表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
375/3563

第367話 25日目 第1皇子一家の話。お茶会と飲み会。さっさと寝よう。

夕食前の第1皇子一家の部屋にて。

「なるほどな、私に側室を入れさせるのか・・・」

クリフが悩みながら妻達に返事をする。

「ええ、先日決めたのよ。」

ローナが堂々と宣言する。

「本当は側室なんて入れたくないのにね・・・」

セリーナがボソッと呟く。

「まぁ、さっきの説明の通りの理由ならしょうがないだろう。

 パット、お前の所業でどんどん物事が進むな。」

「父上、母上方、申し訳ありません。」

パットは深々と頭を下げる。

「まったく・・・

 タケオさんに感謝しなさい!

 タケオさんが本気になっていたらアナタ本当に命がなかったのよ!?」

ローナが本気で怒る。

「・・・はい」

パットはシュンとする。

「・・・で、お前らの事だ・・・もうほぼ決めているのだろう?」

「ええ、この子を推薦するわ。」

セリーナが1枚の紙を渡す。

「・・・アシュトン子爵家の孫娘か?」

「流石にニールに続きうちも兵士から取る訳にはいかないわよ。

 それに前々からいつかは考えないといけない事だったし・・・パットの件で決心した感じね。」

「そうか・・・んー・・・19歳?若すぎないか?」

クリフは内心驚く。

「若いわね。

 でもこの家はまだ安全よ。武門の家系だからね。

 まぁ・・・ウィリアムの調査では賄賂は渡しているみたいだけど。

 それに男の子が出来たとしてもパットやアンを蔑ろにはしないでしょう。

 パットが王位を継げれば自分たちの後ろ・・・私達の今の公領を治められる可能性があるとなれば、悪い気はしないでしょうね。」

「それはそれで問題が出てきそうだな。」

「ええ、少なくとも私達親の世代がいる内は何事も無いはずよ。

 むしろパットの時代が問題ね。

 余程有能な事を示さないと・・・内乱につながるかもしれないわね。」

 「ふむ・・・魔王国に面している貴族ではエルヴィス領のスミスか。

 ウィリアムも父上も気に入っていたな。

 あっち方面は揺るがないだろう。

 ニールの方は・・・パットの時代は今の次期当主達かその子供か。

 そっちはニール達に任せるしかないか。

 ・・・そうだな、この娘に一度会いに行ってみよう。」

「あら?行くの?」

「いくら私でも無理やりな婚姻は争いの種だとわかっている。

 本人に確認して嫌なら別の候補にするからな。」

「それでいいわ。」

ローナが頷く。

「それにタケオがカトランダ帝国に行き来するにはアシュトン領を通るだろう。日時をある程度合わせて一緒に帰ってこようと思う。

 それに国境を見ておきたいとも思ってな。

 これからタケオ達の爵位授与式やニールの結婚で王都に何度も行かないといけないからアシュトン家には留守の守りもお願いするしな。」

「わかったわ。とりあえず私達は屋敷で待っています。」

「そうだな、頼む。」

「「はい。」」

ローナとセリーナが頷くのだった。

と、部屋の扉がノックされ、クリフが「構わぬ」と返事をすると執事が入って来て「夕飯の用意が出来ました」と告げるのだった。

・・・

・・


------------------------

「・・・」

ウィリアムに夕食後連れて来られた場所は王城内の簡単なバーなのだが・・・武雄は困惑していた。

「なんだ?タケオ、無表情で。」

一番奥の席にアズパール王がそこに座っていた。

「まったくだな。」

「はぁ・・・ウィリアムが何も説明していないのだろう?」

隣の男性2人もこちらを見ながらため息をついていた。

「ウィリアムさん?これは?」

武雄はウィリアムに助けを求める・・・が。

「えーっと・・・こっちがニール兄上でこっちがクリフ兄上です。」

ウィリアムは端折った説明をする。

「この場合はどうすれば良いのでしょうか?

 片膝立ですか?」

武雄はうな垂れながら聞いてくる。

「あ、タケオ、今は必要ないぞ。あれは公式の場だけで良いのだ。

 今はプライベート空間だからな。」

アズパール王が苦笑しながら言ってくる。

「陛下、なんでここにお出でに?」

武雄は目を細めながら言ってくる。

「タケオ、アランで良い。

 口調もエルヴィス伯爵邸での方が良い。」

「・・・名を呼んだ瞬間に首が飛んだらイヤですので・・・」

「そこまで狭量な王ではないな。

 我が良いと言ったのだ、良いのだ。」

武雄は何も言わずにウィリアムを見る。

「父上が良いと言えば良いのでは?」

ウィリアムは苦笑しながら言ってくる。

「はぁ・・・アランさん、どうしてここに?」

「うむ、ウィリアムからタケオと酒を飲むと聞いてな。

 息子達を誘って先に陣取っていた。」

アズパール王が満面の笑みで答える。

「はぁ・・・

 クリフ殿下、ニール殿下、タケオ・キタミザトと申します。

 タケオとお呼びください。」

「タケオ、この度はうちのパットの件や王都でのゴタゴタ全般に対してすまなかった。」

クリフが頭を下げる。

「クリフ殿下、ありがとうございます。」

武雄も礼をする。

「タケオ、俺も王家の一員としてすまないと思っている。

 これからエイミー共々よろしくな!」

「はい、ニール殿下。

 よろしくお願いします。」

「ささ、タケオさん、座って飲みましょう。」

ウィリアムと武雄も席に着いて男達の宴が始まるのだった。


------------------------

妃達のお茶会会場。

「今頃タケオさんは大変だろうね。」

アルマが苦笑しながらお茶を飲んでいる。

「えーっと、アルマお姉様。タケオ様の何が大変なのですか?

 ウィリアム殿下と飲んでくると言っていましたけど。」

アリスは「はて?」と首を傾げる。

「実はね、ウィリアムとタケオさんが飲むことをお義父さまが嗅ぎ付けたのよ。」

レイラがため息を付きながら報告する。

「うちのクリフもニールも連れて行かれたわ。」

ローナが苦笑する。

「なので、今はタケオさんは王家の男性陣に囲まれているわよ。」

「・・・豪勢ですね。普通の貴族ならそのメンバーで飲めませんよね?」

エイミーが考えながら言う。

「エイミー殿下、飲める飲めないの前に不動でお酌をするぐらいしか出来ませんよ。」

リネットがエイミーに答えるが。

「お母様、殿下ではないでしょう?」

「無理です!エイミー殿下はエイミー殿下です。」

新皇子妃はテンパっていた。

「まぁ・・・タケオさんだからね。

 何とかしているでしょうけど。」

レイラが苦笑しながら言うのだった。

「タケオ様・・・無事に帰って来るのかしら・・・」

アリスは武雄の身を心配するのだった。


------------------------

「え?全部試したのですか?」

武雄がウィリアムの夜の報告に驚く。

「はい・・・『タケオさんの知識を全部試すんだー』とレイラがそれはもう楽しそうに。」

「全部試さなくても良いのに・・・」

武雄が苦笑する。

「ウィリアム、そんなにタケオの知識は凄かったのか?」

ニールが聞いてくる。

「僕が知りうる限り・・・王都にこんな知識はないです。」

ウィリアムが頷きながら答える。

「ウィリアム、その紙はあるのか?」

クリフが聞いてくる。

「はい、ここに。」

ウィリアムが懐から出してくる。

武雄は「なんで持ち歩いているのかな?」と不思議がる。

「「「・・・」」」

3人が真面目な顔で中身を見る。

「・・・ちょっと待ってくださいね。

 アランさんが見る必要があるのですか?

 そもそもメガネがないと読めないでしょう?」

武雄が訝しむ。

「なんだ?我も知りたいのだ!

 それに読めなくても絵で何とかわかるからな!」

「第4皇子を作る気ですか?」

「ん?・・・それも面白そうだな。」

アズパール王がニヤリと笑う。

「出来ても溺愛してはダメですよ?

 次期王はクリフ殿下と確定させているのですからね?」

武雄は呆れながら答える。

「その時は・・・タケオに教育してもらおうか?」

「イヤですね。王家の教育は王家でどうぞ。

 私はスミス坊ちゃんの教育で忙しいのです。

 それにスミス坊ちゃんの奥方が来てくれた場合はどうするか・・・まったく対策を考えていません。」

「タケオ、うちのエイミーはどうだ?しっかりとしているし・・・親の俺が言うのもなんだが良い女だぞ?」

ニールが薦めてくる。

「エイミー殿下は可愛らしくて私もアリスお嬢様も好んではいますが・・・こればっかりは本人達のやる気の問題ですからね。

 無理強いは今の所出来ないですよ。

 ちなみにスミス坊ちゃんには予備知識を与える気もありませんので、成り行きに任せるしかないでしょう。」

「そうか・・・こっちの問題なのだな!」

「ふむ・・・アリスとタケオが味方か。

 エイミーが一歩リードしているな。タケオ、実はもう1人候補が居るのだがな?」

「はい。」

「我の弟の孫娘なのだが、スミスと同い年なのだ。

 来年寄宿舎で出会うはずだ。」

「スミス坊ちゃん的にはエイミー殿下もその女の子も同じタイミングで会うのですね。

 公平と言えば公平だと思いますよ?」

「ふむ・・・そうか。

 これは画策してみるか。」

「王家の威信とか変な物をかざされると厄介ですから画策はしなくて結構です。

 そもそも子供達の恋愛に大人たちが口を言い出してどうするのです?

 適齢期を過ぎた頃合いならお見合いとかさせれば良いでしょうけど。

 まだまだ子供でしょう?」

「うむ・・・だが、エイミーやグレースの年代は丁度、男子貴族があまりいないのだ・・・」

「その女の子はグレース殿下というのですか。」

武雄は「へぇ」と思いながらチビチビお酒を飲むのだった。


------------------------

「え?スミスと同い年の女性の王族が入るのですか?

 あ・・・確か学院長もそんなことを言っていましたか・・・女性だったのですね。」

アリスが思案しながら言ってくる。

「そうなのよ。で、ニールもお義父さまもエルヴィス家のスミスと恋仲にしたら面白いと言っていてね。」

ローナが楽しそうに言う。

「うぅ・・・まだ会ってもいないのにそんなことを言われても・・・」

エイミーは困惑していた。

「まぁ・・・こればっかりはスミスがどう感じるかだしね。

 なるようにしかならないわよ。」

レイラがそんなエイミーを見ながら苦笑している。

「そうですね。

 私はスミスにエイミーさんの事は何も言いませんので・・・ご本人達が頑張ってくれれば良いです。」

「そうね・・・アリス、タケオさんにもその方向でお願いしておいてくれない?

 変な予備知識があっても困るし・・・許婚ではないのだから成り行きに任せましょう。」

「わかりました、セリーナ殿下。」

アリスが頷くのだった。


------------------------

武雄が部屋の扉をノックすると、中から「どうぞ」と返事が返ってきたので入室する。

「アリスお嬢様、戻りました。

 お早いお戻りですね。」

「はい、お帰りなさい。私もつい先ほど終わったばかりです。

 飲み会はどうでしたか?」

「・・・他愛もない話をしていましたよ。

 まぁスミス坊ちゃんにエイミー殿下とグレース殿下という王家からのアプローチがあることは教えられましたが。」

「あぁ・・・タケオ様の所もですか。」

「ん?という事はアリスお嬢様の方も?」

「はい。でも本人達で決めれば良いとしました。」

「ええ。私の方も成り行きに任せるべきだとは言ったのですが・・・最後の方はニール殿下が何やら『エイミーと打ち合わせをしなくては!』と意気込んでいましたね。

 まぁ春からの寄宿舎も楽しそうです。」

「全くですね。」

アリスも武雄もお互いに苦笑をするしかなかった。

「さてと・・・明日はタケオ様は出立ですね。」

「ええ。まぁ最悪、小太刀と下着さえ持って行けば問題ないでしょう。」

「うちの越境許可書は無くしてはダメですからね?」

「はい。コートの内ポケットに入れています。」

武雄はコートを確認しながら言う。

「そうですか・・・では、お風呂に入ってさっさと寝ましょう。」

「そうですね。ゆっくりと英気を養いましょうね。」

武雄が頷きながら答える。

マッタリと武雄達の夜が深まって行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。


良い年越しをお迎えください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
越境許可書をコートの内ポケットに入れているとなると旅はトレンチコート姿でするのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ