第368話 26日目 カトランダ帝国に向け出立。
王城の門の所に皆が居る。
「じゃあ、タケオ様。いってらっしゃいませ。
無事にお戻りくださいね?
争い事とかしちゃダメですからね?」
「はい、わかっています。
ただの視察ですから何か揉め事とかあっても手を出したりはしませんよ。」
武雄は「心配性だなぁ」と思いながら言う。
「うぅ・・・その言葉がとっても心配です。」
アリスは「本当に大丈夫なの?」と思案している。
「レイラさん、アリスお嬢様とクゥの事お願いします。」
「任せて頂戴。と言ってもこれといって大事はないんだけどね。」
「そう頻繁に大事が発生したら問題ですよ。」
「そうよね。タケオさんも気を付けて。」
「はい、わかりました。」
武雄は頷く。
「じゃあ、僕からはですね。」
武雄は見送りに来た王族達と順々に挨拶をしていく。
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「タケオ、向こうからの帰りにうちに寄ってくれ。
一緒に王都に行こう。」
「畏まりました、クリフ殿下。
帰りに寄らせていただきます。」
武雄は軽く礼をする。
「すまないがよろしく頼む。」
「はい。
では、マイヤーさん。」
武雄は最後に居たクリフと挨拶をしてマイヤーに顔を向ける。
「はい。では、私達は参りましょうか。」
「ええ。皆さん、では。」
武雄達は騎乗し王都の門に向けて出発をする。
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「さてと。お、うちらの馬車が来たな。」
ニールが自分たちの馬車が来たことを確認する。
第1皇子一家の馬車も一緒にやって来る。
「さっさと荷物を乗せて出立しましょう。
さ、準備は良いですか?いつも通りの順で積みますよ!」
「「「「は!」」」」
エイミーが護衛兵に指示を出し始める。
「うぅ・・・ニール殿下・・・私も荷の積み込みを・・・」
「お前はもう兵士ではないのだからしなくて良いのだよ。
それに詰め込みの指揮はエイミーが上手いのだ。」
ニールは作業をしようとしてるリネットを押し留める。
「それは知っていますが・・・」
リネットは体が反応するのかエイミーの指示が聞こえるたびにピクッと微かに動いている。
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「よし、終了です。」
エイミーが詰め込みが終わった馬車に向かって胸を張る。
「相変わらず早いわね。」
ローナが感心しながら言う。
「そうですか?慣れです。
さ、父上、お母様、クリナ乗りますよ。」
第2皇子一家が馬車に乗り込む。
「・・・うちはローナが手を出すからいつも手間取っているわよね。」
セリーナが愚痴をこぼす。
「・・・だってどこにしまったか気になるじゃない?」
「大して気にしないわよ。
気になるなら荷物に入れないで自分のバッグにでも入れなさいよ。」
ローナの言い訳にセリーナが小言を呈する。
「さてと・・・パット、揉め事はもう起こすなよ?」
「はい、父上。
絶対に軽率な行動は致しません。」
「・・・言葉だけでなく行動で示さなければ他人は信用してくれないぞ。」
「はい!」
「そうか・・・王都の事頼む。」
「はい。」
「じゃあね、パット。しばしの別れだわ。」
「しっかり食べてしっかり勉強に打ち込みなさい。」
「パット兄上、またね。」
第1皇子一家も馬車に乗り込む。
「うむ。では皆、しばしの別れだな。」
アズパール王が両家族に声をかける。
「「出立!」」
御者台から声が上がり馬車が動き始める。
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王城の門を過ぎると騎乗した各護衛兵が馬車の周りを固めるのだった。
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「行ったな。」
「行きましたね。
・・・父上はどうされますか?」
アズパール王の呟きにウィリアムが聞き返す。
「いささかエルヴィス伯爵邸から帰ってから慌ただしかったからな。
皆が戻って来るまではのんびりと過ごしたい物だが・・・」
「陛下、書類が溜まっております。
執務室にお戻りください。」
「我に休まる時間はないのか・・・」
いつの間にか現れたオルコットがアズパール王を連行していく。
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「いつも通りね。」
レイラがそんな光景を見ながら呟く。
「ウィリアム、私達はどうするの?」
アルマが聞いてくる。
「そうだね・・・んー・・・アルマやレイラはとりあえず今日は寝ていて良いよ。
緊急のことがない限り今日は骨休めだね。」
「ウィリアムは?」
「僕は昼過ぎに仕立て屋組合の人達と打ち合わせだよ。
場所は王城で開く事になっているけど・・・昼過ぎにラルフ店長さん達一行と前打ち合わせをしてから夕方に王都の仕立て屋組合と話し合う予定だね。」
「じゃあ。ウィリアムの仕事まではのんびりとお茶でもしましょう。」
「はい、わかりました。
アリスはどうする?」
レイラがアリスに聞いてくる。
「私もクゥちゃんも特にやることはないですね。
・・・昼寝ですかね?」
「きゅ。」
アリスの言葉にクゥが頷く。
「お昼までこっちに付き合いなさいよ。」
アルマがアリスを誘う。
「クゥちゃん、お昼までお茶をして、昼食を頂いたら寝ましょうか。」
「きゅ。」
クゥが頷く。
「では、私達も同席させてもらいます。」
「どうぞ、どうぞ。」
アルマが朗らかに言う。
「レイラ殿下、エルヴィス家より手紙が届いております。
またアリス殿にも手紙が届いております。」
王城内から執事がやって来てレイラ達に報告をする。
「ありがとう。
2通とも私達の執務室にお願い。」
「畏まりました。では、私も執務室までお供いたします。」
執事に先導されアリス達一行はウィリアム達の執務室に向かうのだった。
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「騒がしかったなぁ。
それにしても2日前の夜は何だったんだ・・・体は疼いてなかなか寝付けないし・・・朝はパンツが・・・
はぁ・・・寄宿舎に帰って昨日の続きでもするか。」
パットは足早に王城を後にするのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
本年もよろしくお願いします。
まぁ作者は相も変わらずマッタリと書いていきますけども。
お付き合いの程、お願いいたします。