単に考えることにした。

それに深く考えても意味がないんだろうなぁとも思う。

「・・・キタミザト殿、馬鹿にしましたね?」

「はい。それは戦争と呼べるのですか?国家間演習と言えるのではないですか?」

マイヤーが訝しそうな目をして聞いてくるので武雄は目を細めて答える。

「まぁ・・・その意見は王都の文官達からも言われていますし、話だけ聞くなら当然の疑問なのですが・・・

 相手に対して隙を作ったりすれば攻め込まれる可能性がある為、緊張感がある睨み合いです。

 どちらも隙があれば攻め込む用意をしますからね。」

「・・・例えば小規模戦闘で圧倒的に相手を駆逐した場合やされた場合はどうするのですか?」

「一気に形勢が変わる可能性がある為、小規模戦闘も最低でも引き分けが出来るだけの技量を持っている隊がします。

 こちらも向こうも」

「・・・騎士団か王都守備隊が両脇を固めるので?」

「ええ、兵士より一歩出て対応しているはずです。」

マイヤーが頷く。

「ふむ・・・なるほどね。

 そう言われると戦争なのか・・・その事はこちらも向こうもわかっているのですね?」

「ええ、国家間で今や恒例とまで言われる戦争です。

 ですが、お互い本気です。

 キタミザト殿はその均衡を変えたいですか?」

「・・・エルヴィス伯爵が領土拡張を狙っていないのでこちらからは仕掛けません。

 それは伯爵や陛下もそうだと聞いています。」

「はい。陛下のお考えも領土拡張よりも国内の繁栄を望んでいます。」

「で、あるならば、私はエルヴィス領内の繁栄を一番に考えて行動はします。

 が。」

「が?」

「それと同時に研究所を通じて各貴族領所属の兵士の防御力の向上を目指すべきでしょう。

 いつまでそんな国家間の均衡が保たれているのか不安です。

 いつ倍以上の兵士が用意されるか・・・わかったものではないです。

 ならこちらは最低でも今の想定の倍まで対応できるような防御方法を考え出さないといけません。」

「それが盾ですね?」

「ええ、まずは盾です。

 こちらからの領土拡張はしないが、向こうが侵攻するなら戦線を維持し一歩も後退しない。

 何度来ても絶対に負けないことでアズパール王国が戦争で疲弊することを避けるべきでしょう。」

「兵士を増やすというのは考えないのですか?」

「アズパール王国の総人口が200万程度と聞いていますが、本当ですか?」

「そうですね・・・もうすぐ220万くらいになると思いますね。」

「そうですか、なら兵士の増加は見込めないでしょう。」

「そうなのですか?周辺国家と比べれば一番国民を抱えていますよ?」

「今の人口のまま兵士の数を増やすというとそれだけ農業に従事する人、鍛冶屋に従事する人を徴兵することになります。

 それは国力の低下です。絶対にしてはなりません。」

武雄が真面目な顔で言う。

「そうですか・・・なら。」

「ええ、兵士数の増加を簡単に出来ないなら質を上げるしかないのです。」

「なるほど。

 結果的に盾等の武具の開発に行きつくのですね。」

マイヤーが腕を組んで頷く。

「盾を作ってもそれを大量に生産する方法を考えないと・・・

 マイヤーさん、大まかに兵士の数は国全体でどのくらいですか?」

「各国に面している貴族領が・・・1万2000名。

 王都や王領に8000名ぐらいですね。」

「それは騎士団を抜いた数ですか?」

「はい。」

「・・・・約2万・・・一体月産いくつなら行きわたるのか・・・

 それに即対応するのは貴族領の兵士1万2000名。

 ここにはすぐに売り込んであげたいですが・・・」

武雄は頭を悩ます。

「そう考えると・・・途方もないですね。」

「武具の生産方法を根本的に変えないといけないかもしれないですね。

 今は各鍛冶屋がしてると認識していますが?」

武雄はエルヴィス伯爵邸がある街を思い出す。

「ええ、大まかな意匠は国や領主達が決めていますが、性能等々は各町や街で鍛冶職人が考えて生産していますね。

 それに各兵士が自分で調達していますし・・・」

「んー・・・これはエルヴィスさんと話さないといけないですかね。」

「と、言いますと?」

「鍛冶職人の集団会社でも作る必要がありそうだと。」

「偏屈が多い職人をまとめられるのですか?」

「さて・・・それは後々考えることでしょうね。

 マイヤーさん。アンダーセンさんとトレーシーさんに手紙を送ってください。」

「何と送りますか?」

「そうですね。

 盾の資料を用意するように、それと国中の盾を探せるのか目星をつけておくこと。

 そして・・・マイヤーさん、私達が来た際の問屋さんを覚えていますか?」

「はい。」

「あそこの問屋さんに行って、ウィリプ連合国とカトランダ帝国で使われている平均的な盾を購入するように依頼をさせておいてください。」

「魔法がかかっていないやつですね。」

「ええ、魔法がかかっているなら、そもそも盾の強度が高いでしょうから除外で良いです。

 今は一般の魔法適性がない者の盾を考えることが負けない事になるでしょう。

 あと、アンダーセンさんには盾の試験方法を考えるように伝えてください。

 実施は先ですが、のんびりと考えていれば良い案が出るかもしれません。」

「はい、わかりました。」

マイヤーは頷き手紙の内容を考えるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ