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第370話 武雄達の夕食後のお茶タイム。両学院の設立理念とエルヴィス家からの手紙。

本来の宿泊者の為の準備を忙しそうにしている人達の横でお茶をするのも気が引けてしまった2人はロビーに移動して少しマッタリしてから宿に向かおうとなっていた。

「はぁ・・・本に載るだけの事はありますね。

 あのスパイシーなスープは有名になりますよ。」

マイヤーはお茶をしながらゆっくりと飲みながら武雄に感想を言っている。

「ですね。」

武雄もニコニコしながらお茶を飲む。

ちなみにミアはこっそりと武雄のスープを飲ませて貰ったのだが「辛いので無理です!」と武雄の内ポケット内でふて寝していた。

「それにしても昔のレシピを復活させたと配膳された時に言っていましたが・・・こんなに美味しい物が途絶える物なのですかね?」

マイヤーが「んー・・・」と悩みながら言ってくる。

「レシピが焼失や紛失をしてしまったり、入手が困難な食材が使われていたりと途絶える理由はさまざまでしょう。

 それに復活と言っても当時の料理を私達は知らないのですから本当に復活したのかはわかりません。

 もしくはそう言っているだけで実際は新たに作ったとも考えられますが・・・

 少なくとも今日のスープの食材は手に入るという事は確かですね。」

武雄がマイヤーに向かってニヤリと笑う。

「キタミザト殿、もしかして・・・この料理をご存じでしたか?」

「はい、知っていますよ。

 あのスープは『カレー』とほぼ同じですね。

 私がいた所はもう少しとろみがあるのが普通でしたが、基本的な所は同じ感じだと思いますね。」

「キタミザト殿は作れますか?」

マイヤーが期待を込めて聞いてくる。

「まったく同じ物は作れないと思います。

 このカレーというのは数種類から十数種類のスパイスを混ぜて作らないといけないのですが、私が知っているのはその内の3、4個だけですね。

 あとは手探りで食材を探し当てないといけないのですよ。

 まぁエルヴィス領に帰ったら街にある食材を使って作ってみるのも面白いかもしれませんね。」

「そうですか。

 ますますエルヴィス領に行く楽しみが増えました。」

「そう言えば、この旅に同行していただいていますけど、私の小隊への異動にご家族の了承は得られているのですか?」

「ええ、妻も子供達も賛成してくれています。

 まぁ息子が来年春に寄宿舎か魔法師専門学院に入る予定だったので異動に付いてくるか悩んでいますけども私の異動については賛成してくれていますね。」

「それは良かったですね。

 アンダーセンさんやトレーシーさんは平気ですかね。

 まぁ私が居ない間に家族と話し合ってくれると良いのですが・・・」

「トレーシーはわかりませんが、アンダーセンは平気でしょう。

 アンダーセンの妻は元王都の新人兵士なんですよ。

 なので、旦那のやりたいこともわかっているでしょう。」

「何だか言い方が・・・わざわざ新人兵士と言った理由は何ですか?」

「当時少し話題になったのです。

 6月に入って来た新人を1年も経たずに寿退社させたヤツがいると。」

マイヤーは楽しそうに言う。

「はは、そうですか。」

武雄自身が最速記録を持っているので他人事ではなく、苦笑しか出来ないでいた。

「それにしても先ほど息子さんの進路で寄宿舎と魔法師専門学院の両方を上げていましたが、どちらかに決めていないのですか?」

「年明け早々に適性検査を受けさせようかと思っています。

 その結果次第ですね。

 魔法の適性がなければ寄宿舎に入れても良いかと思っています。」

「子供の進路も大変なんですね。」

「まったくです。

 それに魔法師専門学院なら準兵士として月々銀貨5枚の手当が支給されるのですが、王立学院は月々金貨2枚と銀貨5枚の学費を納めないといけないのです。」

「ん?魔法師専門学院は給料として年金貨6枚貰えて、王立学院は年金貨30枚を支払う・・・ですか?」

「ええ、そもそもの成り立ちが違うのです。

 魔法師専門学院は優秀な兵士を育てる機関としています。

 なので入学と同時に兵士として訓練も実施します。

 対して王立学院は貴族の為の施政者養成機関なのです。

 ですので、誰でも入れる訳ではないのです。

 まず最初の難関は親が学費が支払えるか、その次に個人の学力ですね。

 そして推薦状が必要です。」

「・・・推薦?」

「最低でも貴族1家と騎士1名の推薦状が必要になります。」

「・・・そこまでして入るメリットは?」

「王立学院を卒業すると王都の文官への採用が内定します。

 それに年間30名程度しか入らないですからね。

 親の収入も良く貴族や騎士からも推薦がもらえる家の子供なら文官にしても問題ないと判断していますね。」

「なるほど。

 王立学院はエリート養成学校なのですね。」

「はい、王都ではそう考えていますね。」

「まぁ、年金貨30枚は将来の文官幹部を狙えるのなら高くはないのかもしれないですね。」

「はい。あとは卒業してからの本人の努力次第ですね。」

「まぁどんな職業もそうでしょうけど、入ってからが勝負ですから・・・

 社会人は辛いですね。」

「まったくです。

 入る前はこんな競争社会だとは思いませんでしたね。」

マイヤーがため息混じりに言う。

「その競争社会で勝ち抜いてきた方がそんな事を言いますか?」

武雄も苦笑しながら言う。

「勝ち抜いてきた・・・確かに他から見ればそうなのでしょうが・・・

 私の気持ち的には成功していないですね。」

「人間は1つ願いが叶うとさらに欲が出てさらに願いをしてしまいますからね。

 マイヤーさんも王都守備隊に配属になった時の心境はもっと違ったのでしょう?」

「そうですね・・・なれただけで嬉しかったですね。

 『念願の王都守備隊だ!』と・・・そう思えば今は出来過ぎですね。

 まさかこの歳まで王都守備隊を続けられるとは思いも寄りませんでしたよ。」

マイヤーは「ははは」と照れ笑いをする。

「さてと・・・宿に行って明日の準備をしましょうか。」

「わかりました。」

と武雄達は席を立ち受付に礼を言いに行くのだった。


------------------------

アズパール王の書斎にてアズパール王とウィリアム達第3皇子一家とアリスの5名がお茶をしている。

「エルヴィス伯爵から手紙が来てな。

 『ケジメを付けていただけるなら異議はない』と言っておる。

 はぁ・・・良かった。」

アズパール王が心底安堵したようにため息を付く。

「お義父さま、お爺さまから『タケオ達が納得するのであれば私共は大事にしません』と書かれていませんでしたか?」

レイラがアズパール王に聞き返す。

「書いてあったな。

 アリス・・・今回の件は先の金銭補償しかできない。

 これで手打ちとしてほしいのだが・・・」

「陛下、私もタケオ様も受諾いたしましたので、その件は終わった物と思っております。」

「そうだな・・・わかった。

 エルヴィス伯爵には金貨60枚を送金する手配をする。

 アリス、すまなかったな。」

「いえ。」

アリスが礼をする。

「父上、レイラ宛の手紙にですが、どうも魔王国で動きがあるみたいです。」

「ふむ・・・ゴドウィン伯爵からも軍務局宛に報告が来ていたな。

 微細な変化らしいが・・・注意するとあったそうだ。

 エルヴィス伯爵は何と言っている?」

「お爺さまは『魔王国との国境付近で微細な変化が見られ、今王都と争う姿勢を見せると危いと考える』と。」

「微細な変化か・・・

 エルヴィス伯爵は微妙な時の報告はしてこないからな・・・

 その言葉をレイラ経由にしたのはまだ確信を得ていないのだろう。

 それに王家もエルヴィス家もこの件は大事にして良い事はないのはわかっているからな。

 エルヴィス伯爵には迷惑をかけたな・・・何か物を送っておくか・・・」

アズパール王が「んー・・・」と悩む。

「そう言えばレイラお姉様、タケオ様に本を渡しましたよね?」

「ん?・・・あぁ渡したわね。読めた?」

「ええ、と言うかですね。

 タケオ様が『メガネを使えば読めるのに、こっちに渡さなくても良いのでは?』と言っていましたよ?」

「「「あ!」」」

アズパール王とウィリアム、レイラが驚く。

「そうかぁ、メガネを使えば良かったのだね。」

「まったく思いつかなかったわ。

 メガネはタケオさんの文字を読むためと思っていたわよ。」

「まったくだな・・・ウィリアム、本を読んでおいてくれ。」

「こっちに振りますか?」

「あぁ・・・我は本を読む時間も最近は取って貰えないのだ・・・

 このお茶だって・・・ウィリアム達が来たからOKされたのだ・・・

 我は時間が欲しいぞ。」

アズパール王がガックリとうな垂れる。

第3皇子一家とアリスはそんなアズパール王を見ながら苦笑しか出来ないのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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