第358話 夕飯だ。茶碗蒸し大作戦開始。
「ただいま戻りました。」
アリスが部屋に戻って来た。
アズパール王との謁見ではレイラ達にチビッ子2人を預けて行ったのだが、レイラ達に部屋に戻る事を言いに行ったら、「どうせならこのままミア殿とクゥ殿を明日の朝までエイミーちゃんに預けたら?」との提案されエイミーがいろんな部屋に迎えに行くのも大変だろうからと了承し、一人で戻って来たのだ。
「やっぱりまだ帰ってきていませんか・・・」
武雄はまだ厨房で料理をしているのだろう・・・部屋には誰もいなかった。
アリスはベッドにダイブする。
「はぁ・・・陛下との謁見は疲れるものですね。
タケオ様、早く戻ってこないかなぁ。」
アリスはゴロゴロしながら武雄を待つのだった。
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武雄は部屋の扉をノックしても返事がないので「寝たか」と思って、静かに入ってきたのだが・・・
「もう・・・なんて格好で・・・」
アリスはうつ伏せでベッドの端にまで寄って寝ていた。
今にも落ちるのではと思うくらいギリギリです。
武雄はそんなアリスを朗らかに見ながら持ってきた夕飯を机に配膳をしていく。
「ミアとクゥがいませんね・・・
アリスお嬢様に聞いてみましょうか。」
武雄は寝ているアリスを起こしにかかる。
・・
・
「ふわぁぁぁぁぁぁ!!!・・・」
アリスの変な叫びが久しぶりに響き渡るのだった。
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「タケオ様!寝ているときにするのは卑怯です!
もっと普通に起こしてください!」
アリスは席に着いてから苦情を入れてくる。
「良い声でしたよ♪」
武雄は満足そうな顔をしながら返事をする。
「・・・」
アリスがジト目で抗議してくる。
「はいはい、次回は普通に起こしますよ。普通に。
それにしてもアリスお嬢様、ミアとクゥがいませんが、どこかに遊びにでも行きましたか?」
「2人とも今日はエイミー殿下の所にお泊まりです。」
「そうですか。」
武雄は「気を使ってもらったのかな?」と思うのだった。
「タケオ様、食べても良いのですか?」
「はい、食べましょう。」
武雄とアリスは夕飯を食べ始めるのだった。
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「・・・ウィリアム、いつもと席の列びが違う気がするのだが・・・どう思う?」
アズパール王が食卓に着くなり疑問を口にする。
「ですね。
今日は男女に別けたようですね。
それにタケオさんとアリスが居ないのにミア殿とクゥ殿が居る・・・謎ですね。」
ウィリアムも首を傾げる。
「ウィリアム、今日は違うのか?」
ニールが聞いてくる。
「はい、ニール兄上。
普通なら家族ごとに配膳がされますね。」
「そうか。」
「たまには良いのではないですか?」
ローナが答える。
「折角、ミア殿とクゥ殿が来られたのですから子供達の近くにしたいじゃないですか。」
セリーナが言う。
「まぁ、確かに一生に一度出会えるかどうかの幻想種が2人もいて王城内でのんびりとしているのがそもそも異例か。」
「父上は会ったことがありましたか?」
クリフが聞いてくる。
「ない!初めてだな!
皆はどうだ?」
アズパール王の質問に皆が首を振る。
「きゅ?」
クゥが首を傾げる。
「ミア殿、クゥ殿は何と?」
エイミーが聞いてくる。
「ウィリアム様にも言いましたが、ドワーフとここの中間に姉が住んでいるから呼ぼうか?と。」
「ふむ・・・意志疎通が出来るのであれば話を聞いてみるのも面白いかも知れないな。
だが、今朝の爆発で王都の民が不安がっていてな。新たな刺激を与えるのは今は止した方が良いだろう。
クゥ殿、良い時期が来たらこちらからお願いするかもしれない。
その際は相談させて貰いたい。」
アズパール王はにこやかに話しかける。
「きゅ。」
クゥが頷く。
「そう言えばお義父さま、お二人と初対面ではないですか?」
レイラが聞いてくる。
「ん?・・・そうだったな!
ミア殿、クゥ殿、これは失礼した!
我はこの国の王をしておる。
アラン・ジョン・アズパールだ。
よろしく頼む。」
「私は国王の長男で・・・」
皆が順々に挨拶をしていくのだった。
・・・
・・
・
「何だこの料理は!!!」
アズパール王が絶叫する。
「父上、お気に召さないなら僕が食べますよ?」
ウィリアムが横から茶碗蒸しを取ろうとする。
「違うわ!何という絶品料理なのだ!」
ウィリアムが伸ばした手からひょいと茶碗蒸しを遠ざける。
「ん~♪流石!タケオさんの料理ね~♪」
レイラが茶碗蒸しを一口食べて満面の笑みになる。
レイラがちらりとウィリアムの方を見ると・・・もう空になっている。
思わずニヤリとしてしまいそうになるが茶碗蒸しをまた口にして幸せ感に包まれるのだった。
「幸せ・・・」
エイミーは、うっとりしながらボーっとする。
「・・・」
パットに至ってはプルプル震えて下を向いたり、ちらちらとエイミーをチラ見している。
「なに?何かあるのパット?」
エイミーが横目に見ながら聞いてくる。
「いや!何でもない!
こんな料理を食べたのが初めてで感動しているよ!」
パットは早口でまくし立ててくる。
「何を焦っているんだか・・・まぁ良いわ。
はぁ・・・タケオさんは天才だなぁ~。」
エイミーはパットを意識から外して1口1口食事を楽しむ。
「タケオさん、レシピ売ってくれないかなぁ。」
ローナがボソッと呟く。
「ローナ、流石に無理なんじゃないの?
料理長はタケオさんの調理を見て盗んでそうだけど・・・」
とセリーナが部屋の隅にいる料理長に顔を向ける。
「キタミザト殿は手際が良いのですよ。
なので、何の食材をどう料理しているかはわかりますが、分量とかは量っていないのです。
味付けも感覚でしていますし・・・再現させるのも苦労しそうです。」
料理長は苦笑する。
「まぁ・・・タケオさん的には『家庭料理』だしね。」
「この味を出して家庭料理はないわな。」
レイラとニールがため息を漏らすのだった。
「きゅ♪」
「ですね、プリンも美味しいですね。
主達に付いて来て正解です。」
チビッ子達は昼間の要望通りに出されたプリンを食べながら王家の会話を聞くのだった。
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「美味しかったです。」
メイド達に食器を片付けて貰いマッタリとティータイムをしていた。
「アリスお嬢様、お気に召しましたか?」
「とっても!
それにしてもキノコと海老と鶏肉と・・・変な豆が入っていましたが?」
「変?・・・あぁ銀杏ですね。」
「あれが・・・ちょっと苦みがありましたが、茶碗蒸しに合っていました。美味しかったです。」
「まぁ時間もありませんでしたからあまり塩水に浸けていられませんでしたからね。
今度食べる機会があったらもう少し長い時間浸けておきましょうかね。」
「料理は不思議ですね。」
「全くですね。」
と武雄は席を立ちアリスに近寄る。
「?なんでしょ・・・きゃあ!」
武雄が急にアリスを抱き抱える。
「この後が今日の本番なのでしょう?」
「いえ!私は別に!」
「はいはい。じゃあもう少ししたら私もカトランダ帝国に行ってしまいますからね。
今日はアリスお嬢様を堪能させて貰いますかね。」
「うにゅ・・・その・・・ご堪能ください。」
アリスは観念したのか真っ赤になりながら武雄の胸に顔を埋めるのだった。
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