第371話 26日目 エイミー達に発見される。
「あ!タケオさん!」
宿から出てきた武雄達は馬車から降りてきたエイミーに見つかる。
武雄は腕時計を確認し、午後5時を回っているのを確認する。
「エイミー殿下、旅路お疲れ様でした。」
武雄が恭しく礼をする。
「お、タケオだ。やはり馬だと早いな。」
ニールも馬車から降りてきて早々に話しかけてくる。
「キタミザト卿、第一近衛分隊長、ご苦労様です。」
リネットも降りてきて挨拶をしてくる。
「えーっと・・・」
武雄は困ったようにエイミーに目線を合わせる。
「あ!タケオさん、この方は今度父上の側室になるリネット・アストリーです。
紹介を忘れてしまいましたね。」
エイミーは誤魔化すように苦笑する。
「第2皇子妃アストリー殿下、初めまして、タケオ・キタミザトです。
宜しければ名前の方で呼んで頂きたく。」
「わかりました、タケオさん。
私の方も名前の方で構いません。これからよろしくお願いします。」
「畏まりましたリネット殿下。
そして私の横に居るのが、第一近衛分隊長のマイヤーです。」
「は!アストリー殿下。
王都守備隊 第一近衛分隊長カルロ・マイヤーです。」
「はい。私の事は他の皇子妃と同様に名前で構いません。
これからよろしくお願いします。」
マイヤーとリネットが挨拶をし終える。
「クリナ殿下、第一近衛分隊長のマイヤーです。」
リネットの後ろから顔だけ出して伺っていたクリナに武雄が話しかける。
「はい!マイヤー分隊長、よろしく!」
「はい。クリナ殿下、よろしくお願いいたします。」
「さて、挨拶は済みましたね。
タケオさん達もここの宿なのですか?」
エイミーが聞いてくる。
「いえ、私達は違う宿に泊まります。
ここには無理を言って夕飯だけ頂きました。」
武雄が説明する。
「あ!じゃあ、タケオさん達はここのスープを食べたのですね?
どうでした?美味しかったですか?」
エイミーは期待しながら聞いてくる。
「ええ、カレースープは美味しかったですね。」
「カレー??スープの名前なのですか?
本だとそんな名前ではなかったような・・・」
エイミーが「あれ?」と頭を捻る。
「まぁ、タケオが美味しいというのであれば相当美味しいのだな!」
ニールが楽しそうに言ってくる。
「?・・・ニール殿下は王都に行く際に食べているのではないのですか?」
マイヤーが不思議に思ったのか聞いてくる。
「いや、それが違う料理を頼んだのだ。
あの時は父上が強襲されたとの一報だったからな。
スープではなく簡単に食べられるサンドイッチしか頼まなかったし、宿泊もしなかったからな。
第一近衛分隊長、どんなスープだった?」
「そうでしたか。
今日食べたのはスパイシーなスープでした。」
「スパイシーか・・・クリナ達にも食べさせられるか?」
「わかりかねます。」
ニールの問いかけにマイヤーが悩む。
「ニール殿下、牛乳を用意しておけば辛さを軽減出来るはずです。」
「タケオさん、牛乳ですか?」
リネットが聞いてくる。
「はい、リネット殿下。
クリナ殿下は牛乳は飲めますか?」
「平気です!」
武雄の問いかけにクリナが元気に頷く。
「まぁ軽く感じるだけなので気休めですが、試してみると良いかと思います。」
「うむ、そうか。
2人はこの後はどうするのだ?」
「宿に行ってダラッとしてさっさと寝ます。
今日は割とのんびりでしたが、明日からは行程を縮められるなら縮めたいので少し早く起きようかと思っています。」
「そうか、気を付けてカトランダ帝国に行ってくれ。」
ニールが難しそうな顔をしながら言う。
「はい、敵国ですからね。
あまり長居はしないようにしようと思います。」
「うむ、それで良い。
ではな、また王都で会おう。」
「「はい、失礼します。」」
と第2皇子一家と武雄達は別れ宿を目指すのだった。
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「はぁ・・・タケオ様が居ないと暇ですね。」
「きゅ。」
アリスとクゥは夕飯後のお茶をしているのだが・・・マッタリです。
「今日は随分寝て過ごしてしまいましたね。
クゥちゃん、明日は何かしたいですか?」
「・・・きゅ。」
クゥは少し考えたが特にやりたいこともないようで頭を振る。
「そうですか・・・そう言えば王都では最近、美味しい店を紹介する本があるそうです。
クゥちゃん、明日はちょっと本屋に行ってみましょうか。
で、美味しい店がわかったら毎日1軒ずつ行ってみるとかしてみますか?」
「きゅ♪」
アリスの提案にクゥは嬉しそうに返事をするのだった。
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「あれ?」
エイミーは夕飯を配膳されている最中にお品書きを見ながら頭を捻る。
「エイミー、どうしたの?」
ローナが聞いてくる。
第2皇子一家の到着後、少し経ってから第1皇子一家も到着していた。
「いえ、皆さまが到着する前にタケオさんに会ったのですけど。」
「あら?ここは今日は王家のみだったはずだけど・・・」
「はい、タケオさん達は別の宿に泊まっているそうです。
で、折角なのでここで夕飯を私達よりも先に食べたそうなのですけど。」
「ここで夕飯のみを取ったの?」
「はい、今王都ではここのスープが有名なのです。
一度は食べたい料理と紹介されています。」
「ふーん、で?」
「タケオさんがここのスープを『カレー』と言っていたのですが・・・お品書きにないのです。」
「お・・・お話し中申し訳ございません!
殿下、今の話は本当ですか?」
エイミーの呟きに部屋の隅に居た料理長が慌てて聞いてくる。
「どうしました?料理長?」
セリーナが聞いてくる。
「いえ・・・古文書の中ではスープの名称が『カレー』なのです。
私達が名前を変更させていて・・・どうしてその名称をご存じなのでしょうか!?」
料理長が興奮気味に聞いてくる。
「まぁ・・・タケオだからなぁ。」
ニールが呟くと王家の皆が頷く。
「えーっと・・・どういう事でしょう。」
料理長が不思議がる。
「料理長、秘伝の古文書からの復活なのでしょうけど・・・
私達より先に食べた男達が居ましたね?」
セリーナが料理長に聞く。
「はい、お2人いらっしゃいました。
本日の宿泊と夕飯を楽しみにされていたそうで・・・泊まれないならせめて夕飯だけでもと受付でお願いされて、うちのスタッフも今は丁度準備中なので良いですと許可を出しています。
終始楽しそうにお食事をしていただいておりますが。」
「その内の1名は王城の料理長が認める料理人よ。」
「え?」
「知識が豊富で今まで見たこともない料理を発案するの。
私達は彼の事を国の宝と思っているわ。」
セリーナが楽しそうに言う。
「それほどの方だったのですか・・・お泊めせず気分を害してしまったのでは・・・」
料理長が不安がる。
「それはないわよ。」
ローナが言い切る。
「だな。タケオはそんなことを気にする者ではないだろう。
『王家が泊まるのだから自分たちは他の宿になるのは当然』と考えそうだ。」
クリフが呟くと皆が頷く。
「そうだ。料理長、クリナとアンに牛乳を持って来てくれるか?
タケオがスープが辛いと思ったら牛乳を飲むと若干緩和されると言っていてな。」
「はい、畏まりました。
初めて聞きましたが・・・すぐにご用意いたします。」
料理長が足早に退出して行く。
「へぇ、タケオさんからそんなアドバイスをね。」
ローナがニールの言葉に頷く。
「あぁ、楽しそうに言っていたな。」
「ふふ、また会うのが楽しみね。
今はそれよりも私達は目の前の料理を楽しみましょう。」
セリーナの言葉に皆が夕食を取り始めるのだった。
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