第365話 武雄達の裏の打ち合わせ2。久しぶりの2人組。
「では、タケオの研究所では当面は盾の研究をするのだな?」
「はい。そして小銃の改良もしていきます。」
「うむ・・・改造小銃を主力装備にする気はないのだな?」
「現状ではないです。
魔力消費量の多さが響きすぎます。
それに単一の事しかできないのでは魔法師の自尊心を傷つけるかもしれませんので、魔法師達が認めないと思います。
極一部の者専用兵器と今はしておく必要があります。
まぁ数年後、数十年後はわからないですが。」
武雄は苦笑しながら言う。
「そうか。小銃の量産は出来そうか?」
「現状では量産も出来ないと思います。
カトランダ帝国に行って開発者を見つけられるかで変わりますが・・・開発者をこちらに引き込めたとしても直ぐの量産は出来ないものと。
それに・・・量産する前にまずはうちの試験小隊に試験運用をさせたいです。」
「え?」
アンダーセンが驚く。
「ん?どうしましたか?」
武雄がアンダーセンに聞く。
「いえ、小銃は魔法適性がない物が魔法師の真似をする兵器なのですよね?
それを魔法師が使うのですか?」
「ええ、魔力量は上限がありますからね。
砲撃戦の序盤を小銃で対応して魔力量の節約をすれば相手よりも長い時間魔法が撃ち込めるでしょう?
それだけでもかなりこちらが有利になるはずです。」
「そういう物ですか?」
「はい。要は向こうの魔法師を早く疲れさせたいが為に砲撃戦を仕掛けるのです。
向こうが疲れ切って歩兵で突撃を仕掛けてきてもこちらの魔法師に余裕があればそれだけで被害が少なくて済みます。
まぁそういう運用試験もするのが試験小隊ですからね?」
「うむ、タケオの言う通りだな。
こちらの被害をどうやって軽減させて相手の損害を増やすか・・・
その為には戦争の仕方も変える必要があるだろうな。」
アズパール王が頷く。
「まずは魔法師達が受け入れられる小銃の運用方法を考える必要があります。
個人的には400m~150mまでの砲撃戦を小銃が担い150m以下を魔法の撃ち合いをするとして・・・
あくまで小銃は露払いであり本戦は魔法師の技量で・・・とすればそこまでの抵抗はないと考えます。
それに他の研究所で魔法消費量の軽減アイテムが作れれば、さらに魔法師の出来ることが増えます。
まぁどちらにしてもカトランダ帝国で小銃の開発者に会えるのかが鍵になりますね。」
「そうですね。
タケオさんだけが行く予定なのですよね?」
ウィリアムが聞いてくる。
「いえ、私とミアで行きたいと思います。」
「主、私もですか?」
「ええ。ミアは私の部下ですし、周囲の気配もわかりますからね。
何か不穏な者がいないかの確認が容易にできます。
皆様、アリスお嬢様とクゥの事をお願いいたします。」
武雄は皆に頭を下げる。アリスも頭を下げる。
「任せて、のんびりと過ごして貰うから。」
レイラが楽しそうに言う。
「私の小銃はアリスお嬢様に預けますので持っておいてください。」
「はい、わかりました。」
アリスが頷く。
「まぁ、タケオの話だと小銃は向こうの魔法師達から目を付けられている可能性もあるからな。
置いていくのが正解だろう。」
アズパール王がため息をつく。
「はい。
争いの種になりそうな物は置いて行くのが良いかと。」
「うむ、そうだな。
・・・ウィリアム。」
「はい。
タケオさん。王都守備隊 第二情報分隊から4名が先行してカトランダ帝国に入っています。」
「4名?」
武雄が聞き返す。
「うむ。カトランダ帝国に入ってから直ぐの村と東町に2名ずつ先行配置した。
夫婦を装わせている。
マイヤー、タケオの小隊人事はアンダーセンに任せてお前はタケオに随行しろ。
4名は合流後はタケオの指示に従うよう指示はしてある。」
「は!」
「第一近衛分隊長、2ー4です。」
「は!了解しました。」
ウィリアムの言葉にマイヤーが返事をする。
「2ー4とは?」
武雄が不思議そうに聞く。
「連絡方法です。
第一近衛分隊長が随行しますから問題ないですよ。」
「わかりました。」
武雄は「ふーん」と思いながら答える。
「ちなみにアリスもタケオさんの改造小銃は撃てるのよね?」
レイラがアリスに聞く。
「はい、撃てますよ。
レイラお姉様、なんでしょうか?」
「いや、アリスの魔力量はどのくらいだったかなぁと思って。」
「言っていませんでしたか?10000以上ですよ。
まぁ身体強化とかを強制的にするだけですけど。」
「あら、多いわね。」
アリスの返答にレイラは軽く感心しながら言い返すがマイヤー達3名は「規格外だなぁ」と聞いていた。
「全く規格外ですね。」
武雄が苦笑しながら言い、男性陣が頷く。
「むぅ・・・タケオ様こそ小銃改1をあの戦闘で何発撃ったか覚えておいでですか?」
アリスがジト目で抗議をしてくる。
「40発くらいでしたか?」
武雄はしれっと答える。
「違います、100発以上は撃っています!」
「それでオーガを32体とゴブリンを30体ですか・・・無駄が多いですね。」
武雄はアリスの言葉に自身の的中率の悪さから苦笑する。
「そっちではないです!
魔力量を合算すれば15000を超えるのですよ!?
タケオ様こそ規格外です!」
アリスは興奮しながら言ってくる。
「ほぉ、そんなにですか。
まぁ所詮1回に使える魔力量は25が限界なのですから大したことではないでしょう。」
武雄は「何とも思っていないですよ」と笑顔をアリスに向ける。
「むぅ・・・いつか教え込みます。」
アリスは武雄が全くその辺を気にしていないのでため息を付きながら引き下がる。
が、周りからすれば「規格外同士の言い争い」にしか見えず唖然とするのだった。
「ふむ、タケオもアリスも規格外だな。
どっちもどっちだ。」
アズパール王がため息を付き、アリスと武雄以外の皆が頷く。
「で、タケオは明日はどのくらいに出立するのだ?」
「朝食を取ってから行きたいので・・・3時課の鐘くらいには出立をしたいと思います。」
「うむ、マイヤー。」
「は!了解しました。
キタミザト殿、地図やら小物はこっちで用意しますので、こちらに来られた時と同じ装備でお願いします。」
「わかりました。」
マイヤーと武雄は頷き合うのだった。
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ウィリプ連合国にて。
「海は最高だな!」
「・・・海風・・・気持ち悪い・・・」
ローブを深くかぶった2人の男が砂浜に居た。
傍から見れば場違いな風貌なのだが・・・誰も気にした様子はない。
「はぁ・・・お前はどこに居ても不平を言うな・・・
もう少し自然に対して感動とかな・・・ん?何か気になるか?」
一方の男が遠くを見ている。
「波止場・・・魔物が居る。」
「ん?・・・あぁ奴隷船だろう?
魔王国から着いたのか。
全く運のない奴らだ。」
「・・・高位の・・・居る。」
「そうか?・・・何も感じないな。
あれはどんなに良くても中位だろう。高位なら俺ですらわかるぞ?」
「・・・」
男は返事をしない。
「・・・まぁお前が言うのだから居るのだろうが・・・試しに買うか?」
「いや・・・いい。
買うと・・・足跡残す・・・いらない。
それに・・・仕事・・・違う。」
「そうだな。俺らは低位のを集めるのが仕事だからな。
高位を集めるのは他の奴がする仕事だ。
さてと・・・飯を食って休暇をダラダラ過ごすか。」
男2人は浜辺を去っていくのだった。
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